試用提供:ASUS JAPAN
ゲーミングマザーボードが流行っている中、映像制作や音楽制作、CG制作など様々なクリエイターに向けたマザーボードも各社ラインナップしており、ASUSからはクリエイター向け機材としてProArtシリーズがそれにあたる。ProArtシリーズではAMD Ryzenプロセッサー向けにProArt B550 CREATORが以前よりラインナップされていたが、B550チップセットを採用しているということもあり拡張性に乏しかったりWi-Fi/Bluetoothに対応していないなどあともう一歩といった印象を受けた。今回紹介するProArt X570-CREATOR WIFIはX570チップセットを搭載し拡張性や10G LANの搭載、メモリ周りの強化など様々な点が進化している。他社を見ても最新のクリエイター向けマザーボードであるため性能や機能に大きなアドバンテージがあるマザーボードであると予想される。
スペック
対応CPU | Ryzen2000~5000シリーズ |
搭載チップセット | X570 |
ソケット | AM4 |
フォームファクタ | ATX |
CPU補助電源構成 | 8 + 4 pin |
VRMフェーズ数 | 14+2フェーズ |
対応メモリ | 4 x DIMM, Max. 128GB, DDR4 5100MHz~3400MHz (OC) 3200MHz~2133MHz ECC and non-ECC, Un-buffered Memory |
マルチGPU | 2-Way CrossFIre X |
拡張スロット | 2 x PCIe 4.0 x16 (x16、x8/x8) 1 x PCIe 4.0 x16 (最大x4) |
ストレージ | SATA3 (6Gbps) x 6、M.2 (PCIe4.0x4/SATA3) x 3 |
LAN | AQUANTIA Marvell AQC107 (10G LAN) Intel I225-V(2.5G LAN) |
無線 | Wi-Fi 6E (802.11 a/b/g/n/ac/ax) Bluetooth v5.2 |
搭載オーディオ | Realtek S1220A |
背面インターフェース | Thunderbolt 4 USB Type-C x 2 USB 3.2 Gen 2 x 4(Type-A x 4) USB 3.2 Gen 1 x 4(Type-A x 4) DisplayPort x 1 HDMI x 1 Intel I225-V 2.5Gb Ethernet port x 1 Marvell AQtion AQC113CS 10Gb Ethernet port x 1 ASUS Wi-Fi Module x 1 Audio jacks x 5 BIOS FlashBack button x 1 |
パッケージ
パッケージはゲーミングマザーボードのような派手さはなく、黒地に金のPROARTロゴが印刷されている。パッケージに記載されている内容は一般的なマザーボードと同じだが落ち着いていて非常に高級感があふれたデザインだ。
付属品紹介
付属品はマニュアル、ドライバDVD、SATAケーブルが4本、DisplayPort to DisplayPort ケーブル、M.2ネジ、Qコネクタ、WiFiアンテナである。QコネクタはPCケースのフロントパネル用のケーブルをまとめてマザーボードに挿せる非常に便利なコネクタだ。
マザーボード外見をチェック
それではマザーボード外観をチェックする。PCB、ヒートシンクは黒ベースで所々の金色がアクセントになっている。ヒートシンクやI/Oシールドはフラットでビジネス用途でも使える落ち着いたデザインだ。
I/Oパネルをチェック
リアのI/Oパネルはマザーボードと一体型となっている。ポートは写真左側からThunderbolt4用のDP INポート、HDMIポート、USB3.0ポートが4つ、10G、2.5G LANポート、Thunderbolt4ポートが2つ、USB3.1 Gen2ポートが4つオーディオジャック類である。Thunderboltポートは40Gbps対応のThunderbolt4ポートとなっておりThunderbolt4を搭載するRyzen向けクリエイター向けマザーボードではASUSのProArt B550 CREATORとこのProArt X570 CREATOR WIFIのみである。
細かい実装部品等をチェック
それではマザーボードに搭載されている実装部品を細かく見ていく。
CPUソケットはAMDのソケットAM4を採用、Ryzen2000シリーズから5000シリーズまで対応している。
メモリスロットは4スロットのデュアルチャンネル動作、最大128GBまで搭載可能であり動作クロックはメモリOCで5100MHzまで対応している。ただし安定動作を追求するクリエイターはDDR4のネイティブ3200MHzクロックの超安定メモリ(Century Micro製等)を使用すると良いだろう。
電源回路は14+2フェーズのパワーステージを採用している。CPUにかなりの高性能を要求しRyzen 9 5950Xを搭載しても十分に安定動作させることができるだろう。またCPUの補助電源コネクタは低インピーダンスかつ耐久性に優れるProCool IIを採用している。
PWMコントローラーはマザーボード裏面に設置、自社製のDigi+VRMのASP1405Iを採用している。
MOSFETはON SemiconductorのFDMF3170を採用、最大70A対応のSmart Power Stageだ
M.2スロットは合計3つ用意されている。ただし3番目のM.2スロットはSATA5,6番ポートと排他利用である。またM.2の固定にはねじではなくツールレスで固定できるつまみが採用されている。
SATAポートは合計6つ用意されている。先述した通り3番目のM.2ポートとSATA5,6番ポートは排他利用である。
オーディオ回路ではS1220Aを採用、Realtek製の高級オーディオチップをベースにチューニングしたチップである。
ProArt X570 CREATOR WIFIはX570チップセットを搭載しながらチップセットファンは非搭載である。X570チップセットのマイクロコードを最適化したおかげでチップセットファンを廃止しても十分な冷却が行える。
ヒートシンクの重さをチェック
VRMのヒートシンクはそれぞれ独立しておりCPUソケット左側は300.11g、CPUソケット上部は165.06gとかなりの重量がある。また表面はシンプルでフラットなデザインだが側面から見ると切れ込みが入っており空気と触れる面積はかなり多く取られている。
M.2のヒートシンクはそれぞれ29.29g、49.68gである。特に下段のM.2ヒートシンクは2つのM.2 SSDを同時に冷やすので質量は大きく2枚のM.2 SSDを冷やすだけの面積、体積を確保している。
チップセットヒートシンクは203.46gとX570チップセット搭載マザーボードの中ではトップクラスに大きい。ファンレスということもありヒートシンクによる冷却にはこれくらいの質量が必要だったのだろう。
またチップセットヒートシンクの上にはProArtと書かれたプラスチック製の板がねじ止めされており本来の役割とは違うかもしれないがグラフィックスカードからの排熱をチップセットヒートシンクが吸わないようする断熱効果も期待できる。
動作検証
それでは実際にProArt X570 CREATOR WIFIを組み込み動作を確認する。
検証環境
PugetBench for DaVinci Resolve
実際のクリエイターの用途として多い動画制作時のエンコードの負荷に対するテストをPugetBench for DaVinci Resolveを利用して行った。
メモリクロック変動
動画書き出し品質に大きく関わってくるメモリクロックの変動をチェックした。メモリクロックが変動してしまうと動画書き出し時のコマ落ちによる音ズレが発生する原因のうちの一つとなってしまう。PugetBench for DaVinci Resolveを使用した高負荷の動画書き出しテストでもメモリクロックが変化することなく、一定して1600MHz(DDR4のため3200MHzの半分の値)を維持し続けていた。
VRM温度
続いてVRMの温度の変化を見る。今回搭載したCPUはAM4ソケットではハイエンドのRyzen 9 5950Xである。消費電力が非常に大きい分、VRMに流れる電力も非常に大きく発熱しやすい。ProArt X570 CREATOR WIFIではCPU用に14フェーズの電源回路を搭載しておりエンコード中のVRMは最大でも51℃で収まった。
チップセット温度
ProArt X570 CREATORはX570チップセットを搭載しながらもチップセットファンを搭載していない。マイクロコードの最適化やヒートシンクの拡大はありつつも実際のチップセット温度はどれほどなのかを検証した。結果は最大52℃とかなり落ち着いた温度となっている。
また、同じX570マザーボードでチップセットファンを搭載したクリエイター向けマザーボードとチップセット温度を比較した。左のグラフがProArt X570 CREATOR WIFI、右のグラフが比較用に用意したX570チップ搭載クリエイター向けマザーボードである。同じ負荷をかけ、終了後1分間の温度推移をみるとアイドル時の温度では約10℃、高負荷時では約20℃も温度に差があることがわかる。アイドル時の温度差はチップセットのマイクロコード最適化によるもの、高負荷時の温度差はグラフィックスカードの排熱をチップセットファンが吸わなくなったとが大きく影響しているのだろう。ProArt X570 CREATOR WIFIは後発なこともあり各部が非常に成熟しているとも言るだろう。
M.2ヒートシンク温度検証
一番使われることの多いであろう一番上のM.2スロットについているM.2ヒートシンクの冷却能力を検証する。今回検証に使用したSSDはSeagateのFireCuda 520 1TBだ。アイドル時の温度は35℃と非常に低く書き込みテストを行い最高温度を測定しても51℃と安全圏内だった。
総評
クリエイター向けマザーボードはX570チップセットが出た当初から存在していたが、AMD Ryzenプラットフォームのクリエイター向けマザーボードの中でProArt X570 CREATOR WIFIはトップクラスの性能と安定性を持つマザーボードだ。Ryzen 9 5950Xを用いて非常に高負荷な動画エンコードを行ってもまだまだ余力を見せていたりX570マザーボードが出た当初に問題視されていたチップセット温度やチップセットファンの問題も一切ない。各種インターフェースも最新のものを搭載しておりThunderbolt 4に対応していることなど拡張性も十分だ。一方でM.2とSATAポートの排他仕様こそはあるもののPCIeスロットとの排他仕様はないので拡張することでカバーできるだろう。
また重要な情報を取り扱う人向けにASUS Control Center Expressというセキュリティ管理ソフトを使用することもできたりProArt Creator Hubと呼ばれるProArtデバイスをモニタリング・コントロールすることができるソフトウェアの提供なども行われている。ハードウェアだけでなくソフトウェアもクリエイター向け提供されていることもこのマザーボードの強みだ。
製品には厳しいテストも行われており、24時間365日の信頼性テストとして45℃、湿度80%の環境で68時間の耐久テストを行ったりパーツや機器間の互換性を検証するテストも数多く行われている。商業で使用する人や安定性を第一に求めるユーザーにとっては最高のマザーボードとなるだろう。