2021年3月30日22時(日本時間)、Intel第11世代CPUが発売された。今回の11世代CPUは1コア当たりの性能の向上はあるものの、コア数は10コアから8コアへと減ってしまっているため、様々な憶測が飛び交い購入前の判断が非常に難しいCPUとなっていた。本記事では第10世代のIntel Core i9 10900Kと第11世代のIntel Core i9 11900Kの性能を検証し、実力を測る。
スペック
Core i9 11900K | Core i9 10900K | |
コードネーム | Rocket Lake-S | Comet Lake-S |
アーキテクチャ | Cypress Cove | Skylake |
対応ソケット | LGA1200 | LGA1200 |
プロセスルール | 14nm | 14nm |
コア数/スレッド数 | 8/16 | 10/20 |
ベース/ブーストクロック | 3.50/5.30GHz | 3.70/5.30 GHz |
キャッシュ | 16MB | 20MB |
定格メモリクロック | 3200MHz | 2933MHz |
内蔵GPU | UHD 750 | UHD 630 |
PCIeバージョン | 4.0 | 3.0 |
TDP | 125W | 125W |
付属クーラー | なし | なし |
価格 | ¥77,800 | ¥53,878 |
今回の注目ポイントはコア数が10コアから8コアへと減っているところである。それに伴いスレッド数も20から16へと減っている。ただし1コア当たりの性能については向上しているので全体の性能がどうなるかは注目するべきポイントだ。またネイティブメモリクロックは2933MHzから3200MHzへと向上し、内蔵GPUも長年使われてきたUHD630から新たにUHD750に変更された。動作クロックはベースクロックが3.70GHzから3.50GHzへと下がっているがシングル性能は向上しているという。
そしてAMDに一足先に行かれてたPCIe4.0も正式に対応している。Z590マザーボードでは一番上のM.2スロットに限るが、Gen4 SSDを使用することもできるようになりSamsung 980ProやWestern Digital SN850などの高速なSSDも本来の力を発揮することができるようになった。
ソケット形状はLGA1200を続投、ヒートスプレッダの形状を含むCPUの形状は第10世代Coreシリーズと違いはない。
裏面のキャパシタ配置はCore i9-10900Kと大きく違う。10900Kが上下に分割されてキャパシタが配置されていたのに対し、11900Kは統合されている。
CPU取り付け
LGA1200ソケットにCore i9 11900Kを載せる。取り付け方法は今までと変わりはない。
コア数は8コアを認識、キャッシュもそれに伴い16MBに削減されている。ただしL2キャッシュは2.5MBから4.0MBへ拡張されている。
検証環境
Core i9 11900Kのパフォーマンスをチェック
それでは各種ベンチマークを走らせ、ベンチマーク結果をCore i9 10900Kと比較する。
CPU単体の性能をチェック
CINEBENCH R15
CINEBENCH R15のシングルコアテストはCore i9 11900Kは259cbと24%ほどスコアアップした。Core i9 9900KとCore i9 10900Kはシングルコア性能はほとんど変わらずコア数の増加で性能向上を図っていたが、今回のCore i9 11900Kはシングルコア性能を飛躍的に向上させることに成功した。一方でマルチコア性能はコア数が10コアから8コアへと減少したことで2474cbから2378cbと若干ではあるがスコアダウンしてしまっている。4Chunksで検証した際にはまだ発売前のベータBIOSで検証したため、11900K本来の性能を発揮しきれていない可能性もあるが100cb近く下がってしまっていることは残念だ。今後のBIOSアップデートでの性能向上を願うばかりだ。
CINEBENCH R20
続いて多コア環境で精度が高くなったCINEBENCH R20を使用してベンチマーク結果をチェックしていく。シングルコア性能はCINEBENCCH R15と変わらずCore i9 10900Kの506ptsからCore i9 11900Kの627ptsへと24%向上した。マルチコア性能はCore i9 10900Kの6249ptsからCore i9 11900Kの5974ptsへと5%ほど低下している。CINEBENCH R15では4%ほどのスコア低下だったのでやはりマルチコア性能はどうしても苦しい結果となっていしまっている。
CPU-Z
続いてCPU-Zのベンチマークを動作させる。シングルコア性能はCore i9 10900Kと比較して21%増、マルチコア性能は9%減という結果となっている。やはりCore i9 11900Kの8コアマルチ性能はCore i9 10900Kの10コアにはやや劣るといった結果となった。
Core i9 11900Kを搭載したPCの総合性能をチェック
さて、システムの総合的な性能をチェックするためにPCMark 10/PCMark 10 Extendedを使い、両CPUを比較した。Core i9 11900Kは単体のCPU性能の測定ではマルチコア性能でCore i9 10900Kに若干負けていたが、PCMark 10、PCMark 10 ExtendedともにCore i9 10900Kに約5%ほど勝っている。これはPCMark 10がCPUのマルチコア性能のみならずシングル性能を要求するテストが含まれていることや、PCIe Gen4に対応したこと、メモリクロックが2933MHzから3200MHzへと向上したことによる基盤の向上によるものも大きいだろう。
ゲーム性能をチェック
3DMark Time Spy
DirectX 12を使用する3DMarkのTime Spyを動作させ、性能を測定した。CPU以外の環境は統一されているため、このスコアの違いはCPUの性能の違いによるもののみである。結果はCore i9 11900KはCore i9 10900Kに比べて約5% CPUスコアが下がってしまっている。これは3DMark Time Spyが比較的マルチコア性能を要求するため、ゲーム用途で使用した場合でもCPUだけで見るとやはりCINEBENCHやCPU-Zベンチマーク同様に5%の性能低下がみられる。一方でシステム全体のスコアである総合スコアでは差が1%未満なのでやはり基盤としての性能はCore i9 11900Kの方がよいのだろう。
3DMark Fire Strike
次にDirectX 11を使用する3DMark Fire Strikeを使用してスコアを計測した。結果は総合スコアは12%の減、物理スコアは5%の減、Fire Strikeスコアは6.4%の減という結果になった。DirectX 12ではCore i9 11900Kが上回っていたのに対し、DirectX11のテストではCore i9 10900Kが優位に立つという結果になった。Fire Strikeでは物理スコアの5%減がマルチスコア性能と同等の性能差が出ているのでコア数による影響が大きいという結果が得られた。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク
ファイナルファンタジーXIVのベンチマークではスコア差約10%でCore i9 11900Kが優位に立った。FFXIVベンチマークではシングルコア性能もある程度必要であるということが示された。定格クロックはCore i9 10900Kの方が0.2GHz高いが、ブースト時クロックは5.3GHzで両者同じなので単純にシングルコア性能、基盤性能によるアドバンテージがスコアに反映されたのだろう。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK
重量級のFINAL FANTASY XVベンチマークも動作させた。結果はファイナルファンタジーXIVベンチマーク同様Core i9 11900Kが優位に立つという結果が得られた。ただしFINAL FANTASY XVベンチマークの場合はスコアの差が激しく、Core i9 11900KがCore i9 10900Kに対し、約15%スコアが高いという結果になった。
Apex Legends
Apex Legendsは現在、オリンパスとキングスキャニオンの2つのマップが使用されている。今回はオリンパスとキングスキャニオンをフルタイムで計測し、平均フレームレートを出したものを外れ値なしの5回をさらに平均して値を出した。結果はCore i9 11900KがCore i9 10900Kに対し11fps低い結果となった。NVIDIA GeForce RTX3090の使用率は99%とフルパワーで動作しているのでCPUがボトルネックで性能が出し切れないということはどちらのCPUもなかった。現時点ではApex Legendsにはより多コアであるCore i9 10900Kに軍配が上がる結果となった。
エンコード性能をチェック
Blender benchmark
Blender Benchmarkを使用して3Dモデルのエンコード性能を測定した。結果はどちらも得意なもの、苦手なものがありvictorやkoroなど非常に重たいものに関してはCore i9 11900Kに軍配が上がる一方、bmw27やpavillon_barcelonaなど負荷が重すぎないものはCore i9 10900Kの方が得意であるという結果になった
総評
今回のCPUはアーキテクチャが一新されたため、多コア化が難しく厳しい結果となってしまった。IPCは19%向上し、シングルコア性能は飛躍的に伸びたが、やはりコア数が10コアから8コアへ減ってしまっていることは無視できない。まだBIOSが未成熟で本来の性能が出し切れていないため、今後さらに性能を出せるようになるかもしれないが全体的な性能としてはCore i9 10900Kから大きく伸びることは残念ながら期待はできない。9世代以前のCPUを持っている人は今回のCore i9 11900Kに変更したら大きく性能が上がるかもしれないが、10世代CPUを持っている人は無理に変える必要はないだろう。いずれにしろ今後のBIOSアップデートで性能向上を願うばかりだ。