MSIは第三世代 Ryzenに最適化した「X470/B450 MAXシリーズ」を発売している。もともとはBIOS ROM容量が不足したせいでRAID等の一部機能が使用できなくなってしまったため、BIOS ROM容量を256Mbitに変更したマイナーチェンジモデルとして発売された。だが、初期BIOSから「Zen2」に対応している点や比較的低価格で高性能であったことから人気となり、注目されている製品となっている。
今回はその中でも最も人気のある「B450 GAMING PLUS MAX」をレビューする。

B450 GAMING PLUS MAX (実売9,000~11,000円)

MSI B450 MAXマザーボードのメリット (MSI公式サイトより)

安心して使える工夫

「MSI B450 GAMING PLUS MAX」には、安心して組める・使えるよう、さまざまな工夫がなされている。

スペーサーを置き忘れた場合にマザーボードを傷めないよう、少し離れた場所に配線している。

押しやすい大きさのPCI-Express×16のロック「XL CLIP」や、起動しない時にどの部分で引っかかっているのかを教えてくれる「EZ デバッグ LED」などを搭載。初心者でも安心して組み上げることができる。

第3世代 Ryzenを搭載した際の対応メモリを記載したQVL。その数は驚きの900超えだ(他社はこの半分未満が一般的。少ないところは200にも満たない)。メモリの相性問題対策もバッチリだ。

開封&各部紹介

それでは製品を開封し、各部を紹介する。

パッケージは“THE・MSI”といった感じだが、オレンジと白で書かれた「MAX」の文字が目を惹く。今回使用したマザーボードの代理店はASKだった。

付属品はこの価格にしては非常に多い。I/Oパネル、SATAケーブル×2、ドライバディスク、説明書、組み立てガイド、保証書等の一般的な内容のほか、MSI TRUE GAMINGのシールやゲーミングデバイスの紹介なども入っていた。

マザーボード本体。黒いPCBに赤いアクセントが入っており、見た目は良好だ。 PCBは非光沢仕様で安っぽさは感じられない
近年は黒や白のマザーボードが多くなっているが、MSI GAMING PLUSシリーズは黒×赤のデザインを貫いている。LEDは搭載されているものの非常に控えめで、スロットや基板に印刷されたアクセントのみでも見た目が良くなるようにデザインされている。ちなみに光る箇所は下部の「GAMING PLUS」の文字の部分で、マザーボード背面にあるLEDによって赤色に発光する。

まずはリアI/Oをみていく。
PS/2ポート、USB 2.0×2、USB 3.1 Gen1×2、USB 3.1 Gen2×2、DVI-D、HDMI 1.4、Realtek Gigabit LAN、各種オーディオジャックが存在する。
USBは合計で6ポートでType-Cもない。筆者のようにUSB接続のデバイスをたくさん使用する方は少し物足りなく感じるかもしれない。
映像出力端子は2系統あるが、どちらも4K60Hzの出力には非対応。そもそもATXマザーボードでAPUを使用するユーザーは少ないため、筆者としては映像出力端子の代わりにUSBを増やしてほしかった。
そして、一番左にある小さいボタン。これはFlash BIOS Button(BIOSフラッシュバックボタン)といって、BIOSの復旧を簡単に行えるほか、CPUやメモリをインストールしていない状態でもBIOSアップデートが可能だ。第4世代 Ryzen「Vermeer」や第3世代 Ryzen APU「Renoir」等の新しいCPUが発売された際に、未対応のCPUしか持っていない状態でもBIOSアップデートが行えるのは非常に便利。
ちなみにこの価格帯でBIOSフラッシュバックボタンを有するマザーボードはMSI製のみだ。

各オーディオジャックにはしっかりと金めっきが施されており、ノイズの低減に貢献している。オーディオコンデンサは日本ケミコン製の液体コンデンサが採用されている。オーディオコーデックはRealtek ALC892を搭載。低価格帯のマザーボードでは一般的なものだ。オンボードオーディオは可もなく不可もなくといったところだろうか。少なくとも、普通にゲームを楽しむ分には何ら問題ない性能だ。

公式でDDR4-4266MHz(OC)に対応しているメモリスロット。最大で64GBまで搭載可能だ。メモリスロットは両ラッチ式となっている。
ATX24ピン電源コネクタの右横には、冒頭でも説明した「EZ DEBUG LED」と呼ばれる起動時のエラーを知らせてくれるLEDが存在する。より安心して自作できるような工夫がなされている。

次に、電源周りを見ていく。高性能なCPUを安定して動かすにはVRMが重要だ。そして、このVRMも低温に抑えて運用することが望ましい。そのためには高品質なコンポーネントを採用したり、MOSFETの抵抗を小さくしたりすることや、VRMヒートシンクの表面積を増やすことが大切になってくる。

CPU補助電源コネクタは8ピン。ソリッドピンではなく従来通りのピンを採用している。

コンデンサは日本ケミコン製と思われる固体のアルミ電解コンデンサを採用。その後ろにはチョークコイルが4つ並んでいる。

VRMヒートシンクはデザインを重視しつつ、ある程度の表面積も確保した設計となっている。MOSFETと接触する面にはしっかりとサーマルパッドが貼られていた。放熱面積を他社製品と比較すると、「TUF B450-PRO GAMING」より小さく「B450 Steel Legend」より大きい、といった感じだ。

PWMコントローラはRichtek RT8894A (4+2フェーズコントローラ)を採用。ドライバはRichtek RT9624F。
そしてMOSFETには上位の「MPG X570 GAMING PLUS」などと同じOnSemi製 4C029N/4C024Nが採用されている。また、1フェーズに2つずつのハイサイド・ローサイドMOSFETを搭載しているため、RDS(on)がさらに低下し、比較的低い温度での動作が見込める。もちろんX570マザーボードで一般的なDrMOSには敵わないが、B450マザーボードとしては非常に優秀だ。ちなみにRDS(on)の数値だけを見れば、B450 ATX/MicroATXマザーボードの中では最も優秀となっている。

ストレージインターフェースはM.2×2、SATA 6Gb/s×6。M.2が1スロットしかないというのが少し残念なところだ。SATAは6ポートあるため、ストレージ周りで困ることはあまりなさそうだ。

拡張スロットは至って標準的。剛性確保のために金属シールド「MSI Steel Armor」で覆われたPCIe×16スロット、PCIe×4スロット、そしてPCIe×1スロットが4本だ。

最後に、マザーボード下部のインターフェースを見ていこう。左から、フロントオーディオヘッダ、LPTコネクタ、RGB 4pinヘッダ、TPMヘッダ、ファンコネクタ、2×USB 2.0ヘッダ、USB 3.1 Gen1ヘッダ、システムパネルコネクタ、そしてその上にクリアCMOSジャンパとなっている。

このマザーボードには、合計6ポート(CPUクーラー用含む)のファンコネクタが実装されている。そのため、エアフローを重視して5つのケースファンをつけたとしても、ファンコネクタが不足することはない。安価ながら拡張性に優れており、非常に扱いやすい

BIOSをチェック

次に、MSI独自のUEFI「CLICK BIOS 5」見ていこう。
まずはEZ Modeとよばれる、主要な設定項目がまとめられた初心者向けの画面をみていく。

「CPU」「Memory」「Storage」では、CPU・メモリ・ストレージの情報を確認することができる。

その下の「Fan Info」ではCPUファンや水冷ポンプ、ケースファン等の回転数を確認することができる。ちなみに検証時はケースファンを接続していなかったため、「System Fan」にはグラフが表示されていない。
また、この「Fan Info」の下の「Help」では、このUEFIの機能や操作方法を確認できる。

画面左下の「Favorites」は、自分がよく変更する設定項目にワンクリックでアクセスできるように登録しておける場所だ。例えばメモリオーバークロックを頻繫に行うなら、メモリ電圧やクロック、タイミング設定や「Memory Try It !」等を登録しておけば便利になる。
1つ上の「M-Flash」は後ほど紹介する。

「Hardware Monitor」は各部の温度や回転数、電圧をさらに細かく確認できる
また、「MSI B450 GAMING PLUS MAX」はPWM制御の他にDC制御のファンにも対応している。画面左の「PWM DC Auto」と並んでいるところで制御方式を設定可能だ。

左上の「GAME BOOST」はONにして再起動をするだけでオーバークロックをしてくれる機能だ。オーバークロックに不慣れな方でも簡単にパフォーマンスを向上させることができる。

その右隣にある「A-XMP」は、クリックするとメモリのXMPプロファイルを読み込んでくれるボタンだ。例えば、DDR4-3200のオーバークロックメモリを使用する場合は、ここをONにすればDDR4-3200で動作するようになる。
今回使用したメモリはXMPプロファイルが2つ(4000MHzと4133MHz)存在したため、プロファイル1と2が選択できた。プロファイルが1つのメモリなら、1のみ選択可能だ。

次に、「Advanced」をみていく。F7キーを押すことで入れるこのモードには、上級者向けの機能が揃っている。細かいオーバークロックの設定もこちらから行える。

まずは「SETTINGS」。システムステータス、拡張項目、ブート、Securityの項目がある。

「拡張項目」では、上記画像にある項目の設定ができる。

「ブート」では、その名の通りBootに関する細かい設定が行える。

次に「OC」だ。ここでは、より細かいオーバークロック設定を行うことができる。

「Advanced CPU Configuration」 ではさブーストやコア数に関する設定ができる。

メモリオーバークロックは
また、初心者の方でもMSIが用意したプロファイルを読み込める「Memory Try It !」を利用すれば、簡単にメモリオーバークロックをすることができる。

もちろん、上級者はさらに細かく設定して、より高いパフォーマンスを発揮させることも可能だ。

「OC PROFILE」は自分で設定したオーバークロックの設定を保存することができる場所だ。また、保存したプロファイルをUSBメモリに保存したり、逆にUSBメモリ等からプロファイルを読み込むこともできる。
「Memory Try it !」のようにMSIが用意したOCプロファイルが用意されているわけではないので注意。

MSIの特徴的な機能の1つである「BOARD EXPLORER」は、マザーボードの全体画像がBIOSから確認できるというものだ。各コネクタやスロット等の配置を見ることができる。

「M-FLASH」はBIOSの更新を行う場所だ。BIOSからここにアクセスするには一度再起動する必要がある。
(今回使用したUSBメモリはWindows 10のインストールメディアになっていたため余計なファイルがたくさん表示されてしまっている)

MSIのUEFIは、他社に比べると目当ての設定項目がどこにあるかわかりにくいといった点はあるものの、多機能なうえに「Memory Try It !」といった他社にはないユニークな機能も存在し、実用的だと感じた。

VRM温度を検証

「MSI B450 GAMING PLUS MAX」のVRM温度はどのようなものなのだろうか。Ryzen 5 3600を使用して計測した。
なお、筆者が以前計測した2つのマザーボードのデータを比較用に掲載するので参考にしてほしい。

「MSI B450 GAMING PLUS MAX」のVRM温度は比較的低温に抑えられており、価格を考えると非常に優秀であることがわかる。
冷却面が優れている「ASUS TUF B450-PRO GAMING」には多少劣るものの、この結果であれば8コアCPUを簡易水冷クーラーで使用したり、12コアCPUを空冷クーラーで使用する分には全く問題ないだろう。

オーバークロック検証

〇 メモリオーバークロック

この価格のマザーボードとしては驚きの【DDR4-4266MHz】対応を謳うこのマザーボードだが、実際はどのくらいオーバークロックができるのだろうか。「Patriot Viper Steel PVS416G413C9K(DDR4-4133 CL19)」を使用して検証してみた。

公式で対応を謳っている4266MHzは全く問題なく動作。「Memory Try it !」のDDR4-4266 CL18プロファイルも問題なく通った。しかし、4266MHzよりも高いクロックでの動作は困難で、どんな設定でも起動に失敗してしまった。
DDR4-3600 CL16やDDR4-3200 CL14の動作は問題なし。この価格のマザーボードとしは非常に優秀な結果となった。

ただ、メモリオーバークロッカーの方によると、MSI製マザーボードはクロックは上がるもののタイミングを詰めるのにはあまり向かないという。DDR4-3200 CL14やDDR4-3600 CL16等の一般的な範囲であれば全く関係のない話だが、本格なメモリオーバークロックをやろうと思っている方には素直にASUS製マザーボードをおすすめする。

総評

「MSI B450 GAMING PLUS MAX」の良いところ

  • 1万円以下で購入できる安価なマザーボード
  • 価格のわりにしっかりとしたつくりの電源回路
  • 優秀なメモリオーバークロック耐性
  • CPUクーラー用を含め、合計6つのファンコネクタを搭載
  • 「Memory Try It !」等のユニークで実用的な独自機能

「MSI B450 GAMING PLUS MAX」の微妙なところ

  • M.2が1スロットのみ

「MSI B450 GAMING PLUS MAX」は、7500円~10000円前後で購入できる安価なAM4マザーボードだが、そうは思えないほどよくできたマザーボードだと感じた。
低価格帯マザーボードでは削られることの多いファンコネクタやデバッグLEDもしっかり実装され、さらにVRMのつくりやメモリオーバークロック耐性も優秀。唯一M.2スロットが1つしかない点は欠点だが、M.2 SSDを2つ以上搭載しないという方ならこのマザーボードを真っ先におすすめしたいといえるほどに素晴らしい製品だ。

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