
製品提供:株式会社サイズ
スイスのCPUクーラーメーカー「ARCTIC」は2019年10月に簡易水冷CPUクーラー「Liquid Freezer II」を発表していた。日本には去年に秋葉原のPCパーツショップのオリオスペックが独自に輸入して販売していたが、2021年5月12日から株式会社サイズが代理店を務め、様々なショップでこのLiquid Freezer IIシリーズを発売する運びとなった。今回は株式会社サイズからARCTIC Liquid Freezer II 360を発売前に提供いただけたので実際に現在のハイエンドCPU Intel Core i9 11900Kを使用してCPU温度、またこのクーラーの一番の特徴ともいえるVRM冷却用のファンの性能はいかほどか検証していく。
スペック
ラジエーター寸法 | 398×120×38 mm |
ラジエーター材料 | アルミニウム |
ホース長 | 450 mm |
ポンプ速度 | 800-2000 RPM |
ファン寸法 | 120×120×25 mm |
ファン回転速度 | 500~1800 RPM |
Fan Airflow | 56.3 CFM |
静圧 | 2.2 mm H2O |
電源コネクタ | 4-pin PWM |
対応ソケット | Intel LGA2066/2011-3/115x/1200 AMD AM4 |
消費電力 | 1.0~2.7 W |
重量 | 1687 g |
パッケージ

青を基調としたパッケージに本体のイラストが描かれている。製品の保証年数は2年間で代理店である株式会社サイズの製品保証シールについても2年間の保証との記載がある。

天面にはARCTICのロゴが中央に、右下にはcarbon neutralとの記載がある。

背面にはこのLiquid Freezer IIのポイントが記載されている。非常に特徴的なCPUクーラーなので実際に使用するのが楽しみになる。

左側面にはCPUクーラーの仕様が事細かに書かれている。

右側面には多言語で製品についての説明が記載されている。残念ながら日本語の説明はパッケージには用意されていない。右下にはサポートページのURLが格納されたQRコードが用意されている。
付属品

Intel用のリテンションとケースにラジエターを取り付けるためのねじ類は同じ袋に入っている。写真左下はCPUクーラーのヘッドに取り付けるための金具、右下はIntel用マザーボードのバックプレートだ。バックプレートは金属製で非常に剛性が高く手で曲げようとしても全く曲がらなかった。

対してAMD用の付属品は至ってシンプル。対応ソケットがAM4のみであることからRyzen Threadripperには非対応である。

付属しているグリスは超有名グリスの一つであるMX-4だ。MX-4もARCTIC製品であるため付属しているのは何ら不思議ではないが高性能なグリスが付属しているのは嬉しい。

他にはThank youカードとサポートページに行くためのQRコードが描かれたカードが付属している。日本語の説明書は付属していないため少々大変ではあるがサポートページにて取り付け方法を確認する必要がある。
外観レビュー
さて、それでは実際にLiquid Freezer II 360を取り出し、製品を見ていく。

一見普通の3連ファンの360mm簡易水冷クーラーに見えるが、よく見ると普通のクーラーとは全く違うことがわかるだろう。

搭載されているファンは120mm四方の25mm厚ファンだ。P12 PWMというモデルで回転数は500~1800rpmである。

ラジエターはごく一般的にみる標準的なフィンとなっている。素材は放熱性に優れるアルミニウム製だ。密度はかなり高く静圧性の高いファンが必要だろう。

ラジエターの側面にはARCTICのロゴが入っている。ラジエターの厚みは38mmと非常に厚く、熱交換性能はかなり高そうである。一般的な簡易水冷クーラーのラジエター厚が約30mmであることからLiquid Freezer IIのラジエターの厚さがよくわかることだろう。

冷却水が通るチューブはかなり固いメッシュタイプとなっている。長さは450mmで大抵のケースであれば十分の長さだろう。ファン用の4pinケーブルもこのチューブの中を通っておりケーブルの取り回しを考えなくて済むのもこのLiquied Freezer IIの特徴の一つだ。

搭載されている3つのファンは全てデイジーチェーンでつながれておりポンプ、VRMファン、3つの冷却ファンは1本の4pinファン端子から給電される。

水冷ヘッドはこのLiquid Freezer IIの最大の特徴であるVRMファンが目立つ。ファンサイズは40mmなので風量には期待できないが冷却効率はどれほどなのだろうか。水冷ヘッドやファンにはRGB LEDは搭載されていない。全く光らない数少ない簡易水冷クーラーだ。

受熱ベースプレートは銅製。傷がつかないようにシールが貼られているので使用する前にはがす必要がある。ベースプレートの仕上げは鏡面仕上げではないが非常になめらかなものとなっている。

水冷ヘッドに内蔵されているポンプはマザーボードのPWM制御によってコントロールされている。温度による可変流量タイプを採用しているのでCPU温度に余裕がある場合はポンプ回転数を落とし、ポンプノイズの低減を実現している。40mmのVRM冷却ファンは1000~3000rpmとそれなりに高回転である。

水冷ヘッドを横から見るとVRMファンからVRMに対して風が当たるように隙間が空いているのがわかる。
取り付け・温度検証
今回はメインストリームのCPUで一番CPU温度が高いと思われるIntel Core i9 11900Kを使用してLiquied Freezer II 360の性能を測定していく。マザーボードの冷却に関してはMSIのMAG Z590 TORPEDOを使用して大型VRMヒートシンクがどれくらい風を受けて電源回路を冷やすことができるか確認する。
検証環境
取り付け

今回はIntel CPUを搭載するマザーボードに取り付けるのでマザーボード背面にバックプレートを取り付ける必要がある。

バックプレートを取り付ける前に付属しているワッシャーシールを貼ることでマザーボードに傷がつくことを防止できる。

付属のワッシャーシールを張り付けた後、バックプレートを取り付ける。バックプレートはCPUソケットをマザーボードに固定するためのねじを迂回するように作られているので上下は決まっている。

バックプレートを押さえながら穴にスタンドオフを4か所に取り付ける。その後CPUグリスを塗り、マザーボード側の準備は完了だ。

Liquid Freezer II本体に金具を付け、サムナットで固定すればマザーボードに取り付け完了だ。
温度検証
CPU温度

OCCT 7.2.3:OCCTテストを30分間連続動作させた。アイドル時の温度は30~35℃と低い。負荷が100%になると一気に70℃まで上昇し、73℃前後で推移、最大温度は75℃を記録した。今回のIntel Core i9 11900Kはそこそこの大きさの空冷クーラーでは冷やすことが非常に難しいCPUとなっているが、一般的に言われる最大サイズの360mmに加え、38mmという超極厚のラジエターの冷却能力は目を見張るものがある。
VRM温度

さて、このLiquid Freezer II最大の特徴とも言って良いVRMファンの性能だが、OCCTテストを30分間行った際の温度は最大55℃となった。Core i9 11900Kを「14フェーズの60A Dr.MOSを搭載したMSI Z590 TORPEDOでこの温度!」と言ってもわかりづらいので比較対象として別のCPUクーラーを用意した。

検証環境は同条件でCPUクーラーのみ他社製のものに変えた結果がこちらだ。VRM温度は最大58.5℃まで上昇し、実に3.5℃の冷却効果が見られた。また、グラフを見比べてもらえばわかると思うがVRMの温度上昇の仕方もLiquid Freezer IIであれば非常に緩やかになっているのがわかるだろう。ゲームなどCPUに長時間負荷がかからない状況ではこの温度上昇の緩やかさは大きなアドバンテージになることだろう。ただし最大温度に関しては思ったよりも…といった結果なので長時間CPU負荷があるエンコード時は他の簡易水冷クーラーと大きく変わることはないだろう。
総評
Liquid Freezer II 360は360mmラジエターを搭載した簡易水冷クーラーの中でもかなり優秀な部類に入るのではないだろうか。38mm厚のラジエターは他の360mm簡易水冷クーラーに対して大きなアドバンテージとなる。VRMファンに関しては確かに冷えるのだが、空冷クーラーには及ばずという結果だ。先にも言ったが、長時間エンコード時のVRM冷却に関しては他の簡易水冷クーラーとあまり変わらないのでPCケース内のエアフローもきちんと確保する必要がある。値段に関しては約17000円と360mmラジエター搭載の簡易水冷クーラーの中では比較的安い部類に入るので手を出しやすいのもgoodポイントだ。最上位CPUを使用しているPCゲーマーはこのLiquid Freezer IIを選ぶと良いだろう。360mmサイズのラジエターは入らない!という人は240mm/280mmサイズのLiquid Freezer II 240やLiquid Freezer II 280もあるのでそちらも考えてみると良いだろう。