マザーボードに搭載されているチップセット。チップセットによって機能が大きく変わってくることもあるので、マザーボードを購入するうえでチップセットを比較することは多いだろう。
そこで今回はAMDのチップセットの機能の比較、用途別のおすすめチップセットを紹介していく。

チップセット とは?

チップセット(Chipset)とは、原義では、ある機能を実現するために組み合わされた複数の集積回路(IC)の集まりであり、PC/AT互換機(に類似したパーソナルコンピュータ)のマザーボードに実装される、CPUの外部バスと、メモリや周辺機器を接続する標準バスとのバスブリッジなどの機能を集積した、少数の大規模集積回路(LSI)をチップセットと呼ぶことが多くなっていたが、1個にまで集積された後もチップセットという呼称を続けている。

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PCのチップセットとはCPUと他のPCのコンポーネンツを実際に使用できる状態にするために噛ませる仲介役のチップのことだ。チップセットがあるおかげで高性能なパーツの性能を引き出せるようになる。

Ryzen5000シリーズとX570チップセットのブロック図

LANや追加のSATAなどはX570チップセットを介し、PCIe4.0 x 4でCPUに接続される。

AMD AM4ソケット用チップセット紹介

 A320B350X370B450X470A520B550X570
OCいいえはいはいはいはいいいえはいはい
対応CPURyzen1000
~3000
Ryzen1000
~5000
Ryzen3000
~5000
Ryzen2000
~5000
PCIe世代3.04.0
GPU用レーン1 x 161 x 16
2 x 8
1 x 161 x 16
2 x 8
SLIいいえはいいいえはいいいえはい
PCIeレーン合計数2428322832263036
最大SATA数66106106810
USB3.2 Gen2数125612
合計USB数1214181418131416

※B450、X470チップセットは現状ではRyzen5000シリーズに対応したBIOSは公開されていない。
※SATA数、USB数、PCIeレーン数はプロセッサーI/Oとチップセットの合計数

チップセットによるマザーボード選定基準

オーバークロックが可能か否か

AM4チップセットのうち、Bシリーズ、XシリーズはCPUのオーバークロックが可能となっている。Aシリーズのみオーバークロックに非対応なためオーバークロックをして遊びたいという人はBシリーズ、Xシリーズを購入することが必要となる。

マルチGPUが可能かどうか

Mini-ITXマザーボードではどのチップセットが搭載されていてもマルチGPU環境を構築することができないが、MicroATX以上のマザーボードであればAMD CrossFireXに対応しているものがほとんどだ。その際にAシリーズのチップセットが搭載されたマザーボードだとマルチGPU環境は構築することができない。またNVIDIA SLIはB550チップセットを除きXシリーズのチップセットのみが対応しているため注意する必要がある。

その他、電源回路などハイエンドチップセットを搭載しているマザーボードほど性能の良いものが実装されている傾向が強い。ハイエンドCPUを搭載する際はチップセットもそれに伴いハイエンドのものを用意した方が良い。

AM4チップセット詳解

A320チップセット

A320チップセットは1000番台~3000番台のRyzenシリーズ、及びAthlon Gシリーズに対応している。PCの基本的なことができれば良いといった人にお勧めなチップセットで拡張性はAM4チップセットの中では一番低い。ネットサーフィンや簡単な写真編集等あまり性能を求めないPCを作る際には重宝するだろう。またRyzen5000シリーズには対応していないためZen3世代のPCを作る際には使用することができない。

B350チップセット

B350チップセットも1000番台~3000番台のRyzenシリーズ、及びAthlon Gシリーズに対応している。A320チップセットの機能に加え、AMDグラフィックスカードのマルチGPU機能「CrossFireX」に対応しておりグラフィックスカードが2枚以上刺さるマザーボードではマルチGPUが可能となっている。ただしNVIDIAのグラフィックスカードのマルチGPU機能「NVIDIA SLI」には対応していない。CPUのオーバークロックにも対応している。

X370チップセット

X370チップセット1000番台~3000番台のRyzenシリーズ、及びAthlon Gシリーズに対応している。B350チップセットの機能に加え、NVIDIAのマルチGPU機能である「NVIDIA SLI」にも対応している。AM4チップセット300シリーズの中のハイエンドチップセットとなっておりマザーボードのラインナップを見ても非常に高性能なものも多い。ただしこちらもRyzen 5000シリーズに対応していないので注意が必要である。

B450チップセット

B450チップセットを搭載したマザーボードは現在でもコストパフォーマンスを重視した構成でよく使用される。現在はRyzen3000シリーズまでの対応となっているが2021年1月頃にRyzen5000シリーズに対応した特別BIOSが各メーカーから公開される予定となっており非常に息の長いチップセットとなる。PCIeは3.0が公式なスペックだが、一部では4.0で動作することも確認されている。B450チップセット もAMD CrossFireXには対応しているがNVIDIA SLIには対応していない。Precision Boost Overdriveに対応したのも400番台チップセットからでありRyzenシリーズの性能をより引き出せるように作られている。

X470チップセット

X470チップセットは第二世代Ryzenシリーズが発表された世代のハイエンドチップセットとなっておりB450チップセットの上位互換である。B450チップセットの機能に加え、NVIDIA SLIにも対応している。B450チップセット搭載マザーボードにはないより強力な電源回路を搭載しているマザーボードも多く存在する。こちらもB450マザーボードと同じくRyzen5000シリーズに対応予定だが現状では5000シリーズに対応したBIOSは公開されていない。

A520チップセット

A520チップセットは500番台チップセットの最廉価モデルとなっておりA320チップセットと同じ立ち位置のチップセットとなっている。対応CPUはRyzen3000番台以降となっておりRyzen1000シリーズや2000シリーズはソケットに挿すことはできても動作させることはできない。またAPUに至っては4000シリーズ以降のみ動作対応なので人気のRyzen 5 3400Gは動かすことができない。またPCIeリビジョンは3.0のためNVMe Gen4には対応していない。

B550チップセット

B550チップセットはBシリーズながら非常に高性能なマザーボードが多いチップセットである。電源回路も優秀なものが多くX570チップセット搭載マザーボードよりも技術的に枯れているので成熟した安定したものが多い。またB350チップセット、B450チップセットと違いNVIDIA SLIに対応したマザーボードも存在する。メモリまわりの安定性はX570チップセット搭載マザーボードよりも優秀なものも多い。PCIeリビジョンは4.0に対応しているがチップセットから生えているPCIeレーンは3.0であるため注意が必要である。Ryzen5000シリーズにも対応しており既に対応BIOSは公開されている。

X570チップセット

X570チップセットは現状AM4ソケットを搭載したAMDマザーボードの中で最上位のチップセットである。拡張性は他のチップセットよりも優秀でNVIDIA SLIに対応したものがほとんどである。チップセットの発熱も他のチップセットよりも大きく、チップセットファンが搭載されたマザーボードがほとんどである。そのため発売当初は嫌われることも多かったが現在ではあまりそういった声も聞かなくなった。B550同様Ryzen5000シリーズに対応したBIOSが既に公開されている。

各チップセット別 おすすめマザーボード

A320チップセット

PRIME A320I-K

ASUSから発売されているPRIME A320I-KはMini-ITXフォームファクタのマザーボードだ。A320マザーボードとしては非常に後発のマザーボードであり廉価版チップセットを搭載していながらも実装部品は電源回路に50A DrMOSを採用しておりそれなりに良い設計をしている。ただしM.2の接続はPCIe 2.0 x 4で速度はお世辞にも早いとはいうことができない。またUSB Type-Cポートは搭載しておらず、変換コネクタを使用してケース側に取り付けることくらいしかできない。

B350チップセット

ASUS ROG STRIX B350-F GAMING

ASUSのゲーミングブランドROGから出されているROG STRIX B350-F GAMINGは発売当初、B350チップセット搭載マザーボードの中でハイエンドモデルとして出されており実装されている部品も豪華だ。オーディオチップはALC1220をカスタマイズしたものが搭載されておりオンボードオーディオもそれなりだ。またVRMフェーズ数も8個であり当時のマザーボードとしては必要十分以上だ。

X370チップセット

正直なところ、現在ではX370チップセットを搭載したマザーボードを買う理由を筆者は見つけることができない。Ryzen1000シリーズは先述したA320、B350チップセット搭載のマザーボードや後述するB450マザーボードやX470マザーボードでも動作させることができる。NVIDIA SLIを使用したい場合はX470マザーボードを使用すると良いだろう。また価格を抑えたいのであればB350マザーボード、B450マザーボードを使用することをおすすめする。

B450チップセット

ASRock B450M Steel Legend

ASRockから発売されているB450M Steel Legendは1万円を切るマザーボードとして非常に優秀な1枚だ。VRMのフェーズ数は6個と少ないが一つ一つが非常に品質の良いものを使用しており大電流も流すことができる。また設計思想が部品点数を減らし、高品質な部品を使うことで製品の故障率を下げるといったサーバーに近い設計をしている点も特徴の一つだ。またARGBヘッダーも搭載しており光るPCを作りたいといった際にもI/OシールドやチップセットヒートシンクのRGBLEDと併せて非常におしゃれなPCを作ることも可能だ。

X470チップセット

ASRock X470 Taichi

ASRock X470 Taichiは16フェーズの電源回路を搭載しており現在のマザーボードに引けを取らない回路設計をしている。また写真を見れば分かるとおり歯車のデザインは多くの人を魅了した。非常に人気なマザーボードだったこともあり現在でも中古品の相場は少し高めである。M.2スロットは2つ搭載しているが片方はPCIe 2.0 x 4であるため注意が必要である。NVIDIA SLIにも対応しているのでマルチGPU環境を構築したい人にもおすすめである。

A520チップセット

MSI MAG A520M VECTOR WIFI

MSIから発売されているMAG A520M VECTOR WIFIは非常に安いマザーボードながらもWi-Fiに対応してる。またM.2ヒートシンクも搭載しておりPCIe4.0の超高速M.2を搭載することはできないがSamsung 970Evo Plusのような高速なGen3 M.2SSDには対応している。また廉価帯マザーボードでは省かれるようなVRMヒートシンクも搭載しておりそれなりといった印象を受ける。

B550チップセット

ASUS ROG STRIX B550-F GAMING(WI-FI)

ASUSのROG STRIX B550-F GAMING(WI-FI)は最新のB550チップセットを搭載した非常に優秀なマザーボードである。AMDマザーボードでありながらThunderbolt3を追加するためのピンヘッダーを搭載していたり電源回路に50AのDrMOSを14フェーズ採用するなど非常に高機能なマザーボードである。ただしUSB Type-Cポートを増設するためのコネクターは搭載していないのでケース前面のUSB Type-Cポートを使用したい際は注意が必要である。最近搭載されることが少なくなってきたUSB2.0ポートも搭載されているのであまり性能の良くないワイヤレスデバイスを使用する際も安心である。

GIGABYTE B550 VISION D

GIGABYTE B550 VISION Dはデザイナーなどのクリエイター向けに作られたマザーボードであり安定性を売りにしている。また写真から分かる通りシンプルでエレガントなデザインは非常に人気でありクリエイター以外からも高い支持を得ている。リアI/OにThunderbolt3ポートを搭載しており高性能な液晶タブレット等も簡単に使用することができる。LANポートは2つ搭載しているので片方に問題が起こった際も瞬時に切り替わるため商業で利用する際に非常におすすめなマザーボードだ。LEDライティングは付いていないので光らないマザーボードが欲しいといった人にもおすすめできる。

MSI B550 TOMAHAWK

MSI B550 TOMAHAWKは比較的安価ながらも優秀な電源回路を搭載しておりハイエンドCPUを搭載しても何ら問題ない非常にバランスの取れたマザーボードだ。Wi-Fiは搭載されていない代わりに2.5G LANを搭載するなど刺さる人には非常に刺さるマザーボードとなっている。ASUS ROG STRIX B550-F GAMING(WI-FI)と同じく迷ったらコレ!といったマザーボードだ。

X570チップセット

ASRock X570 Steel Legend

B450でも登場したSteel LegendシリーズのX570版だ。電源フェーズ数は10フェーズと増えているものの実装部品数は少なく一番上のPCIeスロット左上、左下を見ると部品がほとんど実装されていないことが分かる。これにより故障率の低下だけでなく部品から発生するノイズ対策をとることができるためTSUKUMOからはAVerMedia推奨の配信用PCに採用されている。コストカットも非常に上手でB550マザーボードと対して変わらない値段で販売されていることも推しポイントだ。USB Type-C増設用のポートは搭載されていないためケース前面のUSB Type-Cポートを使用したい際には変換コネクタが必要である。

ASRock X570 Taichi

ASRock X570 Taichiは非常に万能なマザーボードだ。ASRockでオーバークロックを楽しむといったらTaichiという認識の人も多いのではないだろうか。実際電源回路は非常に大容量のものを搭載しており現在発売されているCPUであればどんなものでもオーバークロックして動作させることができるといっても過言ではない。バックパネルも付いているので重たいグラフィックスカード、CPUクーラーを載せてもマザーボードが反る心配が少ない。

ASUS ROG STRIX X570-F GAMING

ASUS ROG STRIXシリーズのX570マザーボードだ。価格は3万円を切るほどでX570マザーボードの中では中間程度の価格だ。電源回路は14フェーズで十分、M.2ヒートシンクも非常に優秀で爆熱と言われている980PROをきちんと冷やし切れる。ただしチップセットヒートシンクの上のカバーはプラスチック製で少々安っぽさが否めない。これはM.2にチップセットの熱を伝えないためだとは思うが他にもやり方があったのではないかと思うと少し残念だ。

MSI MEG X570 UNIFY

MSI MEG X570 UNIFYは質実剛健なマザーボードだ。必要な機能のみを実装し、マザーボード上にRGB LEDは一切搭載していない。以前よりMSIが得意とするバランス重視なマザーボードで電源回路の充実やリアI/Oの充実など非常に作り込まれている印象がある。これといって特に優れたところがないと言われればそれまでだがウィークポイントもなく誰にでもおすすめできる1枚だ。

まとめ

以上、AMD ソケットAM4チップセットの解説、それぞれのチップセットを搭載したおすすめマザーボードの紹介だった。今回紹介したマザーボードの他にも良い製品はたくさんある。中にはこのマザーボードであのCPUを動かして大丈夫なの?と疑いたくなるものも存在するのでマザーボード選びの参考になれば幸いだ。さらにAMDのチップセットについて詳しく知りたい人はこちらを参考にすることをおすすめする。チップセットはPCの性能を大きく左右する一つの部品なのでよく考えてから選ぶことをおすすめする。