自作PCは自分好みにパーツを選定し、カスタマイズできるため見た目や自身の用途によって様々な構成が考えられるであろう。光らせるのもメーカーで統一するのも好みによってさまざまだ。今回の記事では構成を考える上で「予算」に重点を置いた内容で「10万円」という一つの節目を意識した構成を紹介する。また、実際に組んだPCでのベンチマークも掲載するので参考にして欲しい。

今回組むPCの構成

構成1

あくまでも今回選択したパーツは10万円に合わせて作った一例であり、他にも選択肢があることを承知の上で紹介したい。表の価格は、価格.comで執筆時の最安の値段を表示している。最安のショップ以外で購入すると10万円はオーバーするがおおよそ10万円で組めると言っていいだろう。また、予算重視の構成も後述してあるので下記で紹介する。

主なパーツ

CPU(AMD Ryzen 5 1600AF BOX)

税別9980円で登場した6C12Tの「Ryzen 5 1600 AF」。アーキテクチャはZEN+と少々古いが、価格破壊レベルの安さで手軽にメニーコアPCを組む時の肢が増えた。

以前レビューでも紹介した大手裏剣 参(SCBSK-3000)を選択。価格的にも性能的にも「虎徹 MarkII (SCKTT-2000)」が使用できれば良かったが、今回選択したケースの有効スペースが高さ155mmとかなりギリギリだったため、今回は採用を見送った。また、騒音が大きくなってもよければ付属している「Wraith Stealth Cooler」を使うことでクーラー分の予算を削ることも可能である。

メモリ(crucial CT2K8G4DFS8266 [DDR4 PC4-21300 8GB×2])

予算が限られているだけでなく、B450&ZEN+の構成のため安定性を重視してこのメモリを採用。OCのは向いてないため定格での運用が前提となるが安定性、価格共にバランスが良い製品だ。また、CFDからもcrucialのメモリが出ていたり、並行輸入品なども取り扱いがあるがショップなどをよく見て判断した方が賢明だろう。

マザーボード(ASUS TUF B450M-PRO GAMING)

今後のCPUのアップグレードも考え、B450の中でも比較的電源回路が強く、VRMヒートシンクの冷却が容易な「ASUS TUF B450M-PRO GAMING」を選択。高耐久なだけでなく将来的に上位のCPUを載せても対応可能な電源回路を持つ。現時点でマザーボードの選択肢に迷っている人や安定性を求めている人におすすめしたいマザーボードの一つだ。

ビデオカード(MSI Radeon RX 570 8GT OC A [PCIExp 8GB])

執筆時8GBの中では最安のMSI製RX570を選択。エントリー向けGPUもRDNAアーキテクチャに移行が進み、在庫はそれほど多くないかもしれないが低価格の割にVRAM容量も多く、軽いゲームや動画の再生にはまだ十分な性能を有している。このビデオカードはRX570の中でも最安ではあるが、米国防省規格MIL-STD-810G認証コンポーネントのみを使用しているとのことで低価格でも耐久性に期待が持てる。MIL-STD-810Gは高温、低温、温度変化、湿気、雨、カビ、振動、衝撃などの過酷な環境下で動作が可能かをテストするものであり、エントリー向けでコストは抑えつつも堅実な製品と言えるだろう。

SSD(WESTERN DIGITAL WD Blue SN550 NVMe WDS100T2B0C)

Read:2400MB/s、Write:1700MB/sの速度ながらSATA接続タイプと値段がほとんど変わらないコストパフォーマンスに優れたSSDだ。NAND、コントローラー共にSanDisk製で信頼性も高い。迷ったら推せる一枚。ゲームをたくさん入れる人であれば1TBの容量はすぐ埋まってしまうが、予算が限られている以上これ以上の容量は難しい。

HDD(東芝 DT01ACA100 [1TB SATA600 7200])

HDDは速度がSSDなどに比べて遅いが、大容量のものを安価に購入できるため動画・画像ファイルの保存先としてまだ活躍の場は多い。また、ゲームを入れるスペースの方が必要な場合はSSDを代わりに入れても良いだろう。

光学ドライブ(ASUS DRW-24D5MT)

必要最低限の機能が備わっているだけでなく、価格も安いコストパフォーマンスに優れたに優れたDVDドライブだ。なくても困らない人も多いため省いても問題はない。

ケース(ANTEC ANTEC P5)

今回は光るようなパーツは使用してないためシンプルで機能性の高いこのケースを選択。裏配線スペースはあまりないため太いスリーブケーブルなどには適していないが、静音ケースとしてはコストパフォーマンスに優れたケースだ。窒息系のケースのためファンは搭載数の最大数つけることをお勧めする。今回組むPCでは、フロント側に120mmの「サイズ KAZE FLEX 120 PWM」を二つ、リアに「Deepcool TF120S」の異なる回転数のPWMファンを追加で購入した。ただ、このケースはフロントに140mmファンが一つ、リアに120mmファンを搭載しているため無理に購入する必要はない。

尚、マザーボードの関係上ケースファンのコネクタ数が足りないため分岐コネクタが必要になる。今回は2個パック(予算外900円ほど)の商品を購入したが、400円~500円ほどで購入可能だ。

電源(FSP RAIDER II 650W)

フルプラグインではないため、取り回しに難があるものの一次側に大容量のルビコン製コンデンサ、二次側にケミコン製・ルビコン製コンデンサを採用するなど侮れない商品である。24pinはスリーブ加工、その他はきしめん型で「ANTEC P5」のような裏配線のしにくいケースでも配線しやすい形状で作られている。もし予算に余裕があるのであれば、NEO ECO GOLDシリーズなどのさらに高品質な電源に変更すると、長く安定した動作が見込めるはずだ。

同じCPUを使った予算重視の構成

構成2(変更点はピンク色の箇所)

今回組んだ構成は機能やアップデートを考慮した構成にしたため、目標である10万円に合わせてできる限り良いパーツをチョイスした。特にマザーボードはアップグレードの際には重要になる。しかし、Ryzen 5 1600AFから変更をしないのであれば「ASRock B450M Pro4」や「MSI B450M-A PRO MAX」で十分である。また、SSDも1TB設定してることを考慮しHDDをリストから削除、光学ドライブも必要最低限の構成からは外した。「Versa H17」にすることでファンを搭載するスペースは増えたが付属のファンが排気一つでは厳しいため14cmファンを一つ追加した。エアフローに改善の余地はあるがファンコネクタ、設置スペース共に余裕があるため後に増設することはできる。

記事執筆時の価格で考えると構成1から構成2に変更することで16363円節約することができる。(合計81780円)周辺機器を所持して無い場合は浮いた予算で購入すると良いだろう。GeForceに最適化しているゲームを中心に遊ぶのであれば浮いた予算で「GTX 1660 SUPER」を搭載した2万円強のビデオカードにすることも可能だ。

もし、コア数よりシングルコア性能を求める人は「Ryzen 3 3300X」も候補として挙げられる。Zen 2アーキテクチャ。さらに安価な「Ryzen 3 3100」も選択肢としてあげられるがCPUダイが2つで4コア(CPUダイ一つあたりL3キャッシュ8MB)の3100はどうしてもレイテンシが足枷となってしまうため、CCX内で全CPUコアがL3キャッシュを共有できる3300Xの方がゲームに適している。また、1600AFが手に入らなかった場合の代替品としても良さそうだ。

組み込み例

CPUはヒートスプレッダを見ても一見普通の「Ryzen 5 1600」に見えるが、CPU画像右下の記載でAFと確認できる。

3.5インチシャドウベイの位置が近いためケーブルの処理に多少苦労する。これだけケーブルがあることを考えると多少価格を上げてもセミプラグイン、もしくはフルプラグインの電源をお勧めしたい。Antec NEO ECO GOLDシリーズは、セミプラグインのSeasonic OEM電源でありながら価格も安いおすすめの電源の一つだ。

ベンチマーク(3600との比較も)

現行の同グレードCPUとして「Ryzen 5 3600」を比較対象とし、ベンチマークを計測した。定格を前提として組んでいるためCPUクロックはAUTO、メモリは2666MHzで統一した。

CPU-Zから取得したデータを見ると「AMD Ryzen 5 1600 Six-Core-Processor」とあるが、Code Nameは第二世代と同じ「Pinnacle Ridge」、Technologyは12nmと表記されている。

Ryzen 5 1600AF

最新のCPUと比べると見劣りしてしまうが、価格を考えれば十分すぎる性能だ。

RX570は「NVIDIA GAME WORKS」のベンチマークと相性が悪いため思ったよりスコアが伸びないが、最高品質・標準品質共に「非常に快適」と十分プレイ可能なスコアが出せている。

推奨動作環境が上がったFINAL FANTASY XVのベンチマークでは「普通」「やや快適」止まりのスコアとなった。

Ryzen 5 3600

同じ6C12TのCPUだがシングル/マルチ共に1600AFを大きく上回っている。R20ではAVX命令を苦手とする1600AFを大きく差を広げている。

最高品質では少しの性能差しか感じられなかったが、標準品質だとかなり大きい差が出た。また、3600はZEN+に比べてメモリのOCがしやすいためZEN2の3600はこのベンチマークで性能を出しやすい。定格でもこれだけのスコアが出るためメモリOCでさらに差が開くだろう。

こちらはFINAL FANTASY XIVほどの差は見られなかった。グラボの性能としても重い場面では厳しいため、軽量品質にするかグラボを変更した方がよいだろう。

総評

10万円という限られた予算の中で全ての機能を盛り込むのは難しいが、軽量なゲームや設定を多少落とすことである程度ゲームを楽しむことができるPCを作ることができるだろう。今回紹介した構成はあくまで一例だが、予算重視で作る上で少しでも参考になれば幸いである。自作PCはカスタマイズすることが楽しみの一つでもあるため、色々な組み合わせで自作を楽しむと良いだろう。