オーストリアの名門CPUクーラーメーカーのNoctuaが2019年に出したデュアル120mmファンを搭載した大型空冷クーラー 「NH-U12A」は自作PC好きの中で「120mmファン搭載CPUクーラーの中では一番冷える」とも言われている。またメーカーの謳い文句としては140mmファン搭載のさらに大型のCPUクーラーに匹敵する冷却性能を発揮するとのことだが、果たして本当に120mmファンで十分にCPUを冷却できるのだろうか。今回は現在のIntel、AMDのハイエンドCPUを使用してこのNH-U12Aがどれほどの冷却性能を持っているか検証レビューする。
スペック
サイズ | 125(W) x 158(H) x 112(D) mm |
搭載ファン | NF-A12x25 PWM |
ファンサイズ | 120 x 120 x 25mm |
ファン回転数 | 400~2000rpm ±10% |
ファンノイズ・風量 | 22.6dBA |
ファン風量・静圧 | 80 CFM ±5%・2.34mmH2O ±5% |
フィン数 | 50枚 |
ヒートパイプ | φ6mm x 7 |
対応ソケット | Intel LGA775/1150/1151/1155/1156/1200/2011(v3)2066 AMD AM2/AM3/AM4/FM1/FM2 |
重量 | 1220g |
保証 | 2年間,6年間 |
開封
NoctuaのCPUクーラーのパッケージは白地に茶色がベース。このNH-U12Aも他のクーラーとパッケージの見た目は同じである。今回筆者が購入したものは株式会社サイズが代理店のもので保証年数は2年である。Noctua本国では保証年数が6年なので3分の1の保証期間になってしまっていることは非常に残念だ。
横には製品のアピールポイントが記されている。このNH-U12Aは140mmファン搭載モデルのCPUクーラーと同等の冷却性能を120mmファンサイズのCPUクーラーで実現していることがウリである。その他メモリに干渉しないことや静音性に関わることなど様々なポイントが記されている。
反対面にはファン、ヒートシンク、内容物、製品サイズ等仕様が簡単に記載されている。
付属品はパッケージ上部に小箱として入れられている。マウンティングキット類やグリス、ケーブル類がここに収められている。
本体は付属品が入っている小箱の下に段ボールで厳重に梱包されて入っている。
付属品紹介
付属品は説明書が3枚(LGA115x用、AMD用、LGA20xx用)、Intelのリテンションキット、AMDのリテンションキット、スペーサー・ねじ、ローノイズケーブル、PWM分岐ケーブル、CPUグリス、金属製のステッカー、L字型のプラスドライバーがついている。
外観レビュー
それでは実際に本体を取り出し、外観を見ていく。
NH-U12Aに搭載しているファンはNF-A12x25 PWMというファンでNoctuaファンの中で一番人気があるものだ。NH-U12AではNF-A12x25 PWMを2基搭載し、ヒートシンクを挟む形で固定する。
ヒートシンクの左右はフィンの隙間を開けないように密閉してある。これによりNH-U12Aのフィンの間の風が整流され、風量に対しての内部流速が多く確保することができる。
搭載しているNF-A12x25 PWMは120mmの一般的なサイズのファンに9枚のインペラを入れた高密度なファンである。フレームとインペラの隙間は0.5mmと非常に高精度なもので乱流を抑え、風量を確保する効果がある。
ヒートシンク天面にはNoctuaのロゴが刻印されている。
ベースプレートのサイズは厚さ15mm、48.5mm四方でかなりの大きさだ。素材は銅製で酸化を防止するためにニッケルメッキが施されている。LGA115x、1200やAM4ソケットのものだけでなく、LGA20xx系のCPUでも十分にCPUのヒートスプレッダに接地することができる。
ヒートパイプとフィンは一般的な圧入ではなく、はんだ付けを行っている。
ベースプレートから出ているヒートパイプは6mm径のものが7本とかなり多めだ。ベースプレートの1辺が48.5mmなので6mm径のパイプを7本となると42mmの幅を占有する。左右のゆとりは3mmほどしかないので実際にベースプレート付近を見るとこの高密度さが伝わってくるだろう。
温度検証
それでは今回の検証機にNoctua NH-U12Aを取り付ける。今回の検証構成は以下の通りだ。AMD Ryzen 9 5950Xでは連続した高負荷状態、Core i9 10900Kでは実際のゲームプレイ時の負荷でCPU温度を測定してく。
検証環境 その1
OCCT7.2.3:OCCTテストでCPU温度推移を見る
Ryzen 9 5950XをOCCT 7.2.3:OCCTテストを使用して30分間負荷をかけ続けた。アイドル状態では45℃前後を推移している。負荷をかけ続けるとCPU温度はすぐに60℃に達し、その後最高65℃まで温度が上昇した。動作クロックについてはおおよそ4.5GHzで安定し、十分な冷却性能が確保できていることがわかる。
検証環境 その2
実際にApex LegendsをプレイしてCPU温度推移を見る
Core i9 10900Kを使用してApex Legendsをプレイし続けた。最高温度は97℃に達し、さすがに140mmファン搭載に匹敵するとはいえ素の状態のFractal Design Define 7 CompactにNoctua NH-U12Aを搭載してCore i9 10900Kを冷やすのは少々難しいという結果が出た。ただしサーマルスロットリングなどによる性能低下は起こっていないので温度を気にしないのであれば使用し続けることは可能だ。
総評
Noctua NH-U12Aはおそらくトップレベルの120mm空冷クーラーと言える。ほとんどのCPUはこのNH-U12Aで冷やしきることができるだろう。AMD Ryzen 9 5950Xも65℃安定で十分な冷却ができているのはさすがNoctuaの最強120mm空冷ファンといえるだろう。一方でIntel Core i9 10900Kで実際にゲームをプレイするとCPU温度は97℃にまで達し、少々心配になる温度にまで上がってしまった。Core i9 10900KやCore i9 11900Kを使用する際には140mm空冷クーラーや大型の簡易水冷クーラーを使用した方が良いだろう。それでも120mmファン搭載の空冷クーラーの中ではトップクラスに冷え、静音性も高いので良いクーラーには間違いない。ただし価格もそれなり(1.3万円ほど)で空冷クーラーの中ではトップクラスに高いので少々手が出しにくいのが難点だ。もう少しリーズナブルであれば一番お勧めのクーラーと言えるのだが、Noctuaのネームバリューや製造コストを考えると仕方ないのかもしれない。