試用提供:Sapphire Technology Japan

 2020年11月20日にリリースされたRDNA2アーキテクチャを採用したRadeon RX6800XTシリーズ。各社様々なモデルが発売されたが、長年Radeon専業メーカーとして多くの製品を輩出してきたSAPPHIREは別格と言われている。今回はSAPPHIREのフラッグシップモデルであるNitro+シリーズの中でもRGBファンを搭載し、さらなるオーバークロックを施したSpecial EditionのNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEをレビューする。

スペック

ストリームプロセッサ数4608
レイアクセラレータ数72
コアクロックゲームクロック : 2110MHz
ブーストクロック : 2360MHz
Infinity Cache128MB
ビデオメモリ規格GDDR6
ビデオメモリ容量16GB
ビデオメモリバス幅256bit
ビデオメモリクロック16Gbps
補助電源要求数8pin x 2
出力端子2 x DisplayPort 1.4
1 x HDMI 2.1 
1 x USB-C
推奨電源容量850W以上
消費電力350W
占有スロット数2.7スロット
本体サイズ310mm x 134.3mm x 55.3mm
保証年数2年

開封

 今回のRadeon RX6000番台のNitro+シリーズはオレンジベースの配色となった箱が採用されているが、このNitro+ Special Editionはブルーを基調としたデザインとなっている。

 背面には代理店保証書が添付されている。販売代理店は株式会社アスクが担当し、保証年数はグラフィックスカードとしては少し長めの2年間だ。

 箱を開けてみると2部の冊子が付属品として入っている。ほかに付属品はなく、本体が厚手の静電気防止袋に入っているのみである。

外観レビュー

 それでは実際にSAPPHIRE NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEを取り出し、外観を見ていく。

 冷却用のファンは3連ファンの「Tri-X」が採用されている。両サイドのファンの大きさは直径100mmで中央のファンのみ小さめの90mmファンとなっている。ファンの回転方向も両サイドは反時計回り、中央のみ時計回りとなっていてエアフロー効率や熱拡散効率を高める効果があるという。

 裏面は金属製のバックプレートが採用されてグラフィックスカードの強度の向上を図っている。グラフィックスカードのバックプレートにしては珍しく白いバックプレートを採用しているので今流行りのホワイトPCを作る際にこの NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEを採用しても面白いかもしれない。

 グラフィックスカードを横から見るとかなり厚めであることがわかる。カード暑さは2.7スロット分とGeForce RTX3000シリーズ同様2スロットを超えている。

 補助電源コネクタ数は8pin x 2と通常のグラフィックスカード程度だ。

 グラフィックスカードの最後尾部分には基板はなく、ファンが吸い込んだ空気が上に吹き抜ける構造となっている。

 カード端にはARGB用のピンヘッダも用意されているがあまり使う場面はないだろう。

 NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEにはBIOSが2つ搭載されているデュアルBIOSとなっている。パフォーマンスモードとサイレントモードの2種類が用意されており出荷時はパフォーマンスモードが設定されている。

  NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEの映像出力端子はHDMI 2.1 x 1、DisplayPort 1.4 x 2に加え、USB Type-C端子が1ポート用意されている。通常モデルではUSB Type-C端子はなく、代わりにDisplayPortが1ポート追加で用意されている。トリプルディスプレイ構成でゲーミングPCを使用したい場合にはDisplayPortを3つ使用するということはできないのでDisplayPort x 2とHDMIポートを使用することになるだろう。

 ファンの形状も独特で従来のファン形状の静音性とブロアーファンの強い静圧性を兼ね備えたハイブリットファンとなっている。

 このファンはQuick Connectというネジ1本で簡単に取り外すことができ、ファンやヒートシンクに溜まったほこりを除去することができる。このファンの取り外しは保証範囲内であるので製品保証を切らすことなく清掃ができることもSAPPHIRE Nitro+シリーズの特徴だ。

 さらに今回紹介したSpecial Editionではなく普通のバージョンはRGBファンを搭載していない。しかしRGBファンは単体で販売されているためNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEのように光るファンを搭載したい場合は別売りのファンキットを買うことで実現できる。

NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEの内部構造

 それではNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEを分解し、基板やヒートシンクを見ていく。今回はメーカーより分解の許可をいただいているが、製品を分解すると製品保証がなくなるので厳禁である。

 先程のファンを取り外すとヒートシンクがよく見える。このヒートシンクは波打った形状をしておりファンからの風を切り裂くため摩擦を減らす効果がある。そのため風切り音を減少させPCパーツの中で一番うるさいであろうグラフィックスカードの騒音を少しでも下げようといったSAPPHIREの努力がうかがえる。

 NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEにはMemory Thermal Moduleと呼ばれるVRAMとGPUのVRMを冷却するための別体のヒートシンクが取り付けられている。GPUを冷やすための大きなヒートシンクとは別にVRAMとVRMを冷却するためのヒートシンクを用意することで効率よくボード全体を冷却することができる。ヒートパイプは2本に分かれておりVRMとVRAMの冷却のバランスが考えられている。

 GPU冷却用のヒートシンクは6本のヒートパイプでGPUの発熱を吸い取り3つのファンで冷却している。GPUダイと直接接地するベースプレートは銅製で鏡面仕上げとなっており吸熱効果は大きそうだ。

 Memory Thermal Moduleの下には一枚あたり2GBのVRAMが8枚搭載されており合計16GBを実現している。電源フェーズ数は16フェーズで13フェーズはGPU用、3フェーズはVRAM用に割り当てられている。

動作検証

検証環境

OSWindows 10 Pro 1909
CPUAMD Ryzen 9 5950X
CPUクーラーNoctua NH-U12A
マザーボードASRock X570 Creator
メモリCentury Micro CK16GX2-D4U3200
グラフィックスカードSAPPHIRE NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SE
SSDSeagate FireCuda 520 1TB
電源Cooler Master V1200 Platinum
ケースFractal Design Define 7 Compact

3DMARK Time Spy

 DirectX12を使用したゲーム向けベンチマークソフトである3DMark Time Spyを動作させスコアを測定する。総合スコアは8700オーバーと以前紹介したELSA GeForce RTX3090 ERAZOR Xに匹敵する性能を誇っている。VRAMこそはGeForce RTX3090よりも8GB少ないがコアの性能は同等レベルでありそれはグラフィックススコアを見てもよくわかる。前作であるRadeon RX5000シリーズやその前のRX500シリーズはGeForceシリーズには一歩及ばずといった性能だったが今作のRadeon RX6000シリーズは巻き返してすさまじい性能を発揮していることがわかる。

3DMARK Fire Strike

 続いてDirectX11系のゲームの参考になる3DMark FireStrikeを使用してベンチマーク結果を見る。3DMark FireStrikeはノーマル、Extreme、Ultraの3種類のベンチマークを動作させ結果を読み解く。こちらもNVIDIA GeForce RTX3090と比較するとNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEはノーマル、Extremeは+2000ほど高い結果が出た。一方でUltraではスコア差はあまりなく+700程度となっている。おそらくGeForce RTX 3090はVRAMが24GBであることが解像度の高いUltraではNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEと差が出にくくなった原因であろう。

VRMARK

 VRゲーム性能の目安となるVRMarkではVRAMが16GBと大容量であることを活かしてこちらも非常に良い結果が出ている。スコアだけではわかりづらいのでオレンジルームの平均フレームレート・ターゲットフレームレート(HTC VIVEを使用した際に同程度の負荷状態で予想されるフレームレート)について触れると、平均フレームレートは298.07fps、ターゲットフレームレートは109.00fpsという結果になった。シアンルームではシェーダーとの相性が良くさらに良い結果が出ている。ブルールームに関しては解像度が5k相当なためよりCPU、GPUに高い負荷がかかる。しかしながらブルールームでのベンチマークも平均フレームレートこそは下がるがターゲットフレームレートは109.00fpsを記録しておりRadeon RX6800XTの性能の高さをうかがえる。

 ベンチマークとは別で動作テストを行ったVRChatだが、以前より日本ではRadeonと相性が悪いといわれている。今回のNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEでもVRChatの動作テストを行ったが、ごく一部を除き動作が安定していない箇所はなかった。不具合報告が多いPARIPI worldではやはり動作が不安定で筆者が行ったテストでもVRChatがクラッシュしてしまった。VRChatをメインにPCを使用するのであればRadeonではなくGeForceを使用した方がよい人もいるだろう。

PCMark10

 様々な用途で利用することを想定したベンチマークソフト、PCMark10を使用してPCの総合性能を測定する。こちらはCPU単体の性能だけでなくオフィスやゲーム、様々なレンダリングを想定したオールインワンのベンチマークソフトウェアである。結果はPCMark10が7905pt、PCMark10 Extendedが11338ptと非常に良い結果が出た。このスコアは同CPUにNVIDIA GeForce RTX3080を搭載したPCとほぼ変わらない結果となっている。

ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク/ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク/ ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク を使用して実際のゲーム動作時の負荷を測定する。設定は各解像度すべて最高品質で行っている。結果はフルHD、WQHD、4kともにすべて「非常に快適」という判定となった。Radeon RX6800XTであれば暁月のフィナーレ以降のファイナルファンタジーXIVも快適に、4K解像度でも余裕でゲームを楽しむことができるだろう。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK

 さらに動作要件が厳しいファイナルファンタジーXVのベンチマークではフルHD、WQHD解像度では「非常に快適」判定、4K解像度では「快適」という結果が得られた。MMO RPGの中では非常に重たい部類に入るファイナルファンタジーXVでもRadeon RX6800XTは快適に遊ぶことができる。

Apex Legends

 続いて現在一番流行っているFPSゲームといっても過言ではないApex Legendsを実際にプレイし、その際の平均フレームレートを何回か測定し、統計を取った。結果は228fpsに落ち着き、最低フレームレートは実測で170fps、最高フレームレートはApex Legends上限の300fpsまで記録した。Apexシーズン10でも戦闘中に大幅にフレームレートが下がることはなく、144Hzのゲーミングモニターを使用しているのであれば上限張り付きでゲームプレイできるのでかなり快適に感じるだろう。

総評

 SAPPHIRE NITRO+ AMD Radeon RX 6800 XT SEは高性能なクーラーを搭載し、Radeon RX6800XTの性能をフルで発揮し続けることのできる優秀なグラフィックスカードだった。今回レビューしたNitro+シリーズはRadeon RX5000シリーズ以前でも非常に評価の高いグレードであり性能・冷却性・安定性はかなり定評がある。ただしNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEにも使いづらい部分はあり、用途によってはRadeon特有のエラーが起きた際に対処が難しいこと(VRChatなど)やディスプレイ出力構成がDisplayPort x 2、HDMI x 1、USB Type-C x 1なのでマルチディスプレイを構築する場合には使苦労することもあるだろう。2点 目に関してはNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEではなくNITRO+ AMD Radeon RX6800XTを選択することで解決できるためそちらも考えてみると良いだろう。現在の価格では15万円ほどと最近発売された競合となりえるNVIDIA GeForce RTX 3080Tiよりも安価に入手でき、かつVRAMも多いので満足いく性能を発揮するだろう。新しく自作PCを組む際にRadeonを考えているのであればこのNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SE、いかがだろうか。