今回は簡易水冷の漏れ防止技術Anti-leakテクノロジーを持つ、Deepcool GAMER STORMブランドの簡易水冷CPUクーラー「CASTLE 240EX」をレビューする。高性能なCPUを搭載するにあたって、手軽に高い冷却を提供できる簡易水冷クーラーだが、水漏れ等のリスクもあり避けるユーザーも少なくない。筆者も過去に簡易水冷クーラーの不良(水漏れ)を経験している為、大型空冷を利用する機会も増えてきた。しかし、その不安材料を減らしてくれるクーラーがこの「CASTLE 240EX」だ。
「Anti-leak Tech Inside」と表記のある簡易水冷クーラーにはラジエーター内部の圧力を圧力解放袋で調整して水漏れを防ぐ技術が搭載されている。 冷却材の温度上昇や システム内で発生したガスにより内圧が大気圧を超えると、袋が絞られてシステムの内容積が増え増加した圧力が解放されるという仕組みである。
スペック
ラジエーター寸法 | 282×120×27 mm |
ラジエーター材料 | Aluminum |
重量 | 1400 g |
Tube length | 380 mm |
Pump 寸法s | 86×75×71 mm |
ポンプ速度 | 2550 RPM±10% |
Pump ノイズ | 17.8 dB(A) |
ポンプコネクタ | 3-pin |
ポンプ定格電圧 | 12 VDC |
Pump 定格電流 | 0.2 A |
ポンプ消費電力 | 2.4 W |
ファン寸法 | 120×120×25 mm |
ファン回転速度 | 500~1800 RPM±10% |
Fan Airflow | 64.4 CFM |
ファン空気圧 | 2.33 mmAq |
Fan ノイズ | ≤32.1 dB(A) |
ファンコネクタ | 4-pin PWM |
ベアリングタイプ | Hydro Bearing |
ファン定格電圧 | 12 VDC |
ファン定格電流 | 0.15 A |
ファン消費電力 | 1.8 W |
LED タイプ | Addressable RGB LED |
LED Connector | 3-pin(+5V-D-G) |
LED 定格電圧 | 5 VDC |
LED Power Consumption | 2.25 W(PUMP) |
外観・パッケージ
簡易水冷クーラーのパッケージのためサイズは大きめ。カラーリングは同じGAMER STORMシリーズである同社の「ASSASSIN III」同様灰色と黄緑色の組み合わせである。パッケージからも分かるように、ASUS、GIGABYTE、MSI、ASRockの各マザーボードメーカーのRGB制御に対応している。アドレサブルRGBで3pin 5V仕様の為、間違えて4pin 12V対応のマザーボードに接続しないように注意が必要だ。対応していない場合は付属のコントローラーからも多少は制御できる。
製品・付属品
中を開けるとCPUクーラー本体はビニール袋に収められ、付属品は箱の中に入っている。中はパルプモールドで作られており衝撃に強く、サイズもピッタリだ
大きめの袋にまとめられていた中身を分けると、画像の通りになる。intel・AMDの両方のソケットに対応しておりリテンションも2種類付属。ラジエーター用のネジは4本×2セットでファンの数分付属している。また他のメーカーにはないカスタマイズ用のロゴチップも付属している。
使用されているファンは二重層ファンブレードが特徴的な「TF120S」で、撹拌機の歯が配置されたフレーム構造や8つのゴムパッドにより、ノイズと振動を抑えたファンだ。ファンを追加で購入する際は「TF120S」を購入すると1基につきラジエーターのファンも4本付属するためネジを別途で探す必要はない。
全体的に見るとシンプルなデザインになっている。ポンプは背が高めだがロゴがカスタマイズ可能な点や、LEDイルミネーションを考えると気になるほどではない。ポンプ表面は鏡面で映り込みやすいが見た目はかなり美しく高級感を感じる。ポンプのコネクタは3pinのコネクタをマザーボードに接続するタイプだ。
ラジエーターの圧力解放袋が側面から確認できる。圧力解放袋があるためか縦の長さが少しあるが厚さは一般的な27mmだ。 フィンのピッチは狭いが静圧の高いファンを生かせるためEXシリーズに使用される「TF120S」と相性がいいだろう。
RGB対応のファンは付属していないため見た目は地味になる。システム全体を光らせたい場合は「Castle 240RGB V2」 のが適しているが、自社設計のポンプを採用したEXのほうが性能重視なモデルでRGB V2のポンプ(Asetekの特許を採用したポンプ)と仕様が異なるため予算を 度外視するのであればEXにRGBファンを組み合わせるのも悪くない選択肢だろう。
銅製ベース部分は鏡面に近い磨き上げとなっており、薄っすら反射するほど表面が滑らかになっている。
ポンプの上部は反時計回りに回すと取り外すことができる。カスタマイズ用のロゴチップが付属しているため、PCにオリジナリティを出したい場合に活用するといいだろう。
負荷テスト
今回は以下の構成で負荷テストを行った。
CPU | AMD Ryzen 9 3900X |
M/B | MSI MEG X570 ACE |
CPUクーラー | Deepcool CASTLE 240EX |
メモリ | Patriot Viper Steel DDR4 PC4-33000 PVS416G413C9K x4 (32GB) |
ビデオカード | GALAKURO GAMING GG-RTX2080Ti-E11GB/TP |
システム用ストレージ | ADATA XPG SX8200 Pro ASX8200PNP-512GT-C |
OS | Windows 10 Pro |
電源ユニット | Antec HCP-1000 Platinum |
BIOS Ver | E7C35AMS.160 |
ポンプは少し大きく感じたが今回使用した「MSI MEG X570 ACE」ではメモリとの干渉は起きなかった。また、ポンプの向きを反対に向けて設置してもロゴは自由に向きを変えられるため、ラジエーターの設置場所によって向きを変えても見た目に出る影響は少ないだろう。
CPUグリスは新和産業のSMZ-01Rを使用。Prime95 を30分間動作させCPU温度をHWiNFOからデータを計測した。動作環境は気温24.2℃の環境下で行っている。
多くは70℃付近を推移してることが多く、 70℃を下回る時間も多かった。静圧の高いファンが最初から付属している点もこの結果に反映されているだろう。更なる静音性や冷却性能を求める場合には「Noctua NF-A12x25」や「MASTERFAN SF120M」のような高価格帯を選ぶことになるだろう。
総評
プラスポイント
- 初めから高性能なファンが付属している
- 画期的な水漏れ防止技術を搭載
- 鏡面仕上げで美しいポンプヘッド
- ロゴがカスタマイズ可能で個性を出しやすい
- 銅製ベース部分は鏡面に近い磨き上げ
- 各社RGB制御に対応(アドレサブルRGB/3pin 5V)
マイナスポイント
- ファンを光らせたい場合は別途購入する必要がある
- RGB V2シリーズとポンプの仕様が違うがCastle EXシリーズにRGBファンモデルはない
このCPUクーラーには Anti-leakテクノロジーは他社にはないとてもユニークな技術をもち、それだけでも珍しい商品ではあるが、高性能かつシンプルなデザインの「TF120 S」を組み合わせた「Castle 240EX」は水冷が不安な初心者はもちろんのこと、万人におすすめできる正統派なクーラーだ。カスタマイズ可能なロゴはオリジナリティを出すだけでなく、ポンプの向きを考えなくてもロゴの向きを調整して設置できるという点もあり、他のメーカーでは起こりうるロゴが下に向くような配置にはならない。その為、ケースの汎用性も高く様々なデザインのケースに溶け込むだろう。
簡易水冷クーラーは240mmの市場だけでもかなりの種類が存在し、そのラインナップ多さに迷うユーザーも存在するが、このクーラーが持つな個性は他にはない魅力が数多く存在するだろう。DeepcoolのGAMER STORMブランドはユニークな製品が数多く存在するため、組み合わせると統一感のあるPCを作ることもできるだろう。