製品提供:株式会社サイズ

 2020年12月に株式会社サイズは新たに中国のProArtistというブランドのCPUクーラーを取り扱い始めた。ProArtistはハイエンド志向ながらも低価格のCPUクーラーを開発しており非常にコストパフォーマンスに優れるメーカーだ。今回はProArtistのGratify3という特にコストパフォーマンスに優れるサイドフローCPUクーラーを同社製12cmファンのMAGISTERIAL12、CPUグリスのW15を使用しながらレビューする。税抜き2980円と非常に安価ではあるがどのような性能を発揮するのか非常に楽しみだ。

スペック

サイズ120(W) x 153(H) x 48(D) mm
ファンサイズ120 x 120 x 25mm
ファン回転数800~1550rpm ±10%
ノイズ・風量27dBA
風量・静圧80 CFM ±5%・2.15mmH2O ±5%
フィン数51枚
ヒートパイプφ6mmx4
対応ソケットIntel LGA1151/1150/1155/1156/1200
AMD AM4
重量456g
保証2年間

パッケージ

 非常に個性的な配色なパッケージである。右側に描かれているCPUクーラーがGratify3 である。

 側面にはGratify3のスペックが詳細に記載されている。対応CPUソケットはLGA1151X/AM4と書かれているがCPUクーラー取り付け穴に互換性があるLGA1200にも対応している。一方でAM3やFM2など過去のAMDプラットフォームやIntel LGA775には対応していないので古いCPUを使用している際は注意が必要である。

 反対側面にはGratify3の特徴が書かれている。

 翻訳すると51枚のフィン、4本のニッケルメッキ加工されたヒートパイプ、ベースプレートの銅溶接について書かれている。

 上面には代理店の株式会社サイズのステッカーが貼ってある。保証は2年間でProArtist本来の保証年数の6年に比べると短くなってしまっているが空冷CPUクーラーの保証は2年ついていれば十分だろう。

内容物

 ヒートシンク本体にはファンがあらかじめ取り付けてある。

 リテンションはIntel用のバックパネルにスペーサーを挟んだ状態でねじ止めされている。リテンション自体はIntel LGA11xxとAMD AM4ソケット用は兼用である。

 グリスはW13というものが付属している。熱伝導率は4.5W/mKと決して高くはないが大容量のものが付属している。またファンの回転数を落として静音性を確保したい際にロースピードケーブルも付属している。

 AMDのAM4ソケット用のスペーサーと取り付けねじは別の小袋に入れられている。スペーサーの色はIntel用は青、AMD用は赤とイメージしやすい色なので組み付ける際も間違えにくいだろう。

 ProAritst製のCPUクーラーには白手袋が付属している。空冷CPUクーラーのヒートシンクのフィンは鋭く、筆者も何度か手を怪我しているので手を保護するために白手袋がついてくるのはユーザーに寄り添っていると感じられる。またヒートシンクに皮脂がついて色がくすんでしまうことも防止できるのでこの手袋がついていることは非常に評価が高い。

 このGratify3はシングルファンのサイドフロー空冷クーラーだがヒートシンクを挟むようにファンを増設するためのファンクリップも付属している。発熱が大きいCPUを使う際にはこのGratify3に120mmファンをもう一つ増設することで対応しても良いだろう。

ヒートシンク、ファンをチェック

 それではGratify3のヒートシンク、ファンを見ていく。

 形状はごく一般的な形状のサイドフロー空冷クーラーである。付属しているファンはMAGISTERIAL12というもので 120mm,25mm厚のPWM制御可能なものである。ファン四隅には共振防止のラバーがついており静音性に寄与している。

 トップにはProArtistとロゴが入っている。ファンクリップを止めるためのフィンの切りかけは小さめである。

 先述したとおりフィンの切りかけは小さくファンクリップが引っかかる場所が小さい。そのためファンをきちんと取り付けられたか不安になるので筆者個人としては切りかけがもう少し大きい方が使いやすいと感じた。フィン枚数は51枚で虎徹Mark IIの46枚よりも5枚多い。ただしヒートシンクの幅は48mmと虎徹Mark IIの58mmよりも10mm狭い。

 リテンションはブリッジタイプを採用しておりヒートシンクとCPUは綺麗に密着するだろう。

 Gratify3は工作精度を向上させることが難しいダイレクトタッチではなくベースプレートが採用されている。ベースプレートのサイズは約35mm四方である。写真に写っているWARNINGと書かれたフィルムはヒートシンクを取り付ける前に剥がす必要がある。ヒートパイプは4本でごく一般的な構成である。

 ベースプレートの工作精度も悪くない。超高級クーラーほどではないが価格を考えるとこれでも十分すぎるほどだ。

取り付け

 それでは今回の検証機にProArtist Gratify3を取り付ける。
今回の検証構成はこちらだ。

OSWindows 10 Pro 1909
CPUAMD Ryzen 9 5950X
CPUクーラーProArtist Gratify3
マザーボードASUS ROG Strix X570-F Gaming
メモリCentury Micro CK16GX2-D4U3200
グラフィックスカードELSA GeForce RTX 3090 ERAZOR X
SSDSamsung 980 Pro 500GB
電源Cooler Master V1200 Platinum
ケースFractal Design Define 7 Compact

今回の検証では以前紹介したAMD Ryzen9 5950Xを使用し、非常に高発熱のCPUで検証する。

 マザーボードにリテンションを取り付けた。バックパネルはIntel版のようにクーラー付属ではなく、マザーボードに付属しているものをそのまま使用する。

 今回使用するCPUグリスはProArtistから発売されているW15というものだ。これはGratify3に付属していたW13の上位モデルで熱伝導率は6W/mKだ。

 このグリスよりも高性能なものは他にもたくさん存在するがこのW15にはCPUグリスを均一に塗布するためのフレームが付属している。今回はこのフレームを使用してグリスを塗布する。

 グリスのシリンジデザインはW13とあまり変わらない。

 塗布用のヘラも付属していたがこちらは柔らかく他社性のヘラを使用した方が塗りやすいと感じた。

 AM4ソケット用の塗布フレームを置く。CPUにピッタリとはまるサイズで扱いやすい。

 このフレームの上にグリスを出す。

 フレームを使用することでグリスを塗りすぎることはないがフレームに残ってしまうグリスも少なくないので少し勿体無い気はするが写真のようにある程度大量にグリスを出す必要がある。

 全体に広げると写真のようになる。ムラができないように均一にグリスを塗り広げると綺麗にCPUとヒートシンクが密着できるだろう。

 フレームを外すと穴が空いていた部分のみCPUにグリスが乗る。ここからヒートシンクからファンを外し、ヒートシンクをねじ止めする。

 CPUクーラーを取り付けた。特にメモリ周りとの干渉もなくよほど大きなヒートシンクがついたメモリでなければ刺すことができる。

温度検証

 それでは実際にベンチマークソフトによる負荷テストでCPU温度がどのように推移するかを見ていく。今回使用するストレステストはOCCT 7.2.3 CPU:OCCTで30分間の負荷推移を測定する。

 アイドル時温度は43度ほどとそれなりの結果である。高負荷時は最大74度とRyzen 9 5950Xでも十分に冷却することができていた。

 次に動作クロックと温度の推移である。何度か4.3GHzを下回ることはあったが概ね4.3GHzから4.5GHzの間を推移している。定格動作であればRyzen 9 5950Xであっても十分に冷却することが可能だ。

 次に付属しているもう一組のファンクリップを使用してGratify3をデュアルファン構成で使用する。追加するファンはGratify3に付属しているものと同じMAGISTERIAL12だ。

 PWM制御で800RPMから1550RPMまで幅広い回転数が特徴だ。

 ファンの見た目は当然ながらGratify3と変わらない。

 MAGISTERIAL12にはファンフレームの穴を傷めない手回しねじも付属している。

 付属のケーブルとして4pinファン延長ケーブル、ロースピードケーブル、2股4pinファンケーブルがある。1600円ほどのファンではあるが非常に付属品が充実している。

 ちなみにこのMAGISTERIAL12には「MAGISTERIAL12T」という排気用ファンも存在している。このファンを使用することで二重反転環境を作り出すことができる。

 左がMAGISTERIAL12、右がMAGISTERIAL12 Tである。よく見るとフィンの向きが違うことがわかる。

 MAGISTERIAL12を増設し、ヒートシンクを挟むように2枚構成にした。ファンを追加することでCPUはより冷えるのか検証する。

 同じようにOCCT 7.2.3 CPU:OCCTを30分間動作させた時の温度推移を測定した。青い線がシングルファン時で、オレンジ色の線がデュアルファン時の温度推移である。高負荷時の温度は明らかにデュアルファン構成にすると温度が下がることがわかるだろう。シングルファン時にはCPUの最高温度が74度になっていたが、デュアルファンにすることで最高温度は71度まで下がっている。Ryzen 9 5950Xを71度まで冷やせるクーラーで3000円を切るものはこのほかにはなかなかないだろう。

総評

 ProArtist Gratify3は税抜き2980円と非常に安価ながらRyzen 9 5950Xをよく冷やし切れるポテンシャルを持つクーラーだった。コスパ最強としてはProArtistの日本正規代理店であるScythe製の虎徹 Mark IIがよく挙げられるが筆者個人としては虎徹よりも安いこのGratify3の方がコストパフォーマンスは良いのではないかと今回のレビューで感じた。また153mmと全高が低いのでほぼ全てのATXマザーボード対応ケースに搭載することができるだろう。MAGISTERIAL12を1枚追加しても5000円をきる低価格であることから筆者としては文句の付けようがない。ProArtist Gratify3迷ったらこのクーラーと言えるほどのポテンシャルを持ったクオリティの高いCPUクーラーであった。