第9世代Intel Coreシリーズからメインストリーム帯のCPUとして登場したIntel Core i9シリーズは非常に性能が高く最上位CPUとして確固たる地位を築いてきた。ただCore i9以外の性能が悪いといったことは一切なく、今回の第11世代Coreシリーズでは同じ8コアCPUとしてCore i7も忘れてはならない存在だ。コア数が同じで動作クロックもよく似たCore i7 11700Kはどれほど最上位CPUであるCore i9に迫れるのか。様々なベンチマークを使用してCore i9 11900Kと比較しCore i7 11700Kのバランスを測っていく。

スペック

Core i9 11900KCore i7 11700K
コードネームRocket Lake-S
アーキテクチャCypress Cove
対応ソケットLGA1200
プロセスルール14nm
コア数/スレッド数8/16
ベース/ブーストクロック3.60/5.00GHz
キャッシュ16MB
定格メモリクロック3200MHz
内蔵GPUUHD 750
PCIeバージョン4.0
TDP125W
付属クーラーなし
価格¥47,964(記事執筆時)

パッケージ・製品外見

 今回のIntel Coreシリーズから製品パッケージがフラットなフラットな配色に変更された。Intelロゴも今までのものとは変わり平面的なデザインとなった。

 内容物はCPU本体と説明書のみ、今回紹介するIntel Core i7 11700Kは倍率ロックフリーのためCPUクーラーは付属していない。

 基本的には10世代CPUと同じ形状だが、ヒートスプレッダの左右下側に小さなコンデンサが追加されている。
裏面のランド数は1200個で10世代と同じLGA1200ソケットが使用される。背面のコンデンサ配置も10世代CPUとは異なる。

動作検証

 それではIntel Core i7 11700Kの性能を測る。今回は比較用にIntel Core i9 11900Kを使用し、今世代の8コアCPUの性能差がどれくらいあるのかを調べる。

検証環境

OSWindows 10 Pro 1909
CPUIntel Core i7 11700K
CPUクーラーProArtist DESSERTS3
マザーボードGIGABYTE Z590I VISION D
メモリCentury Micro CK16GX2-D4U3200
グラフィックスカードELSA GeForce RTX 3090 ERAZOR X
SSDSamsung 970 Evo Plus 500GB
電源CoolerMaster V1200 Platinum
ケースSharkoon PureSteel Black

CPUベンチマーク

CINEBENCH R15

 さて、CPU単体の性能を測定することに長けたCINEBENCH R15ではCore i7 11700Kではシングルコア性能248cb、マルチコア性能2327cbと好スコアを記録した。Core i9 11900Kと比較すると性能差はシングルコア性能で約4%、マルチコア性能では約2%とほとんど性能差がない結果となった。

CINEBENCH R20

 続いてより負荷が高いCINEBENCH R20を使用してベンチマーク結果をチェックしていく。CINEBENCH R20でのCore i7 11700Kのシングルコア性能は611pts、マルチコア性能は5749cbとなった。こちらもCore i9 11900Kと比較するとシングルコア性能は約3%の差、マルチコア性能は約4%の差となった。

CINEBENCH R23

 続いてメニーコアに最適化されたCINEBENCH R23を使用して性能を測定する。Core i7 11700Kのシングルコア性能は1604pts、マルチコア性能は14903ptsという結果になった。こちらはCore i9 11900Kとシングルコア性能で約5%、マルチコア性能で約4%の性能差が出ていた。

CPU-Z

 続いてCPUのモニタリングソフトウェアであるCPU-Zに付属しているベンチマークソフトを利用して性能を測定する。結果はシングルコア性能699.9、マルチコア性能は6357.2となった。こちらは特にシングルコア性能の差がCore i9 11900Kと少なく約1%の差となっていた。マルチコア性能は約4%の差で他のベンチマークソフトを使用した際とあまり変わりはない。

Core i7 11700Kを搭載したPCの総合性能をチェック

PCMark10

 続いて様々な用途で利用することを想定したベンチマークソフト、PCMark10を使用してPCの総合性能を測定する。こちらはCPU単体の性能だけでなくオフィスやゲーム、様々なレンダリングを想定したオールインワンのベンチマークソフトウェアである。結果はPCMark10が8052、PCMark10 Extendedが11234という結果になった。このスコアもCore i9 11900Kと比較するとPCMark10が約4%、PCMark10 Extendedが約2%の性能差となった。

ゲーム性能をチェック

3DMark Time Spy

 次にDirectX12を使用したゲーム向けベンチマークソフトである3DMark Time Spyを動作させスコアを測定する。今回はCPUスコアと総合スコアに着目し、Core i7 11700KとCore i9 11900Kとの性能差を見る。結果はCPUスコアで約4%の差、総合スコアで約6%の差が生まれた。今回の構成ではCore i7/i9に対しグラフィックスカードにGeForce RTX3090を取り付けているのでCPUスコアの性能差がCINEBENCH等のマルチコア性能の差とほぼ同等だったのに対し、総合スコアで6%の差が生まれているのはグラフィックスカードの性能を最大限引き出すことができるのはCore i9 11900Kであるという認識ができるだろう。

3DMark Fire Strike

 続いてDirectX11を使用したゲーム向けベンチマークである3DMark Fire Strikeの結果を見る。総合スコアではCore i9 11900KよりもCore i7 11700Kの方が良い結果が出ている。これは数回テストしても筆者の持っている環境ではCore i7 11700KがCore i9 11900Kを上回っていた。断定はできないがDirectX 11を使用する場合はCore i7 11700Kを使用した方がバランスが良く性能を発揮しやすいのかもしれない。

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク

 続いて大人気MMO RPGゲームのファイナルファンタジーXIVのベンチマークソフトであるファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマークを動作させた。結果はどちらも非常に快適でCPUによって大きく快適度が変わることはない。細かなスコアを見ると約3%の性能差が生まれているのでCPU性能がそのままスコアに反映されたといった印象だ。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK

 続いてこちらもMMO RPGゲームのファイナルファンタジー XVのベンチマークソフト、 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARKを利用してゲームの快適さを見ていく。解像度は1080p、1440p、2160pの3パターンで行ったが1080pでは性能が頭打ちでどちらも差が出ることはなかった。1440pや2160pではCore i9 11900Kの方がやや優位で約3~6%の性能差が出た。

Apex Legends

 続いては大人気FPSゲーム Apex Legendsを利用して実際のゲームプレイ時の平均フレームレートを比較する。これは各マップ5試合ずつを平均化し、外れ値を省いた状態での結果である。Core i7 11700KとCore i9 11900Kではフレームレートに大きな差は見られず、平均フレームレート差で1fpsしか変わらなかった。1fpsの差であればプレイ時間の長さによって簡単に覆る数字なのでそこまでCPUを酷使しないApex Legendsは上位CPUであれば性能差がほとんど出ないのだろう。

エンコード性能をチェック

Blender benchmark

 最後に3DモデルをレンダリングするBlenderのベンチマークソフトを利用してレンダリングスピードを比較する。こちらはCPUの性能差が大きく出て最大で時間にして約10%の差が出た。超高負荷の3Dモデルのレンダリングや動画のエンコードなどは大きな差を生む可能性があるためお金に余裕があればCore i9 11900Kを採用すると良いのかもしれない。

総評

 Core i7 11700Kは同じ8コアCPUであるIntel Core i9 11900Kに対し約3万円という価格差ながら性能差はほとんどないという結果になった。ブーストクロックはCore i9 11900Kの方が0.3GHz高いが実際に使用する性能としては実感することはできないだろう。特にゲームではCore i9 11900Kほど高価なCPUを使用しなくてもトップレベルの性能が出せることが見てとれるためゲーマーは無理をしてCore i9 11900Kを買わなくても良いだろう。今回は比較データを出してはいないがライバルとなるAMDの8コアCPU Ryzen 7 5800Xも似た性能で5000円以上安いとなると8コアCPUの中でコストパフォーマンスが一番優れているのはIntel Core i7 11700Kだと言えるだろう。内臓GPUが搭載されているのでグラフィックスカードを搭載せずとも起動できるということもCore i7 11700Kの強みとも言える。グラフィックスカードの価格が落ち着いてきているとは言えまだまだ高いので内臓GPUが搭載されているCore i7 11700Kは現状でかなり優秀なCPUだと言えるだろう。