製品提供:株式会社Scythe
パソコンのCPUクーラーといえばScytheの虎徹 Mark IIを思い浮かべる人は非常に多いのではないだろうか。コストパフォーマンスに優れ、下手な簡易水冷のCPUクーラーよりもよっぽど冷える。筆者にはそういった印象が強い。CPUクーラー界ではおそらく一番と言っていいほど有名なこのScytheの虎徹 Mark IIはきちんと冷えるのか、今回は同形状で有名メーカーが製造している廉価帯CPUクーラーとの比較を行っていく。
スペック
サイズ | 130(W) x 154(H) x 83(D) mm (付属ファン含む) 120 x 120 x 厚さ27 mm (搭載ファン) |
ファン回転数 | 300 (±200) rpm ~ 1200 rpm (±10 %) |
ノイズ・風量 | 4.0 ~ 24.9 dBA / 16.6 ~ 51.17 CFM |
静圧 | 0.75 ~ 10.3 Pa / 0.0762 ~ 1.05 mmH2O |
MTTF | 120,000 時間 |
対応ソケット | Intelソケット 775 / 1150 / 1151 / 1155 / 1156 / 1366 / 2011 / 2011 v3 AMDソケット AM2+ / AM3+ / FM1 / FM2+ / AM4 |
ヒートパイプ | 6mm径 x 4本(ニッケルメッキ処理) |
重量 | 645g |
開封
パッケージ前面は白ベースで製品イメージが載せられている。このパッケージを見たことがある人も多いのではないだろうか。
パッケージ左側面には虎徹 Mark IIの詳細なスペック、右側面には旧虎徹からの変更点が記載されている。
内容物
開封すると小さな箱の中にはたくさんの部品が隙間なく詰め込まれていた。
まずはヒートシンク本体。これがないと話にならないが見た目はごく一般的なサイドフロー型CPUクーラーのヒートシンクだ。虎徹 Mark IIが世間一般で最も一般的なサイドフロー型CPUクーラーなのではないだろうかと考えているので一般的とあえて表現するのは些か不適切な感じさえする。
付属の120mmファンだ。これはKAZE FLEX 120 PWMというもので単品でも販売されている。必要に応じて虎徹 Mark IIなどのScythe製CPUクーラーに追加で取り付け、デュアルファン化することも可能だ。
その他マウントキット類は小さな白い箱に詰められていた。
この箱の中には説明書、マウンティングキット、グリス、ファンクリップなどが入っていた。
リテンションは2種類付属しており、Intel、AMDのソケット両方に対応している。Intel用リテンションはLGA2011(v3含む)、LGA2066にも対応している。AMDのTR4、TRX40には対応していない。
その他クーラー固定用のバックパネル、各種ネジ、グリス、ファンクリップ、説明書が箱に入れられていた。
ヒートシンク
ヒートシンクのフィンの数は46枚、構造はシングルタワーとなっている。またメモリと干渉しないようにオフセットした形状となっている。
幅58mmのナロータイプフィン構造と2枚の形状の異なるフィンの組み合わせによりファンの風を効率良く吸い込むフィン設計となっている。これにより効率の良い冷却が期待できる。
ニッケルメッキが施された銅製ヒートパイプは径6mmのものが合計4本でアルミ製のフィンに熱が伝えられている。 CPUに接触する面は実測で38m㎡だ。
設置面には保護フィルムが貼られているので使用する前にははがす必要がある。
CPUファン
CPUファンはKAZE FLEXというファンが付属している。サイズ製のファンには四方に防振ゴムが取り付けられており低振動、低ノイズ化が図られている。
ファンの羽の数は他ファンと比べても多めで冷却効果が期待される。
比較検証
今回この虎徹 Mark IIと比較検証を行うために同形状で廉価帯のCPUクーラーを用意した。安さで非常に人気のあるThermaltake製のCPUクーラーContac Silent 12との比較を行う。このクーラーも12cmファンを搭載したサイドフロー型のCPUクーラーで形状はとてもよく似ている。ヒートパイプも同じ4本で冷却効果に大きな差はないのではないだろうか、と筆者は考えた。冷却効果に差がなければ虎徹 Mark IIを買わず、ThermaltakeのContac Silent 12を買うという選択肢をとっても良いのではないだろうか。実際に目視、ベンチマークによって比較をした。
正面から見ると虎徹 Mark IIのほうが明らかにサイズが大きい。Contac Silent 12はヒートシンク下部がえぐられているのに対し、虎徹 Mark IIは下までフィンの大きさは一定だ。また、Contac Silent 12のフィンはまっすぐなのに対し、虎徹 Mark IIのフィンは複雑な形状をしている。
側面から見るとヒートシンクの大きさの違いがよくわかる。Contac Silent 12は虎徹 Mark IIと比べると若干のチープさは否めない。両方ともヒートパイプはニッケルメッキ処理され、太さも直径6mmとなっている。
ヒートシンクを上部から見ると大きな差はないように見える。Contac Silent 12は上部にヒートパイプが突き出しているのに対し、虎徹Mk.IIはヒートパイプが切り落とされたような処理がされている。この処理の違いはコスト面から来ているのだろうか。
虎徹 Mark IIはCPUとの接地面がヒートパイプよりも下にあるのに対し、Contac Silent 12はダイレクトタッチとなっている。マザーボードへの固定方法もContac Silent 12はAMDマザーボードにあるリテンションに取り付けるような形だが、虎徹 Mark IIはねじ止めでしっかりと固定することができる。
CPUファンも大きく差がある。Contac Silent 12はフィンが7枚であるのに対して虎徹 Mark IIは11枚のフィンがある。この時点で送ることのできる風の量は差が出るだろう。防振ゴムがある、ファンの4pinケーブルの処理など細かいところも虎徹 Mark IIに付属しているファンはこだわっている。
負荷テストの結果
今回の比較テストで使用したPCのスペックはこちらだ。
OS | Windows10Pro |
CPU | Intel Core i7 8700 |
M/B | MSI H370 Gaming Plus |
RAM | XPG Spectrix D41 2666MHz 8x4GB |
GPU | ELSA GEFORCE GTX1070 S.A.C |
SSD | Samsung 970 Evo Plus 500GB |
HDD | W.D. Brack 1TB |
PSU | Apexgaming AG-750M 80+ GOLD |
CASE | DEEPCOOL EARLKASE RGB V2 |
CPUグリスは親和産業のSMZ-01Rを使用した。 Prime95を30分間動作させ、CPU温度を測定した。 また実際に使用する環境に近づけるため、今回はPCケースありなど一般的なPC環境を使用して比較を行う。
水色のデータがContac Silent 12、オレンジ色のデータが虎徹 Mark IIだ。Contac Silent 12は70℃付近を推移しているが、虎徹 Mark IIは60℃前半を推移していた。Contac Silent 12は最大温度が74℃に達していた。虎徹 Mark IIは最大温度が69℃までに収まり、70℃を超えることはなかった。
総評
Scythe 虎徹 Mark IIは低価格帯のCPUクーラーとして非常に優秀だ。今回比較検証したThermaltakeのContac Silent 12はさらに安く購入することができるが、1000円ほどの価格差しかないためCore i5以上のCPUを搭載するのであれば虎徹 Mark IIを搭載した方が良いのではないだろうか。また、その価格からも「迷ったらとりあえずこのCPUクーラー」と言った立ち位置は不動のものであると考えられる。コストパフォーマンスに優れた非常に良い製品だ。