提供:エムエスアイコンピュータージャパン

 11月初めにIntel第12世代CPUが発売されたとともに各社Z690マザーボードを発売した。今世代から新たなメモリ規格「DDR5」に対応し、さらなるメモリの性能向上が見込まれることとなったが、入手性の困難さや動作のシビアさなどからDDR4のメモリに対応したモデルも大変人気だ。今回はMSIから発売されているDDR4メモリ対応モデルのMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4をレビューする。Intelプラットフォーム、AMDプラットフォームともに大人気のTOMAHAWKマザーボードはZ690ではどのようなマザーボードとなったのか、細かく見ていく。

スペック

対応CPUソケットLGA1700
搭載チップセットZ690
フォームファクタATX
対応メモリ4 x DIMM, Max. 128GB, DDR4
5200MHz~3200MHz(OC)
3200MHz~1866MHz
non-ECC Unbuffered Memory
マルチGPU2-Way CrossFire X
(NVIDIA SLI/NVLink SLIの対応はなし)
拡張スロットPCIe 5.0 x 16 x 1
PCIe 3.0 x 4 x 1(x16形状)
PCIe 3.0 x 1 x 1(x16形状)
PCIe 3.0 x 1 x 1
ストレージSATA3 (6Gbps) x 8、M.2 (PCIe4.0 x 4) x 3、 M.2 (PCIe3.0 x 4) x 1
有線LANIntel I225V 2.5Gbps LAN
無線LANIntel Wi-Fi 6E AX210
搭載オーディオRealtek ALC4080
背面インターフェースUSB 3.2 Gen 1 x 2
USB2.0 x 2
Flash BIOS Button
HDMI 2.1 x 1
DisplayPort 1.4 x 1
2.5G LAN x 1
USB 3.2 Gen 2 (Type-A x 3、Type-C x 1)
5 x Audio jack(s)
Optical S/PDIF OUT

開封・パッケージ

 MAGシリーズは武器をモチーフにしたモデルであり、今回のTOMAHAWKはミサイルがモデルとなっている。今までも製品パッケージはミリタリーチックなものだったが、今回は平面的なデザインに代わり、金属のヘアライン加工が施されたデザインに変わっている。

 今回のマザーボードはWi-Fi搭載モデルであるため、Wi-Fiアンテナも付属している。

付属品紹介

付属品は各種マニュアル類、ステッカー、SATAケーブル(2本)、ドライバUSB、M.2固定用のねじ、Wi-Fiアンテナである。MSIはドライバをUSBメモリに入れているのでドライバCDと違いDVDドライブを別途用意しなくて良いのもgoodポイントだ。

マザーボード外見をチェック

 今回のMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4は今までのTOMAHAWKシリーズと違い灰色から黒ベースの配色となっている。またヒートシンクにはリベットのようなくぼみもあり造詣が充実したように見える。ヒートシンクはヘアライン加工されているので高級感も増している。
 またMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4が前モデルと大きく変わった点として、RGB LEDが非搭載となったことだ。RGB LEDがない方が良い、あってもOFFにしているという人も多いためRGB LEDなしのマザーボードが出たのは良いことだろう。特に黒いヒートシンクと相まって今までのUNIFYシリーズのようにも見える。

I/Oパネルをチェック

 背面I/Oパネルはマザーボード一体型となっている。I/Oパネルから出ているEMSの足がUSBポートなどに引っかかる心配がないことは一体型の大きなメリットだろう。写真左からDisplayPort1.4ポート、HDMI2.1ポート、Flash BIOS Button、 USB 3.2 Gen 1 x 2、USB2.0 x 2、USB3.2 Gen2(Type-A x 3、Type-C x 1)、2.5GLANポート、オーディオジャック類が用意されている。今回紹介するMAG Z690 TOMAHAWK WIFIにはWi-Fiアンテナ用のコネクタが用意されているが、兄弟モデルのMAG Z690 TORPEDOはWi-Fiに対応していないので注意が必要だ。

細かい実装部品等をチェック

 それではマザーボード各部を見てMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4がどのようなマザーボードかを見ていく。

 CPUソケットはIntel第12世代から採用されたLGA1700を採用、従来のLGA1200ソケットよりも縦長な形状をしている。

 Z690マザーボードはメモリスロットはDDR5モデルが多い中、MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4は従来通りDDR4ソケットが採用されている。最大容量は128GB、最大速度は5200MHzに対応している。

 電源回路は16+1+1フェーズDRPSと非常に充実している。mosfetは70A品のDr.MOSを使用しているので低発熱、高効率でCPUに電力を供給することができる。

 CPUの補助電源は8pin x 2構成なのでCore i9 12900Kのオーバークロックでも安定して電力供給することが可能だろう。

 MSIのマザーボードにはEZ Debug LEDと呼ばれるLEDが搭載されているものが多い。このLEDによって起動時にエラーが起こった場合、どの箇所でエラーが起こっているか視覚的に確認できるので初心者でも安心して自作PCを作ることができる。

 グラフィックスカードを挿す一番上のPCIeスロットはPCIe5.0に対応している。PCIe5.0はノイズによる信号の劣化を防ぐため、SMTプロセス(表面実装)を採用している。ちなみにMSIのDDR5対応マザーボードはメモリスロットもすべてSMTプロセスを採用している。

 今世代のMSIマザーボードから、M.2の固定は今までのネジではなく、EZ M.2 CLIPと呼ばれるプラスチック製のつまみを捻るだけでSSDを取り付けられるものに進化している。

M.2SSDを挿入した後、つまみを半回転させただけで固定できる。

 搭載しているチップセットはIntel最新世代のZ690チップセット。システムバスがDMI3.0 x 8からDMI4.0 x 8へと高速化され、PCIe4.0にも対応した。

 SATAポートは合計で6基搭載。RAIDは0/1/5/10に対応している。

ヒートシンクの重さをチェック

 MSIのCPUソケット左側VRMヒートシンクはI/Oシールドまで拡張されており、表面積、質量ともに大きい。オールアルミ製で重量は232.36gとエントリークラスのゲーミングマザーボードとは思えない重量である。

 CPUソケット上側のVRMヒートシンクも155.82gと今までのMAGシリーズと比べても重ためとなっている。今回の12世代CPUの電力消費の多さが予想される。

Gen4 SSDに対応しているM.2スロットのヒートシンクは重ための約40gである。従来のマザーボードと比べても2割ほど重たくなっている。

中段のM.2ヒートシンクは42.45gでこちらも重ためだ。ただしこの位置のM.2スロットはヒートシンクがグラフィックスカードの熱を吸ってしまうので極力使わない方が無難だろう。

一番下のM.2スロットはM.2 SSDを2つ分を連結しているので62.27gと重たい。ちなみに03と書かれている方がGen3 SSDのスロットで、04と書かれているポートがGen4 SSD対応のポートである。

動作検証

 それでは実際にMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4を動作させ、温度や安定性の検証を行う。今回の検証構成は以下の通りだ。

OSWindows 11 Pro
CPUIntel Core i7 12700K
CPUクーラーNoctua NH-D15
マザーボードMSI MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4
メモリCentury Micro CK16GX2-D4U3200
グラフィックスカードMSI GeForce RTX 3060 GAMING X TRIO(日本未発売のため同等品)
SSDSeagate FireCuda 520 1TB
電源Cooler Master V1200 Platinum
ケースFractal Design Define 7 Compact

VRM温度検証

OCCT9.1.4:linpack

 VRMの温度検証として定番のOCCT linpackテストを行った。実行時間は30分間でケースに組み込んでの温度測定となる。アイドル時温度は30℃で負荷をかけ始めると40℃まで温度が急上昇したのち、最大43.5℃まで上昇した。マザーボードの電源回路に大きな負荷がかかるlinpackテストでもVRMの発熱の小ささ、ヒートシンクの放熱性能の高さがうかがえる。

3DMark TimeSpy Extreme

 ゲーム性能を擬似的に測定できる3DMark TimeSpyの高解像度仕様である3DMark TimeSpy Extremeを使用してゲームプレイ時を想定した電源回路の温度を測定する。こちらは先程のCPUにかかる負荷テストよりもCPU自体にかかる負荷は小さいが、マザーボード全体にかかる負荷はより大きくなっている。VRMの温度は変化が大きくアイドル時は33℃であるのに対し終盤は42.5℃まで温度が上昇した。CPU、グラフィックスカードに大きな負荷がかかるゲーム系のベンチマークでもCPUに力負けすることなく完走できている。

M.2ヒートシンク温度検証

 MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4の一番上のヒートシンクの性能を検証する。使用したSSDはSeagateのFireCuda 520でヒートシンクを使用しない場合はフルロード時80℃を超える爆熱SSDである。一番上のM.2スロットにセットし、ヒートシンクをつけた状態で温度を測定する。アイドル時のSSDの温度は30℃で大容量のファイルを書き込みフルロード状態にした際の最高温度は50℃を記録した。ヒートシンクなしの状態では80℃を超えてサーマルスロットリングを起こすSSDでもMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4のM.2ヒートシンクは30℃以上のSSD冷却を実現している。

総評

 今回のIntel 12世代CPUは性能が上がった分、マザーボードにかかる負荷も大きくなった。その分電源回路の強化やヒートシンクの増大など様々なところで努力がみられるマザーボードが多いが、このMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4も順当に進化したマザーボードだと感じた。搭載されている機能も上位モデルと大きく変わることなくまた、MSI MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4では名前にDDR4とついている通りDDR4メモリに対応した数少ないZ690マザーボードであり、DDR5メモリが手に入りづらい今では最新CPUを使用する際に大きな存在となるだろう。