製品提供:株式会社MUSIN

今回は株式会社MUSINより「Shanling UA2 レビューテスターキャンペーン」で筆者が当選したためレビューする。小型でありながらESS製の「ES9038Q2M」を搭載した豪華な仕様の製品だ。
オーディオメーカー「Shanling」とは
SHANLING(シャンリン)は1988年にHiFiステレオパワーアンプの製造を皮切りにオーディオ製品の開発をスタートさせた中国のオーディオメーカーである。30年以上の歴史があり元々はSACD/CDプレーヤー、HiFiアンプ、真空管アンプなど据え置きのオーディオ機器を手掛けていたが、近年はデジタルオーディオプレーヤー(DAP)、Bluetoothレシーバー、イヤホンなどポータブルオーディオを中心に日本国内でも人気を集めている。筆者も過去にM3sなどを使用しており製品のレビューが非常に楽しみだ。
SHANLING UA2について
「Shanling UA2」はスマートフォンやタブレット向けのポータブルDACアンプだ。近年はスマートフォンやタブレットに3.5mmイヤホンジャックを搭載しないものが増えており、スマートフォン等の付属の変換ケーブルを使用してイヤホンを接続することがほとんどだ。現在はワイヤレスイヤホンもかなり普及しており、スマートフォン本体の音質に力を入れているメーカーは少ない。「Shanling UA2」はUI面で優れたスマートフォンを再生機器とし、手軽に高音質なオーディオ環境を構築できる製品だ。

スペック(代理店ページ製品仕様より)
■ 本体 | |
---|---|
本体サイズ | 54 x 18 x 9mm |
重量 | 12.6g |
■ シングルエンド出力特性値 | |
出力レベル | 2V @ 32Ω (125mW@32Ω) |
周波数特性 | 20Hz-50kHz (-0.5dB) |
THD+N | 0.0008% @ 32Ω (A 特性 @ 0.5V) |
ダイナミックレンジ | 122dB @ 32Ω (A 特性) |
S/N 比 | 121dB @ 32Ω (A 特性) |
クロストーク | 76dB @ 32Ω |
出力インピーダンス | <0.8Ω |
■ バランス出力特性値 | |
出力レベル | 2.5V @ 32Ω (195mW@32Ω) |
周波数特性 | 20Hz-50kHz (-0.5dB) |
THD+N | 0.0008% @ 32Ω (A 特性 @ 0.5V) |
ダイナミックレンジ | 120dB @ 32Ω (A 特性) |
S/N 比 | 116dB @ 32Ω (A 特性) |
クロストーク | 109dB @ 32Ω |
出力インピーダンス | <1.6Ω |
製品内容物 | UA2 本体 x1、USB-TypeC to C ケーブル x1、USB-TypeC to A コネクタ x1、クイックスタートガイド x1、保証書 x1 |

DACにはESS製の「ES9038Q2M」、オペアンプにはRiCore Technology「RT6862」と呼ばれるものが使用されている。「ES9038Q2M」は「SABRE 2M DAC」シリーズのフラッグシップモデルで、モバイル向けではあるが非常に高いスペックのDACだ。この組み合わせで小型ながら最大121dBのS/N比・ダイナミックレンジ122dB(シングルエンド出力時)という高い能力を持っている。

動作中は再生するファイルのサンプリングレートを様々な色で表すLEDランプが点灯し、高レートファイルの再生を一目で確認することができる。レッドの「UAC(USB Audio Class)1.0」のモードは本体側面の「USBモードボタン」を押しながらデバイスに接続することで使用できる。
機材紹介(ヘッドホン、イヤホン等)

今回使用する機材はヘッドホンに「Gold Planar GL1000」、イヤホンには「HZSOUND Heart Mirror」を使用する。どちらも比較的癖が少ない音だ。「Gold Planar GL1000」のインピーダンスは50Ωではあるが、平面磁気ドライバー使用した駆動力を必要とするヘッドホンのため、「Shanling UA2」がどれだけヘッドホン本来の能力を発揮させることができるかが争点となるだろう。再生機器はスマートフォンに「Huawei P30 PRO」、デスクトップパソコンを用いる。(Gold Planar GL1000は日本未発売だが下位のGold Planar GL600は購入可能)


「HZSOUND Heart Mirror」の付属のケーブルは3.5mm(アンバランス)のみのため、レビュー用のケーブルは「NICEHCK C16-4」の3.5mm(アンバランス)と2.5mm(バランス)の2種類用意した。付属のケーブルには銀メッキのケーブルが採用されている点や、「Shanling UA2」の駆動力であれば16芯は可能であると判断した。(付属の8芯ケーブルと比べても駆動力不足は感じなかった)
なお、「Gold Planar GL1000」はバランスの同じ線材を使用したケーブルが入手出来なかったためアンバランスのみでの評価になることをご容赦頂きたい。
パッケージ・付属品

外箱は黒基調のシンプルなデザインだ。右下にはハイレゾオーディオロゴが印刷されている。UA2本体やShanlingのロゴマークには光沢もあり高級感も感じられる。

中は固めのスポンジに本体とUSB Type-C to Aの変換コネクタが収められている。輸送中に製品が動かないようしっかりと固定されていた。試しに箱を少し揺らしてみたが、全く製品は動かかなかった。(ただし、影響は少ないがケーブル類はそれなり揺れる)

内容物はUA2 本体 x1、USB-TypeC to C ケーブル x1、USB-TypeC to A コネクタ x1、クイックスタートガイド x1、保証書 x1、ハイレゾオーディオロゴシールの予備が入っていた。






本体にはメーカーロゴ、モデル名、スペック、ハイレゾオーディオロゴシールが印字されている。(ハイレゾオーディオロゴシールはシール)本体の材質はアルミニウムで軽量かつ持ち運びに適したサイズ感だ。USBメモリと比較しても本体が細身なせいかコンパクトに見えるだろう。USB Type-C to Aの変換コネクタは上記の写真のように使用するが、PCのマザーボードにType-Cコネクタがあれば使わずにそのまま使用することができる。
音質評価
音質評価では以下の音源で評価した。できる限り幅広いジャンルを聴くことを心掛けたが、DSD音源等の用意ができなかった点はご容赦頂きたい。
Hi-Res音源 | ファイル形式 | アーティスト |
初音ミクシンフォニー~Miku Symphony 2016~ オーケストラ ライブ | flac 96.0kHz/24bit | 初音ミク/東京フィルハーモニー交響楽団 |
初音ミクシンフォニー~Miku Symphony 2017~ オーケストラ ライブ | flac 96.0kHz/24bit | 初音ミク/東京フィルハーモニー交響楽団 |
田中公平 オン・ブラス! | flac 96.0kHz/24bit | 航空自衛隊航空中央音楽隊/指揮:水科克夫 |
THE Hi-Res CLASSIC CONCERT AYAKO ISHIKAWA | flac 192kHz/24bit | 石川綾子 |
僕と君との音楽帳 | flac 96.0kHz/24bit | 四月は君の嘘 僕と君との音楽帳 |
トゥインクル リトルスター | flac 96.0kHz/24bit | 四月は君の嘘 トゥインクル リトルスター |
The World’s On Fire | flac 48kHz/24bit | MAN WITH A MISSION |
HAPPY | flac 48kHz/24bit | 大原櫻子 |
その他音源 | ||
あの日 あの時 | flac 44.1kHz/16bit | あの日あの時 |
TIMELESS World | flac 44.1kHz/16bit | コブクロ |
TAILWIND | flac 44.1kHz/16bit | TrySail |
THE JSB LEGACY | flac 44.1kHz/16bit | 三代目 JSoul Brothers |
Eddict Playerの操作感
今回はAndroidでのレビューでは「Eddict Player」というアプリを使用する。「Eddict Player」アプリは端末に保存されている音楽の再生や、様々なShanling製品と連携することでリモートコントロールや拡張機能を使用可能とする、スマートデバイス向けのコンパニオンアプリだ。現在の最新バージョン(V1.0.15)では「日本語」をサポートされていないため今後予定しているアップデートに期待したい。




Eddict Playerはデフォルトでは中国語に設定されている。現在言語一覧に日本語の表記は有るが今のところ非対応だ。恐らく日本のユーザーはEnglishを選択するのが一番使い勝手がいいだろう。画面左上から歯車マークを選択し、「语言(言語)」の選択で言語を変更する。英語表記でもトースト表示が一部中国語のままの部分もあるがアプリのレイアウトは直感的で分かりやすい。



USB Control 項目 | 説明 |
Maximum Volume / 最大音量の変更 | 設定した以上のボリュームが出ないようにする機能 |
Volume / ハードウェアボリューム | UA2自体のハードウェアボリューム。 使用するイヤホンの感度や抵抗等に合わせて設定する |
Digital filter / デジタルフィルター | DACチップのデジタルフィルターの設定 変更するとノイズを除去する方式が切り替わる |
Gain / ゲイン | アンプのゲインを High / lowで切り替える機能 使用するイヤホンの感度や抵抗等に合わせて設定する |
Channel balance / チャンネルバランス | 左右の音量を調整する機能 |
UA2とスマートフォンの連携は言語変更と同様に左上のメニューを開き、USB Controlの項目を選択する。UA2選択するとアクセス権限の確認が表示されるため問題がなければ許可する。完了すると上記の3枚目の画像のような状態になる。USB Controlの各種項目は上記の説明の通りだ。



Eddict PlayerはDLNAのクライアントソフトとしても機能する。上記のように再生も問題なく行うことができた。カバーアートはサーバ内の小さい解像度のものが使用されていた。
PCで聴くために必要な準備

現行のWindows10 Pro(20H2)ではデバイスを接続するだけで使用することは可能だが、メーカー及び代理店は推奨していない。こちらのリンクからファイルをダウンロードし解凍して「Shanling UA1_USB Audio Driver.exe」を起動する。インストール後再起動で完了する。
上記リンクはShanling UA1 / UA2用ドライバーについてより
音質
スマートフォンの付属のケーブルからUA2に切り替えた時、まず初めに感じるのはバックグラウンドノイズの少なさだ。スマートフォンによって差はあるものの、筆者が所有しているスマートフォンの場合はイヤホンでは気になる程度、ヘッドホンでも微かに聞こえる状態でした。UA2に切り替えると無音とまではいかないが、かなりノイズを軽減できる。このノイズの有無によって音楽に浸れるかに大きく関わってくるため、音楽を聴く前から期待値が上がった。
結論として癖が少なく様々な音源と相性がいい。フラットな傾向で、各音域はそこまで強調されているような感じはない。ESSチップを採用したDACアンプではあるが、想像より暖かい音色で自分の想像より聞き疲れしづらい印象だった。楽曲はポップス系ならそこまで相性を考えなくても良さそうだが、個人的には高めの男性ボーカルや女性ボーカル相性がいいように感じた。
解像感の高さは必要十分で濃密な音を出すため、楽器の音も綺麗に鳴るがロックミュージックでは少しだけ物足りなさも感じた。ただ、評価に使用しているイヤホン・ヘッドホンも癖が少ない部類に入るため、他のものでは解消できる可能性はある。
クラシックでの立体感は悪くはなかったが、もう少し音場が広いと更に良くなるだろう。音の輪郭はしっかりと感じることができバックグラウンドノイズも少ないため、楽器数が増えても空間に響く音を一音一音感じることができる。また、ピアノやヴァイオリンのソロでもバックグラウンドノイズの少なさが活かされている。
総合的に見るとかなり小型なサイズながらかなりレベルの高い仕上がりだった。ただ、動作中はそれなりに発熱するのが気になる。熱の籠る環境では注意したいところ。また、使用中はスマホのバッテリーの消費量も上がる点も注意しておいた方がいい。さらに今回使用したヘッドホンでは音量は十分出せているものの、若干パワーが足りないように感じた。
総合評価
良い点
- バックグラウンドノイズが少なく音楽に集中できる
- 聴き疲れしにくい
- 小型・省スペース
- 様々な音源と相性がいい
- 接続できる機器が多い
気になる点
- 平面磁気ドライバーを使用した「Gold Planar GL1000」は完璧には鳴らし切れていなかった
- 本体が発熱しやすい
「Shanling UA2」は小型ながら、ESS製の「ES9038Q2M」を搭載したコストパフォーマンス高い製品に感じた。3.5mmイヤホンジャックを搭載しないスマホが増えてきた中、UA2は既存の機器で簡単に音質アップを狙うことができる。スマートフォンの音質に満足できない人や、変換ケーブルのノイズに悩まされているユーザーに特におすすめだ。稼働力が必要なヘッドホンには向かないが、イヤホンでは十分の稼働力はあるため外出先でも手軽に高音質に鳴らしたいユーザーに向いているだろう。