
CRYORIGの小型CPUクーラーであるC7は47mmと非常に高さが抑えられているクーラーとしてはよく冷える部類のクーラーとして知られている。C7には通常モデルのほか、ヒートシンクがすべて銅で作られたもの、さらに銅のヒートシンクをグラフェンでコーティングしたものが存在する。今回レビューするCRYORIG C7 Gは銅製のヒートシンクにグラフェンをコーティングしたC7シリーズで一番冷えるモデルとなっている。
グラフェンとは?
グラフェンとは炭素原子が6角形状に結び付いたシートのことを言う。厚さは1nmと非常に薄く軽くてしなやかなことが特徴である。電気抵抗も非常に小さく金属の中では一番導電性が高い銀よりも電気抵抗値は小さい。また伝熱性は銅の10倍であるため放熱性にも優れる。
スペック
サイズ | 97(W) x47 (H) x 97(D) mm |
対応TDP | 125W |
ファンサイズ | 92 x 92 x 15mm |
ファン回転数 | 600~2500rpm ±10% |
ファンノイズ・風量 | 30dBA |
ファン風量・静圧 | 40.5 CFM・2.8mmH2O |
フィン数 | 57枚 |
ヒートパイプ | φ6mm x 4 |
対応ソケット | Intel LGA1150/1151/1155/1156/1200 AMD AM2/AM3/AM4/FM1/FM2 |
重量 | 673.5g |
保証 | 2年間,6年間 |
パッケージ

C7 V2は白と黒のパッケージ、C7 Cuは段ボール地のパッケージだったが、このC7 Gは黒メインのパッケージとなっている。オール銅製のヒートシンクを採用していることからパッケージの大きさからは想像できない重さとなっている。

パッケージ正面向かって右側面は対応しているCPUソケット、TDPやサイズ重量が記載されている。Intel系ソケットではLGA11xx系のみの記載だが、CPUクーラーに互換性のあるLGA1200にも対応する。対応TDPはノーマルモデルのC7 V2は105W、オール銅製ヒートシンクを採用しているC7 Cuは115W、そして今回レビューするオール銅製ヒートシンクにグラフェンコーティングを施したC7 Gは125Wとグレードが上がっていくごとに10Wずつ熱許容量が増えている。

反対面には代理店であるリンクスインターナショナルの製品保証シールが貼り付けられている。製品保証年数は6年とCPUクーラーにしては長めの期間だ。
付属品をチェック

C7 Gの付属品はシンプルでマザーボードを保護するためのワッシャーやシール、バックプレートとクーラー本体を固定するナット、Web説明書にアクセスするためのカード、ファンクリップなどがある。

付属しているグリスはCP7でクーラー本体は小さいもののグリスは大容量用意されている。

バックプレートとクーラー本体を固定するナット用の6角ドライバーも他社に比べてしっかりしたものが付属している
本体外観をチェック

CPUクーラーは組み立てられた状態で箱に入れられている。マザーボードに取り付ける際にファンを取り外さなくてはならないクーラーも多いがCRYORIGのC7シリーズは特に分解する必要なく装着できる。

バックプレートは樹脂製でAMD、Intel兼用である。

ファンサイズは92mm、15mm厚でインペラ枚数は11枚だ。マザーボードとは4pin PWM端子で接続する。

ヒートシンクはアルミニウムの銀色ではなくグラフェンコーティングによる黒。手触りは少しざらざらとしている。ちなみにヒートシンクの素材は銅なのでグラフェンコーティングの下は銅色である。

ヒートパイプにもグラフェンのコーティングが施されている。ヒートパイプの径は6mmでヒートパイプ本数は4本である。

ベースプレートは銅の地が見えている。リテンションはIntel、AMDで共通だが、ねじ穴を変更して対応する必要がある。また、マザーボードに直接刺さるねじは六角だが、付属の工具では胴部とねじ部が干渉してしまうのでメガネレンチ等が必要となってくる。ねじ位置を変更しないで取り付けることはほぼ不可能なので工具は事前に用意する必要があるだろう。
動作検証
検証環境
OS | Windows 10 Pro 1909 |
CPU | Intel Core i7 11700K |
CPUクーラー | CRYORIG C7 G |
マザーボード | GIGABYTE Z590I VISION D |
メモリ | Century Micro CB16GX2-D4U3200 |
SSD | CSSD-M2B1TPG3VNF |
電源 | Seasonic FOCUS-PX-650 |
ケース | CoolerMaster MasterCase H100 |
今回はMini-ITXマザーボードを使用し、小型PCを組む際に使用されることを想定しマザーボードにはGIGABYTEのZ590I VISION D、ケースにはCoolerMasterのMasterCase H100を採用した。またケースの都合上今回はグラフィックスカードなしの構成である。
OCCT7.2.3:OCCTテスト (TurboBoostオン)

Core i7 11700Kのターボブーストを切らずにOCCTテストを行った。結果はCPUパッケージ温度が96℃に到達するとサーマルスロットリングが起こり、動作クロックが下がってしまう。TDP125Wまで対応のCRYORIG C7 Gだが、ターボブーストテクノロジーはCore i7 11700KのTDPである125Wを超えてしまう(CPUのTDPはベースクロック時のもの)ので残念ながらC7 Gでは冷却しきることは難しい。
OCCT7.2.3:OCCTテスト (TurboBoostオフ)

次にCPUのターボブーストをオフにしてOCCTテストを行った。結果は最高温度75℃でCore i7 11700Kのベースクロックである3.6GHzを維持し続けることができていた。TDPをC7 Gの公称値通り125Wに制限するのであればCore i7 11700Kでも十分に動作させることが可能だ。
総評
CRYORIG C7 Gはコンパクトなヒートシンク、ファンを搭載しながらいかにこの小ささで冷却力を追求するかということを考えられたCPUクーラーだ。銅製のヒートシンクを採用するだけでなく放熱効率も考えてグラフェンコーティングを施したこのC7 Gは事実銅製ヒートシンクモデルのC7 CuのTDP115Wと比べて10Wも許容TDPが上がっている。小型クーラーでロマンを求める人には最高の製品の一つだろう。
ただし取り付け時にねじ位置を変える際にメガネレンチが必要になるなどユーザービリティに欠ける製品であると感じる場面もあった。また今回GIGABYTE Z590I VISION Dに取り付けるにあたってマザーボードのバックプレートとCPUクーラーのバックプレートが干渉してしまったので一部マザーボードでは気を付ける必要がある。
CPUの冷却能力に関してはやはり第10世代、11世代のK付きCPUを完全冷却することは難しい。BIOSからの設定をせずに使用するのであればTDP 65W表記のCPUまでにした方が良いだろう。少し冷却能力を期待しすぎていた部分もあったがCore i5 11400やCore i7 11700、Ryzen 5 5600Xなど高TDPではないCPUを使用してコンパクトなPCを作るのであれば力を発揮してくれるだろう。