製品提供:QNAP Systems

 NASなどのネットワーク機器の老舗、QNAPが新たに発表したTS-i410XというNASは非常に特徴的な製品だ。一般的にNASと言えば3.5インチサイズのハードディスクを複数枚載せて複数のパソコンからアクセスできるそこそこのスピードのストレージといった印象ではないだろうか。今回紹介するQNAPのTS-i410Xは10GbEを2基搭載し2.5インチSSDを4枚搭載することを想定して設計された非常にハイスピードなNASである。おまけに耐温度性能に優れており過酷な環境で使用できるといった非常に特異なNASである。今回はこのTS-i410Xを実際に稼働させ、アプリの使用感や速度をレビューする。

スペック

CPUIntel Atom x6425E 4-core/4-thread processor, burst up to 3.0 GHz
システムメモリ8 GB(拡張不可)
フラッシュメモリ4GB(デュアルブートOS保護)
ドライブベイ4 x 2.5-inch SATA 6Gb/s
ドライブの互換性2.5-inch SATA solid state drives
ホットスワップ対応
LAN2 x 10GBASE-T (10G/5G/2.5G/1G)
Wake on LAN(WOL)対応
ジャンボフレーム対応
USB 3.2 Gen 2(10Gbps)ポート4
HDMI出力1 x HDMI 1.4b(最大3840 x 2160 @ 30Hz)
寸法65 × 180 × 254 mm
重量2.54kg
動作温度-40~70℃
ストレージ温度-45~85℃
相対湿度5 ~ 95% 非結露
消費電力90W
システム警告ブザー
ケンジントンロック対応

パッケージ・付属品

 TS-i410Xのパッケージは段ボール地にシールで製品情報が貼ってあるだけの非常にシンプルでビジネス向けの外装である。

 付属品は説明書、セットアップガイド、保証書、延長保証書、SSDをマウントに取り付けるためのねじ、電源アダプター、LANケーブルである。LANケーブルは10GbE対応のSTPケーブルが付属している。

本体外観をチェック

 それではQNAP TS-i410Xの本体を見ていく。

 前面はヘアライン加工されたアルミニウム製で本体にはマイナスねじで固定されている。また各種LEDインジケーターが設けられておりNAS全般の動作、LANの接続、搭載しているSSDの状況などを視覚的に確認することが可能だ。

 QNAPのホームページやTS-i410Xのサンプル画像からはわかりにくいが、TS-i410Xは非常に奥行きが長い。SSDを挿入する奥にNASのマザーボードが搭載されているのでこのような形状になっている。

 本体上面は放熱性を確保するために溝が切られている。これにより表面積を確保し、ファンレスでも熱暴走の心配がない。NASでは非常に珍しいデザインだ。

 本体底面はゴム足がついているほか、固定に使えそうな穴が用意されている。

 背面のインターフェースは左から電源ボタン、リセットボタン、HDMI端子、10GbE端子、USB3.2Gen2端子 x 4、10GbE端子、DC電源コネクタ、AC電源コネクタである。また写真右下にはセキュリティ対策としてケンジントンロックの穴が設けられている。

 電源コネクタは誤って抜けないようにねじで固定する方式をとっている。

 前面のカバーを外すとSSDを搭載するための2.5インチスロットが4つ現れる。

 今回は使用レビューをするためにTeamの2.5インチSSD CX2 512GBを4枚使用する。
今回のレビューでは機材の都合上、互換性リストに載っていないSSDを使ってる。互換性リストに掲載されていないSSDを使用する場合、動作は自己責任である。動作確認が取れているSSDはこちらのリンクから確認できる。

 TS-i410Xの2.5インチマウンタはアルミニウム製で放熱性もきちんと確保されていそうな作りだ。

 SSDをマウンタに取り付けた。残念ながらこのマウンタの工作精度はあまり高くなく、SSDのはめ込みが緩かったり固すぎてなかなかはまらないものもあった。

 TS-i410Xの前面には状態を確認するLEDが用意されている。SSDを搭載し、LANに接続するとすべてのLEDが光り、故障した際にはビープ音と共に知らせてくれる。

性能測定

 QNAP TS-i410Xの性能を測定するためにPCからのアクセス速度を計測する。

 TS-i410Xは10GbEに対応したNASであるため、ルーターも10GbE対応のQNAP QHora-301Wを用意した。またクライアントとなるPCはマザーボードにASRock X570Creatorを搭載したPCを採用し、10GbE環境を用意しての性能検証となる。SSDは512GBのものを4枚、RAID5構成で使用している。

CrystalDiskMark結果

 速度測定のためにネットワークドライブとしてTS-i410Xを認識させ、CrystalDiskMarkを使用して速度の測定を行った。リード・ライト共に1000MB/sを超える場面が多く、フルフラッシュ&10GbE搭載NASの性能をいかんなく発揮していると言えるだろう。ファイルサイズが大きくなっても速度低下は起きづらく、最低でも約900MB/s出ているのでさすがといった印象だ。

アプリ等の使用感を試す

 QNAPのNASは様々なアプリが用意されており、AppCenterでアプリを検索して必要なものをインストールすることでNASの機能を拡張することができる。QsyncHybrid  Backup Syncなど便利なアプリが多く用意されているほか、カラオケソフトなどのエンタメ性に特化したアプリも用意されている。

「QNAPは性能はいいけどソフトウェアのつくりがイマイチ」と言われがちだが、実際にはどうなのだろうか。今回はQNAPのNASで使用できるアプリを実際に試し、使用感をレビューする。今回は4ChunksがPC系のレビューサイトであることからNAS上で複数の仮想マシンを稼働させることのできるVirtualization Stationを試す。

 Virtualization StationのインストールもAppCenterから簡単に行える。スマホアプリをインストールするような感覚だ。

 スクリーンショット右上の作成ボタンから仮想マシンを作ることができる。メニューはシンプルに整理されていて見やすいと言えるだろう。

 作成の左隣にある「無料のWindows®VMを試す」ボタンをクリックすると自動的にWindowsの仮想マシンが作成される。90日と制限こそはあるものの手軽に仮想マシンを試せるのは大きなメリットだ。

 実際に仮想マシンをインストールする際も簡単な設定項目を埋めるだけで作成が可能だ。

 その後はPCにWindowsをインストールする際のように手順をすすめていけば使用可能だ。

 インストール後の仮想マシンはVNC経由でリモート操作することが可能だ。中身はほとんどPCと同じように操作ができるので初心者であっても使いやすい。
 他にもアプリは何種類か試したが、冒頭に挙げた「QNAPは性能はいいけどソフトウェアのつくりがイマイチ」という口コミは本レビューを通してあまり感じることはなかった。

総評

 QNAP TS-i410Xは産業向けNASとして発表された製品だが、もちろん家庭やオフィスで使用することも可能だ。非常に丈夫な筐体と2 x 10GbE搭載のフルフラッシュNASと考えるとNASの性能としては十分といったところだろう。特にTS-i410Xはファンレス筐体で防塵性能が高く、MIL-STD-810H準拠の高い耐震性も兼ね備えている。また、ファンレス筐体ながら耐寒耐熱(-40℃~70℃)性能も備えており、家庭で使う場合はクローゼットや押し入れ、テレビ台の中など機密性が高いところで使用しても安心だ。
 一方で2.5インチのディスクが4枚しか搭載できないところは残念ポイントと言っても良いだろう。NASとして使用するには2.5インチSSDやハードディスク4枚では容量不足になることも考えられる。耐震、耐寒耐熱のために2.5インチSSDの搭載に限ったのは良いのだが、最大4枚の搭載となると一般的に流通している2.5インチディスクの最大容量が4TBであることからRAID5構成にすると最大容量12TBのNASとなる。USBで外付けディスクを付けて使用することで容量不足を解消することはできるがせっかくの産業用筐体の意味が薄れてしまう。そのためドライブベイは4つではなく6つ以上あれば個人的にはさらに良い評価をしたい。また、CPUにはIntel Atom x6425Eを採用しているが、仮想マシンを使用するには性能不足感が否めない。特にWindows系OSを動かす場合には性能不足を感じる。CPUの交換が可能な筐体であれば仮想マシンもパワフルに使用することができるのだがTS-i410Xでは熱容量的に厳しいということもあるのだろう。
 さて、TS-i410Xメリットとデメリットを挙げてきたが、TS-i410Xがお勧めな人は超高速なNASを使いたいが設置スペースがない人、家具の配置等を気にしていてクローゼットの中など高温になるような場所に置きたいと思っている人には最適だろう。もちろん産業用なので濡れない限りある程度の環境で使用できるところもメリットである。2 x 10GbE&フルフラッシュNASというとかなりとがった印象のある製品だが、10GbEはRJ45コネクタを採用しているなど一般家庭でも使いやすい製品なのでNASを導入する際には「気を使う必要のない高性能なもの」を求めている人には最適な製品だ。

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