品質、安定性で定評のあるELSAから発売された、GeForce RTX3070Tiでは貴重な2スロット且つ3連のクーラーを搭載のELSA GeForce RTX 3070 Ti ERAZORをレビューする。TDPが3070の220Wから290Wに増え大型なクーラーを搭載した グラフィックスカードが目立つ中、2スロット占有のELSA GeForce RTX 3070 Ti ERAZORは異彩を放っている。
スペック
CUDAコアプロセッサ | 6144コア |
---|---|
ベースクロック | 1575MHz |
ブーストクロック | 1785MHz |
メモリ規格 | GDDR6X |
メモリ容量 | 8GB |
メモリ帯域幅 | 608GB/sec |
メモリバス | 256bit |
補助電源要求数 | 8pin x 2 |
出力端子 | DisplayPort × 3 (DisplayPort 1.4a 準拠) HDMI × 1 (HDMI 2.1準拠) |
最大消費電力 | 290W(TDP) |
電源容量 | 最小 : 定格出力750W以上の出力が可能な電源ユニット 推奨 : 定格出力850W以上の出力が可能な電源ユニット |
占有スロット数 | 2スロット |
外形寸法 | 300mm(長さ) x 115mm(高さ )x 42mm(厚さ) |
保証年数 | 2年間 |
パッケージ・開封
パッケージはWARZONEとコラボしたデザインである。「WARZONE」は「Call of Duty:Modern Warfare」の世界観を舞台にして最大150人のプレイヤーが争う新たな大規模戦闘ゲームで基本プレイ無料でプレイすることが可能だ。裏面には製品のPRポイントが多く書き連ねられている。
底面にはELSA GeForce RTX 3070Ti ERAZORの仕様、上面にはELSAロゴの下にINNO3Dのロゴが入っている。これはELSAのグラフィックスカードはINNO3D製のものを使用しているためである。
内箱は黒一色で非常に地味だ。中には注意事項が書かれた取り扱い説明書、保証書が同梱されている。
一つだけ残念だったのは梱包状態だ。両側の発砲ウレタンを外すと本体が取り出せるのだが、取り出す際に中からガタガタ音がした。原因は写真のような隙間だらけの梱包でこれだけは納得出来なかった。どうにか改善するといいがELSAの問題というよりもInno 3Dの問題だろう。ELSAでは全て国内で全数検査が行われているため、管理体制は万全であるため似たようなモデルの場合はInno 3DよりもELSAブランドを選べば間違いないだろう。
外観レビュー
まずはELSA GeForce RTX 3070 Ti ERAZORの外観から見ていく。
ファンは3連ファンモデルとなっているが、GeForce RTX 3070Tiの中では珍しい2スロット占有のクーラーだ。 RTX 3070Tiを搭載したグラフィクスカードはコアやGDDR6Xの発熱量が増えたせいか大型なクーラーを搭載しているものばかりだ。ELSAはメモリー・クーリング・システム(M.C.S.)や新設計3連ファン「Powerful Triple Fan」を組み合わせた強力な冷却機構により、限られた空間を最大限利用する設計で2スロットの厚さに抑えている。GDDR6XはGDDR6と比べて発熱が多く冷却不足を心配するユーザーは多いと思うが、M.C.S.はメモリーチップの排熱も考慮したサーマルプレートを装備することにより、メモリーチップの温度を約10℃下げることに成功したという。また、ファン中央には元々シールが貼りつけられておらず剝がれる心配はない。
以前レビューした、3スロット占有の「iGame GeForce RTX 3090 Advanced OC」と比べて見てもその薄さに驚くだろう。3090の巨大なヒートシンクを持つGPUと比べたら重量も薄さも控えめではあるが、2スロットでも心配であればグラフィックスカードステーを取り付けるのもありだ。
補助電源は8pin x 2とGeForce RTX3070Tiの中では標準的な仕様だ。
グラフィックスカード後方にはThrough Flow Cooling Systemと呼ばれるファンからの風が下から上に直接抜ける構造を取っており、ユニークな外観と機能性を両立したデザインになっている。LEDは一切なくとてもシックな仕上がりだ。また、ビデオカード後部は金属製のプレートが取り付けられており剛性を確保している。プレートを取り付ける事によってケース内でヒートシンクや基板が他のパーツとぶつかってしまうことを防いでいる。2スロットながらこういった細かい工夫も見て取れる。
ベンチマークで性能検証
3DMARK Time Spy
DirectX12を使用したゲーム向けベンチマークソフトである3DMark Time Spyを動作させスコアを測定する。総合スコアは通常版が14374、Extreme版では7553という結果になった。3連ファンとは言えども3070Tiで2スロットは流石にスコアに影響が出てしまうと心配したが杞憂だったようだ。元々ブーストの値は控えめだが温度上昇によるクロックの低下なども見られなかったため適切に冷却できている。
3DMARK Fire Strike
続いてDirectX11系のゲームの参考になる3DMark FireStrikeを使用してベンチマーク結果を見る。3DMark FireStrikeはノーマル、Extreme、Ultraの3種類のベンチマークを動作させ結果を読み解く。同CPU環境の3070と比べて差は少ないが性能は確かに上だ。クロックもCPUの計算力を見るPhysicsを除きブーストクロックの1785MHzよりも高い値で安定している。
VRMARK
VRゲーム性能の目安となるVRMarkでは、「Orange Room」ではほぼ頭打ちとなる高めのスコアが出た。DX12で動作するVRベンチマーク「Cyan Room」ではスコアとしては2080Tiとほぼ変わらないスコアとなっており、VRAMが8GBと少ない中、前世代のハイエンドモデルと張り合うことができるスコアだ。 将来のハードウェアを見据えた「Blue Room」ではVRAMの少なさがボトルネックになってしまうが、ターゲットフレームレートは109.00fpsを記録しているため惜しい結果となった。
PCMark10
様々な用途で利用することを想定したベンチマークソフト、PCMark10を使用してPCの総合性能を測定する。こちらはCPU単体の性能だけでなくオフィスやゲーム、様々なレンダリングを想定したオールインワンのベンチマークソフトウェアである。結果はPCMark10が7831pt、PCMark10 Extendedが10971ptと非常に良い結果が出た。
ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク/ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク/ ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク を使用して実際のゲーム動作時の負荷を測定する。設定は各解像度すべて最高品質で行っている。結果はフルHD、WQHD、4Kともにほぼ「非常に快適」という判定となった。暁月のフィナーレでは4K解像度が誤差で「とても快適」という結果になった。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK
さらに動作要件が厳しいファイナルファンタジーXVのベンチマークではフルHDでは「非常に快適」判定、WQHD解像度では「とても快適」、4K解像度では「快適」という結果が得られた。
総評
プラスポイント
- ジャスト2スロット(+バックプレート)サイズの3連ファン搭載クーラー
- 国内での全数検査が行われる程の厳しい管理体制
- ファンの風が下から上方向へ直接抜けるエアフローを邪魔しないデザイン
マイナスポイント
- 梱包の問題点
- オーバークロックは控えめで伸びは少ない
ベンチマークを踏まえると2080~2080Tiからの乗り換えには少し物足りなさを感じるものの、実売価格約11万円で前世代のハイエンドに迫る性能を見せるなどいうほど悪くないと感じた。また消費電力を気にする場合でも、3070のOCモデルの中にはパワーリミットが高めに設定されているモデルも数多く存在するため、3060Ti程のワットパフォーマンスを望まないのであれば定格クロックに近い3070Tiを選択肢に入れるのはアリだ。また、消費電力を抜きにしてもミドルスペック以上のグラフィックスボードだと大型になりがちな傾向にあるクーラーだが、今回レビューしたELSA GeForce RTX 3070 Ti ERAZORは性能・冷却性・安定性に定評があるだけでなく、きっちり2スロットサイズの厚さに収めている。スペックを見ても分かるようにこのモデルは決してOCの値は高くないため、同GPU搭載のもので少しでも上の性能が欲しい場合はこのグラフィクスカードは適さないだろう。しかし、冷却性能・静音設計・使い易さを兼ね備えたこのELSA GeForce RTX 3070 Ti ERAZOR は品質重視のユーザーにとって良い選択肢ではないだろうか。
コメントを残す