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 MSIのコストパフォーマンスに優れる武器シリーズことMAGシリーズ。Intel 11世代Coreシリーズ向けのマザーボードもラインナップが充実し、比較的手の出しやすいモデルも多く存在する。今回はMSI MAG Z590マザーボードシリーズに新たに登場した「TORPEDO」をレビューする。

スペック

対応CPUIntel Core i 10xxx~11xxx
搭載チップセットZ590
フォームファクタATX
対応メモリ4 x DIMM, Max. 128GB, DDR4
5333MHz~3000MHz(OC)
2933MHz~2133MHz
Un-buffered Memory
マルチGPU2-Way CrossFire X
(NVIDIA SLI/NVLink SLIの対応はなし)
拡張スロットPCIe 4.0 x 16 x 1(Intel 10Gen CPUではPCIe3.0動作)
PCIe 4.0 x 8 x 1(x16形状,Intel 10Gen CPUではPCIe3.0動作)
from Z590 Chipset
PCIe 3.0 x 1 x 2
ストレージSATA3 (6Gbps) x 6、M.2 (PCIe4.0 x 4) x 1、M.2 (PCIe3.0 x 4/SATA 6Gb/s) x 2
有線LANIntel I225-V 2.5G LAN
Intel I219-V 1G LAN
搭載オーディオRealtek ALC4080 Codec
背面インターフェース1 x DisplayPort
1 x HDMI
1 x Optical S/PDIF out
5 x Audio jack(s)
2 x USB 2.0
4 x USB 3.2 Gen 1 (up to 5Gbps) ports
1 x USB 3.2 Gen 2 (up to 10Gbps) ports (Type-A)
1 x USB 3.2 Gen 2 x 2 (up to 20Gbps) ports (Type-C)
Intel I225-V 2.5G LAN
Intel I219-V 1G LAN
1 x USB BIOS FlashBack Button

開封

 MSI MAGシリーズは武器シリーズとも言われそのイメージは製品パッケージにも表れている。パッケージの背景はすべてミリタリーチックな武器のボディをイメージされたようなデザインとなっており、今回のMAG Z590 TORPEDOは魚雷をイメージしたマザーボードでパッケージにも魚雷のイラストが描かれている。

 背面はMSIおなじみのマザーボードの写真とともに製品のアピールポイントが記載されている。

 Wi-Fiは搭載していないので製品パッケージを開けるとWi-Fiアンテナは付属しておらず、マザーボード本体が現れる。

付属品をチェック

 付属品はSATAケーブル、各種説明書、M.2固定ねじ、ドライバUSB、ステッカー類である。今までのマザーボードには各種ドライバ用にDVDが付属していたがMSIのIntel 500番台チップセット搭載モデルからはドライバが1本のUSBメモリに収められている。

 MAGシリーズのマザーボードに付属しているステッカーは軍隊をイメージしたものがついている。

I/Oパネルをチェック

 リアのI/Oパネルは上からHDMI2.0、DisplayPort1.4、USB3.2 Gen1 x 4、USB2.0 x 2、Intel I219-V 1G LAN、USB3.2Gen2x2(Type-C)、USB3.2Gen2、Intel I225-V 2.5G LAN、オーディオ光端子が1基、オーディオジャック群が5基となっている。I/Oパネルはマザーボードと一体型になっているのでケース取り付け位置に苦戦することはないだろう。また今回のMAG Z590 TORPEDOは無線に対応していない代わりにデュアルLANを採用している。一方はゲーマーやクリエイター向けに高速なデータ転送を提供する2.5G LAN、もう一方は定番中の定番のギガビットイーサネットを採用しているため用途に合った最適なLANポートを選ぶことができる。またMSIのZ590マザーボードはほとんどにFlash BIOS Buttonを搭載しているのでBIOSアップデートが非常に簡単なのも魅力的だ。

実際にコンポーネントを確認

 それでは実際にMAG Z590 TORPEDOを取り出し、細部を細かく見ていく。

 全体を通してこのMAG Z590 TORPEDOで一番目を惹くのはこの青く塗装されたヒートシンクだ。MAG Z590 TORPEDOは海軍をイメージしてデザインされたモデルであるため、配色はパシフィックブルーが採用されている。
PCBは2オンス銅箔を使用した6層基板が採用されている。

 I/Oカバーはヒートシンクと一体型になっており非常に大きなヒートシンクが採用されていることとなっている。また、MPG Z590 GAMING CARBONやMPG Z590 GAMING FORCEのI/Oパネルに描かれていたドラゴンはいない。

 CPUの補助電源は8pinと4pinの構成となっている。MPGシリーズは8pin x 2構成となっていたが、思いっきりOCをするわけでないのであれば8pin + 4pinで十分電力を賄える。

 電源回路は14+2+1フェーズの60A Dr.MOSを搭載している。採用されているMOSFETはON SemiconductorのNCP252160である。これはMPG Z590 GAMING CARBON WIFIと比べると1ランク下のものだが、筆者個人的にはこれくらいの電源回路でも十分にCore i9 11900Kを動かせるので必要以上の電源回路を実装するよりはこれくらいの電源回路であった方がうれしい。

 PWMコントローラーはRenesasのISL69269を採用している。これは以前紹介したMPG Z590 GAMING CARBON WIFIと同じだ。

 MSIのマザーボードはDDR4 Boostと呼ばれるメモリ回路を独立させるシステムを採用している。これにより性能、安定性を向上させることができる。メモリスロットもA2、B2スロットは青いものを採用しておりTORPEDOのイメージを確立させている。メモリの動作はOCモードで最大5333MHzまで対応している。

 メモリスロットの右上にはRGB LEDの端子とARGB LEDの端子が用意されている。これは簡易水冷クーラーのヘッドにRGBLEDが搭載されている際にケーブルの取り回しが容易になる。

 CPUファン用の端子はメモリスロット左にあるもの1つのみである。そのためデュアルファン搭載のCPUクーラーを使用する場合は2つ目のCPUファンをケースファン用の端子に刺す必要がある。この辺りは上位グレードと比べると少々残念ポイントだろうか。

 MAG Z590 TORPEDOにはEZ Debug LEDが搭載されている。これによってPCが起動しない場合、簡単に原因を探すことができる。上位機種にはエラーコードが表示できるDebug Code LEDが搭載されているが大抵はこのEZ Debug LEDがあれば困ることはないだろう。

 ATX電源コネクタの下にはUSB 3.2 Gen 2規格のUSB Type-Cポートも用意されている。近のケースにはUSB Type-Cポートが搭載されているものも多いのでマザーボードにきちんとType-Cポートが用意されているのは非常にありがたい。

 Gen4対応のM.2スロットはPCIeスロットの上に用意されている。これは11世代Core i5 以上のCPUを搭載しないと動作しないので注意が必要である。また対応しているM.2 SSDはNVMeのみでSATA M.2は2段目以降のM.2スロットに刺す必要がある。

 SATAポートは合計6ポート用意されている。ただしうち2ポートはマザーボードの一番下に用意されている。

 MSIのZ590マザーボードの最下部にはPCIe補助電源コネクタが搭載されているものが多い。このPCIe補助電源コネクタを使用するとPCIeレーンにより多くの電力が供給され、GPUの安定性が向上する。PCIe補助電源コネクタの上にはマザーボード上のLEDをON/OFF切り替えできるスイッチが搭載されている。

 マザーボード左下には3pin RGB LED端子、4pin RGB LED端子が用意されている

 オーディオチップにはRealtekの最新モデル ALC4080が採用されている。新世代のチップなのでまだ情報が十分にないが信号帯域を広げ、ノイズの少ない音をオンボードオーディオで実現することが可能となっている。

ヒートシンクをチェック

 それではMAG Z590 TORPEDOに搭載されているヒートシンクを一つずつ見ていく。

 CPUソケット左側のVRMヒートシンクはI/Oシールドと一体型になっており体積、表面積ともに非常に大きい。

 デザインは小さめのVRMヒートシンクに対してI/Oシールド側に引き伸ばした形状となっている。I/Oシールド側の造形は内部で2段になっており表面積の大きさを確保している。

 使用されているサーマルパッドは7W/mKと非常に高性能でVRMの熱を効率よくヒートシンクに移すことができる。

 ヒートシンクの重量はサーマルパッドの重量込みで283.53gとかなりの重量がある。

 CPUソケット上側のヒートシンクは少し小さめだが、多段構造となっており表面積は十分だ。

 CPUソケット上側のヒートシンクの重量はサーマルパッド込みで131.48gとなっている。CPUソケット左側のヒートシンクと併せるとVRMヒートシンクの総重量は415.01gと上位機種のMPG Z590 GAMING CARBON WIFIよりも大きい。

 上段のM.2ヒートシンクの重量は34gで他マザーボードとあまり変わらない重量だ。

 中段M.2ヒートシンクの重量は26gと少々控えめな重量となっている。ただし中段のM.2スロットは大型のグラフィックスカードの排熱が当たってしまうため、ヒートシンクをむやみに大きくしてしまうとグラフィックスカードの排熱を吸ってしまうことにもなるのでこれくらいの大きさのものが一番冷えるのかもしれない。

 下段のM.2スロットにはヒートシンクは搭載されていない。もし下段に高速なM.2 SSDを搭載する場合は別途M.2ヒートシンクを購入すると良いだろう。

動作検証

 それでは実際にMAG Z590 TORPEDOを動作させ、温度や安定性の検証を行う。今回の検証構成は以下の通りだ。

OSWindows 10 Pro 1909
CPUIntel Core i9 11900K
CPUクーラーProArtist DESSERTS3
マザーボードMSI MAG Z590 TORPEDO
メモリCentury Micro CK16GX2-D4U3200
グラフィックスカードMSI GeForce RTX 3090 GAMING X TRIO
SSDSamsung 970 Evo Plus 500GB
電源CoolerMaster V1200 Platinum
ケースSharkoon PureSteel Black

VRM温度検証

 OCCT7.2.3を用いてVRMの温度遷移を測定する。室温20℃環境でOCCT7.2.3:OCCTテストを1時間連続動作させ、結果をグラフ化したものがこちらだ。

 アイドル時のVRM温度は35℃でOCCTを動作させた後20分までは放物線状に温度が上昇し、58.0℃まで上がった。その後57.5℃~58.5℃を遷移し続けた。大型のヒートシンクということもあり、よりフェーズ数が多く高性能なMOS-FETを搭載しているマザーボードに遜色ない冷却性能を実現している。

Adaptive Boost Technology(ABT)有効時のVRM温度検証

 第11世代Intel Core i9 10900K/10900KFにはマルチコアのターボブーストを引き上げるAdaptive Boost Technologyという機能が搭載されている。これによりオールコア5.1GHzで動作させることができ、CPUの性能をより引き上げることができる。ただしCPUの発熱量、電力消費量は増加するのでマザーボードの電源回路の性能も大きくかかわってくる。

 Adaptive Boost Technologyを有効にしてMAG Z590 TORPEDOの温度検証を行ったところ、VRMの発熱は約2℃上がった。搭載しているCPUのブーストクロックは4.8GHzから5.1GHzへと向上し、サーマルスロットリングギリギリの温度まで上昇した。一方でマザーボードのVRM温度は58℃~59.5℃を推移し、最大61℃とまだまだ余力があるようにも感じた。

M.2ヒートシンク温度検証

 上段のM.2 SSDヒートシンクの温度性能を検証した。使用したSSDはSamsungの970 Evo Plusだ。このSSDはGen3 SSDながらも発熱量はGen4 SSDに匹敵し、ヒートシンクの性能を測るにはもってこいだ。

 アイドル時の温度は39℃で素の状態の970 Evo Plusの50℃より11℃下回った結果となっている。その後ストレージ用のベンチマークを走らせ続け、温度が上がりきったところを測定したところ、54℃となった。

BurnIn Testで安定性をチェック

 PassMark社が出しているPCの安定性を測定するBurnIn Testを用いてストレステストを行った。15分かけてテストを行ったものの結果はエラーは一つも出ずに完走した。

総評

 MAG Z590 TORPEDOは優れた電源回路を持ちながらも3万円を切る価格で販売されている非常にコストパフォーマンスに優れるマザーボードだ。必要な個所への投資は惜しまず、3段目のM.2スロットヒートシンクなどあまり使われることがないものは搭載しないなどコストのかけ方はZ590チップセット搭載マザーボードの中ではかなり優れているのではないだろうか。一般ユーザーが性能を追い求めて高性能CPUを搭載した場合も力負けすることなく性能を発揮することができるだろう。代理店などの謳い文句では「高い安定性を誇るエントリークラスのマザーボード」と書かれていることもあるが、実際にベンチマークを走らせたり使用した結果、Z590マザーボードの中では価格帯はエントリークラスだが実際に使用してみるとミドルクラスではないだろうかと感じた。

 また、RGB LEDがチップセットヒートシンクの下のみに搭載されていることから、LEDでキラキラ光るPCは作りにくいものの光らない質実剛健なPCを作る際や、あえて光らない魅せるPCを作る際には選択肢としてかなり上にあるのではないだろうか。特に青いマザーボードは他にほとんどないので他に見ないデザインのPCを作る場合はかなり重宝するだろう。

 注意点としては近年増えてきたWi-Fi/Bluetooth搭載のマザーボードではないので、無線を使用したい場合には追加で拡張カードを刺す必要がある。またほとんどのZ590マザーボードに言えることだが、一番上のM.2スロットはIntel 第11世代Coreプロセッサーを搭載した場合のみ使用できるということである。

 最新Intel CPUを使って高性能なゲーミングPCを組みたい場合は「MAG Z590 TORPEDOを選べば大丈夫!」といえる優秀な一枚だ。