今回は簡易水冷の漏れ防止技術Anti-leakテクノロジーを持つ、Deepcool GAMER STORMブランドの簡易水冷CPUクーラー「CASTLE 360EX WHITE」をレビューする。以前にも同じ水漏れのリスクを避ける機能を持った「CASTLE 240EX」を紹介した。今回はより大型の360mmラジエーターを持つモデルなだけあり冷却能力も期待できる。また、数少ないWHITEのモデルで白基調のPCを組むユーザーには嬉しいモデルである。

圧力解放袋はデュポン(E.I. du Pont de Nemours and Company)によって製造された高級EPDM材料で作られている。この材料は、弾力性、耐腐食性、耐老化性および高/低負荷の衝撃に対する耐性などの特性を有する。

Anti-leak Tech Inside」と表記のある簡易水冷クーラーにはラジエーター内部の圧力を圧力解放袋で調整して水漏れを防ぐ技術が搭載されている。 冷却材の温度上昇や システム内で発生したガスにより内圧が大気圧を超えると、袋が絞られてシステムの内容積が増え増加した圧力が解放されるという仕組みである。

収縮の弾力性と気密性の高いIIR素材と高級ゴムの混合で作られている。 ホース表面のファイバークラッド層は耐圧性能と美的外観を向上させるという。
ポンプは3相のx-lifeモーターと圧力インペラーにより優れた性能と静音性を実現
フロールートが最適化されたダブルチャンバー設計により 熱交換効率が向上し、動作ノイズとエネルギーロスを削減している
銅ベースの裏側のスカイブフィンが25%多いため熱吸収面積を増加させることができる

スペック

ラジエーター寸法402×120×27 mm
ラジエーター材料Aluminum
重量1705 g
Tube length465 mm
Pump 寸法s86×75×71 mm
ポンプ速度2550 RPM±10%
Pump ノイズ17.8 dB(A)
ポンプコネクタ3-pin
ポンプ定格電圧12 VDC
Pump 定格電流0.2 A
ポンプ消費電力2.4 W
ファン寸法120×120×25 mm
ファン回転速度500~1800 RPM±10%
Fan Airflow64.4 CFM
ファン空気圧2.33 mmAq
Fan ノイズ≤32.1 dB(A)
ファンコネクタ4-pin PWM
ベアリングタイプHydro Bearing
ファン定格電圧12 VDC
ファン定格電流0.15 A
ファン消費電力1.8 W
LED タイプAddressable RGB LED
LED Connector3-pin(+5V-D-G)
LED 定格電圧5 VDC
LED Power Consumption2.25 W(PUMP)

外観・パッケージ

360mmサイズのラジエーターなだけあり外箱はかなり大きい。カラーリングは同じGAMER STORMシリーズである同社の「ASSASSIN III」同様灰色と黄緑色の組み合わせである。パッケージからも分かるように、ASUS、GIGABYTE、MSI、ASRockの各マザーボードメーカーのRGB制御に対応している。アドレサブルRGBで3pin 5V仕様の為、間違えて4pin 12V対応のマザーボードに接続しないように注意が必要だ。対応していない場合は付属のコントローラーからも多少は制御できる。

製品・付属品

中を開けるとCPUクーラー本体はビニール袋に収められ、付属品は箱の中に入っている。中はパルプモールドで作られており衝撃に強く、サイズもピッタリだ。

付属品はリテンションやネジの入った袋とケーブル・コントローラー類に分かれている。

大きめの袋にまとめられていた中身を分けると、画像の通りになる。intel・AMDの両方のソケットに対応しておりリテンションも2種類付属。ラジエーター用のネジは4本×2セットでファンの数分付属している。また他のメーカーにはないカスタマイズ用のロゴチップも付属している。

ケーブル類は、ボタンでLEDライティングが可能なコントローラとファンの分岐コネクタ・ARGB用コネクタが付属する。GIGABYTE・その他のメーカー用のピンが分かるように区別されている。

使用されているファンは二重層ファンブレードが特徴的な「TF120S」で、撹拌機の歯が配置されたフレーム構造や8つのゴムパッドにより、ノイズと振動を抑えたファンだ。ファンを追加で購入する際は「TF120S」を購入すると1基につきラジエーターのファンも4本付属するためネジを別途で探す必要はない。静圧も高く密度の高いラジエーターフィンにも対応できるスペックを持っている。

240EXと360EXWHのファンを比較してみると、ブレードや防振ゴムパッドはどちらもブラックでWHITEモデルはフレームがホワイト基調で作られている。

全体的に見るとシンプルなデザインだがホワイトモデルということもあり全体的に白基調の塗装が施されている。ラジエーターの塗装は、フィン含めて全てに塗装が施されている。色の具合はポンプやファンのプラスチック系の色味と比べるとやや黄み掛かった印象に思えるがそれほど気にはならない。ポンプは背が高めだがロゴがカスタマイズ可能な点や、LEDイルミネーションを考えると妥当な高さだ。ポンプ表面は鏡面で映り込みやすいが見た目はかなり美しく高級感を感じる。ポンプのコネクタは3pinのコネクタをマザーボードに接続するタイプだ。

ラジエーターの圧力解放袋が側面から確認できる。圧力解放袋があるためか縦の長さが少しあるが厚さは一般的な27mmだ。フィンのピッチは狭いが静圧の高いファンを生かせるためEXシリーズに使用される「TF120S」と相性がいいだろう。

ファン装着時

ホワイトカラーを採用しているもののLEDが搭載されているわけではないため。システム全体を光らせたい場合は「Castle 240RGB V2」 のが適しているが、自社設計のポンプを採用したEXのほうが性能重視なモデルでRGB V2のポンプ(Asetekの特許を採用したポンプ)と仕様が異なるため予算を度外視するのであればEXにRGBファンを組み合わせるのも悪くない選択肢だろう。

塗替えが面倒なユーザーには塗布済みのグリスがついてるためそのまま銅製ベース部分は鏡面に近い磨き上げとなっており、薄っすら反射するほど表面が滑らかになっている。

ポンプの上部は反時計回りに回すと取り外すことができる。カスタマイズ用のロゴチップが付属しているため、PCにオリジナリティを出したい場合に活用するといいだろう。

チューブの長さは約500mm。基本的に大きめのケースに搭載することが想定されるが、十分な長さが確保されており様々なケースに対応出来そうだ。チューブ外径が12mmの太さに加えスリーブ加工が施されているが、その割に取り回しは優れており好印象だった。

負荷テスト

今回は以下の構成で負荷テストを行った。

CPUAMD Ryzen 9 3900X
M/BMSI MEG X570 ACE
CPUクーラーDeepcool CASTLE 360EX WHITE
メモリPatriot Viper Steel DDR4 PC4-33000
PVS416G413C9K x4 (32GB)
ビデオカードGALAKURO GAMING GG-RTX2080Ti-E11GB/TP
システム用ストレージADATA XPG SX8200 Pro ASX8200PNP-512GT-C
OSWindows 10 Pro
電源ユニットAntec HCP-1000 Platinum
BIOS VerE7C35AMS.160

ポンプのサイズは以前に検証した「CASTLE 240EX」と変わりがないため「MSI MEG X570 ACE」ではメモリとの干渉は起きなかった。ポンプの向きを反対に向けて設置してもロゴは自由に向きを変えられるため、ラジエーターの設置場所によって向きを変えても見た目に出る影響は少ないだろう。また、「CASTLE 240EX」と同様にポンプの高さなどはやや高く感じたが、360mmラジエーターを搭載可能なPCケースは大型になる傾向にあるため影響は無い。

CPUグリスは新和産業のSMZ-01Rを使用。Prime95に加え今回はOCCTも30分間動作させてCPU温度をHWiNFOからデータを計測した。動作環境は気温24℃の環境下で行っている。ファンの制御は以下の設定とする。

360EXのファン制御はBIOSから予め設定

定格

定格では以前の記事で計測した240EXとの比較も行った。スパイク時の温度は240EXより低いが、全体を通してみるとさほど変化はない。しかし、ファンの回転速度にも注目してみると、240EXではサイズが小さいこともありファンが高い回転数で推移しているが、360EXは1200RPM前後で落ち着いている。低回転でも安定してシステムを運用可能だ。

OCCT

OCCTでは温度が上がらず全体的に50℃代後半で推移することが多かった。こちらもファンを低回転のままで運用可能で、360mmラジエーターの恩恵を感じられた。

PBO有効 (PPT300W)

240EXよりもかなり余力を残していたため、最大動作倍率を引き上げるためにPBO有効にして計測した。360mmラジエーターの力もあるためか十分運用可能な温度で収まっている。3900Xはコンシューマー向けCPUの中では発熱量が高めの部類に入るが、CASTLE 360EXの場合はまだまだ余力を残していた印象だ。電力制限を開放してクロックも全コア4.175~4.2GHzを容易に維持できていただけでなく、温度もしっかりと抑えてくれるため性能をより引き出したい場合はCASTLE 360EXを強くお勧めする。

総評

プラスポイント

  • 貴重なホワイトカラー
  • 3900Xを相手に余力を残した冷却能力
  • 初めから高性能なファンが付属している
  • 画期的な水漏れ防止技術を搭載
  • 鏡面仕上げで美しいポンプヘッド
  • ロゴがカスタマイズ可能で個性を出しやすい
  • 銅製ベース部分は鏡面に近い磨き上げ
  • 各社RGB制御に対応(アドレサブルRGB/3pin 5V)

マイナスポイント

  • 冷却能力が高いがスペースをとる
  • ファンを光らせたい場合は別途購入する必要がある
  • RGB V2シリーズとポンプの仕様が違うがCastle EXシリーズにRGBファンモデルはない

Anti-leakテクノロジーや独自開発の自社設計のポンプを持つCASTLE EXだが貴重なホワイトカラーの登場によって、より幅広いユーザーに注目されることだろう。チューブやブレードなど完全に白で統一されていない点は賛否が分かれそうだが、数少ない白色の簡易水冷クーラーの選択肢が増えるのはユーザーにとってマイナスになることはないだろう。

公式サイト

株式会社アスク