提供:エムエスアイコンピュータージャパン
今回はMSIから発売される「MPG B560I GAMING EDGE WIFI」をレビューする。
本製品はB560チップセットを搭載した小型のMini-ITXフォームファクタのマザーボードだ。B560チップセットのためCPUのオーバークロックには対応せず、上位のZ590と比較すると一部機能が省かれていたりするが、その分安価で購入することができる。
外観・付属品
「MPG B560I GAMING EDGE WIFI」は黒を基調としたシンプルなデザインだが、ヒートシンクの黒色は少しメタリックがかっている。ゲーミングマザーボードと名乗ってはいるが、RGB LEDで光らせたい場合はもちろん落ち着いた雰囲気のPCを組みたい場合にも重宝しそうだ。
付属品は画像の通り。ユーザーズマニュアルやドライバCD、M.2 SSD固定用のネジなどに加え、ネジを締める方のドライバー(画像左上)やMSI MPGのシールなど個性的なアイテムも付属している。
基本性能
対応CPU | 第11世代・第10世代 Intel Core i9, i7, i5, i3, Pentium, Celeronプロセッサ |
搭載チップセット | B560 |
フォームファクタ | Mini-ITX |
対応メモリ | DDR4-5200(シングルランク・最大)、DDR4-4700+(デュアルランク) |
PCI-Express x16 | PCIe 4.0(第11世代 Core i9, i7, i5プロセッサ)、PCIe 3.0(左記以外) |
ストレージ | 2×M.2 2280(詳細は記事内にて記載)、4×SATA 6Gb/s |
映像出力端子 | HDMI 2.0b、DisplayPort 1.4 |
ネットワーク | Realtek RTL8125B 2.5GbE、Intel Wi-Fi 6E AX210 |
搭載オーディオ | Realtek ALC897 Codec |
背面インターフェース | 1 x DisplayPort 1 x HDMI 3 x Audio jack(s) 4 x USB 2.0 1 x USB 3.2 Gen 2 (up to 10Gbps) ports (Type-A) 1 x USB 3.2 Gen 2 (up to 10Gbps) ports (Type-C) |
I/Oパネルを確認
それでは細部を確認していく。まずはリアI/Oだ。リアI/Oは比較的シンプルだが、必要な機能は揃っている印象だ。USBポートは合計6ポートで、安定性が高いUSB 2.0が4ポート、10Gbps対応の高速なUSB 3.2 Gen2が2ポート(うち1ポートはType-C)。安定と速度に極振りした構成となっている。映像出力端子はHDMI 2.0bとDisplayPort 1.4の2系統が用意されている。どちらも4K60Hzを出力可能だ。B560のITXマザーボードということで内蔵グラフィックで運用する人もいるだろうが、この2つがあれば基本的に不足しないのではないだろうか。
ネットワーク関連としては、有線LANと無線LANの両方が用意されている。有線のほうはRealtek RTL8125B 2.5GbEを搭載。RTL8125Bは安定性と速度に定評があり、低遅延で快適にゲームをプレイ可能だ。無線のほうもIntel Wi-Fi6E AX210を搭載。現在日本では法律により6GHz帯のWi-Fi 6Eの使用はできないが、Wi-Fi 6(iEEE 802.11 ax)ももちろん使用できるため、無線であっても有線に引けを取らない快適なゲームプレイ体験が可能となっている。
Bluetoothは5.2にも対応しているが、今後Microsoftから提供されるWindows 10 21H2にアップデートする必要がある。
オーディオ入出力端子は3つで、光端子は搭載されていないため注意したい。
Mini-ITXマザーボードはチップを実装する面積が限られているため必然的に機能が絞られてしまうものだが、一般的に使用頻度が高いものが優先して搭載されており、機能性に優れていると感じる。
I/Oパネルは一体型になっているため、ケースに組み込む際に付け忘れるといった事故が起こらない。ちなみに裏側は上の画像のとおり、全体にスポンジが入っている。
Core i9も安定して動かせる電源回路
VRMは6+2+1フェーズで、各フェーズにはONSemiconductorのFDMF 3035、いわゆる50AのDr.MOSが実装されている。そして、アウトプットコンデンサには日本ケミコン製のものが使われている。Mini-ITXマザーボードの少ない面積で効率よく安定した動作を実現するため、一般的にハイエンドモデルなどに用いられるような部材が実装されているというわけだ。下位チップセットのMini-ITXだからといって電源回路が他のモデルと比べて劣っているということはない。
PWMコントローラーにはRICHTEK製RT3609BEを使用、フェーズダブラーは使用せずに並列実装となっている。
また、サーマルパッドには7W/mK品を採用。MOSFETとチョークそれぞれに触れるようになっており、発生した熱をヒートシンクに効率よく伝導する。
M.2スロットは2本、表側はPCIe Gen4に対応
近年はM.2 SSDが主流になっており、M.2スロットがついていないマザーボードを探す方が難しくなっているほどだ。配線やスペースが必要ないことがM.2 SSDを選択する利点だが、一般的にSATAポートと比べて搭載可能数が少なくなる。Mini-ITXマザーボードに関していえば、廉価チップセットを搭載した製品はM.2が1スロットしかないこともあるのだが、この「B560I GAMING EDGE WIFI」は2スロット実装されており、SSDを2本搭載する場合でも配線なしで組むことができる。
M.2スロットは表と裏にそれぞれ1スロットずつあり、表面はCPUによって対応が変わり、第11世代Coreプロセッサを使用する場合はCPU直結のPCIe 4.0対応スロットとして動作するが、第10世代Coreプロセッサを使用する場合はB560チップセット経由のPCIe 3.0対応スロットとして動作するという仕様になっている。裏面はCPUに依らないB560チップセット経由のPCIe 3.0対応スロットとなっている。第10世代のCPUを使用した場合でも全てのM.2スロットが利用できるので、前世代マザーボードからの買い替えであったり、Core i5 10400FやCore i7 10700Kといった、価格が下がった第10世代CPUを使って新規に組む場合にもおすすめできる仕様だ。また裏面のM.2スロットはIntel Optaneに対応している。
また、大きさはどちらも一般的なM.2 2280のみの対応となっている。基本的にこれ以外の大きさのM.2 SSDを使う人はあまりいないと思うが、メーカー製PCのM.2 SSDはM.2 2242などの小型サイズのものだったりするため、メーカー製PCからの移行・流用を考えている方は規格を確認しておきたい。
表面のCPU直結スロットに関しては放熱機構が備わっており、SSD表面と接触する「EDGE」とかかれたアルミ製放熱板、SSD裏面と接触するアルミ塊ヒートシンクの2つで高発熱のPCIe SSDをしっかりと冷却してくれる。M.2ヒートシンクの放熱性能の検証結果については後ほど紹介する。
裏側のM.2スロットにはヒートシンクは備わっていないため、発熱の少ない製品であったりM.2タイプのSATA SSDなどを搭載するのが良いかもしれない。
また、PCI-Express ×16スロットもGen4に対応している。現状でPCIe 4.0をフルに使えるほど高性能なビデオカードは発売されていないが、将来的なアップデートにも余裕をもって対応できそうだ。
ヘッダ類・実装部品を確認する
マザーボード上部には4pin RGBヘッダが1つ、その横にファンコネクタが3つある。上の画像で右にあるファンコネクタはCPUクーラー用、真ん中は水冷のポンプ用、左はケースファン用だ。ケースファンを3つ(CPUクーラーが水冷の場合は2つ)以上繋ぐには分岐ケーブルが必要になる。
メモリスロット周辺のヘッダ類を見てみる。SATAが4ポート、フロントUSB Type-Cヘッダ(USB 3.2 Gen1)、USB 3.2 Gen1ヘッダ、TPMモジュールコネクタがそれぞれ1つずつある。また、画像右側の位置には3pin ARGBヘッダがある。アドレサブルLEDを用いて光るPCを作ることが可能だ。
そして、USB 3.2 Gen1ヘッダの横には4つのLEDが並んでいる。これは「EZ Debug LED」といい、起動時に不具合が発生した場合、どのパーツに問題があるのかが一目で分かるように光って知らせてくれる機能だ。通常はCPU、DRAM(メモリ)、VGA(GPU)をチェックした後にBOOTが光って起動するが、例えばメモリに不具合がある場合はDRAMが点灯したままになる。
PCIe×16スロット付近にはUSB 2.0ヘッダ、システムパネルヘッダ、フロントオーディオヘッダがある。オーディオコーデックはRealtek ALC897、コンデンサはメーカー不明のオーディオ向け液体コンデンサが使われている。普段使いやゲームを楽しむ程度であれば充分な性能だが、より優れたオーディオ環境を整えたい場合は外付けのDACが必要になる。
I/OコントローラにはNuvoton NCT6687D-Mが使われている。
BIOSデータ保持用のボタン電池はケーブルで接続されておりオーディオ入出力ジャックの上に設置されている。基板サイズに限りがあるMini-ITXならではの配置だ。
ヒートシンクの重量をチェック
MSI製のマザーボードはI/Oシールドを従来のプラスチック製のものから金属製のVRMヒートシンクを伸ばして高級感と冷却効率を向上させているものが多い。今回のMPG B560I GAMING EDGE WIFIに関してもヒートシンクがI/Oシールドまで延長されておりMini-ITXのVRMヒートシンク体積を確保できない問題を解決している。CPUソケット左側のヒートシンクは98.83gでATXサイズのマザーボードに比べればだいぶ小さいが上で紹介した50AのDr.MOSのおかげで十分な温度環境を維持できている。
CPUソケット上のVRMヒートシンクは非常に小さく38.68gしかない。CPUソケット上のVRMはフェーズ数がそもそも少ないので1フェーズ当たりの重量で考えれば十分な重さを確保できているのだろう。
M.2ヒートシンクはかなりの大きさがあり、39.20gと非常に重たい。Gen4 SSDを冷やすために巨大なヒートシンクとなっているがATXサイズのマザーボードにもここまでの大きさのM.2ヒートシンクを搭載しているものは少ないためかなり頑張っていると言えるだろう。
動作検証
それでは実際にPCに組み込み、VRMの温度検証やM.2ヒートシンクの温度を検証する。今回の構成は以下の通りだ。
VRM温度を検証
Core i9 11900Kを使用し、室温20℃の部屋でOCCT7.2.3:OCCTテストを30分実行した際のVRMの温度変化を計測した。
その結果、時間経過とともに温度は上昇し最終的に65℃に張り付いたものの、それ以上になることはなかった。VRMフェーズ数は少ないものの、最新・最上位のCore i9 11900Kに負荷をかけても安定して動作できるようなしっかりとした設計となっていることが分かった。
M.2ヒートシンクの冷却性能を検証
次にM.2ヒートシンクの冷却性能の検証だ。PCIe 4.0に対応した超高速SSD “Samusung 980 PRO 500GB”を使用し、CrystalDiskMark 64GiB設定で読み込み・書き出しを行い、その際の温度変化を計測した。
結果はグラフの通り、最大でも58℃にとどまった。PCIe 4.0の高速SSDを最大でも60℃以下で動作させることができたことから、M.2ヒートシンクの冷却性能は十分であることが分かった。
総評
MSI「MPG B560I GAMING EDGE WIFI」はB560チップセットを採用し価格を抑えつつゲーマーに必要な機能を揃えたバランスの良いMini-ITXマザーボードだ。VRMには高性能なSPSを搭載し、少ないフェーズ数でも安定して動作する設計となっている。また、CPUの世代を問わず2つのM.2スロットが利用可能なので、Intel 400シリーズマザーボードからの買い替えや新規に第10世代CPUで組む場合にもおすすめしやすい。放熱機構は比較的優秀だが、Mini-ITXの特性上熱がこもりやすいためケースの排熱には気を使った方がよいだろう。価格も2万3千円ほどとMini-ITXマザーとして一般的なことから非常に優秀な1枚だ。