2019年12月22日更新
Ryzen 3000シリーズと共に発売された、各社のX570チップセット搭載マザーボード。PCI-Express 4.0に対応し、従来の「X470」や「X370」とは比較にならないほど高い拡張性を有している。
価格は競合のIntel Z390チップセットよりも高価になっているが、売れ行きは好調なようだ。
第三世代になって初心者にも自信をもってお勧めできるようになったAMD Ryzen。それに対応したX570マザーボードは実に様々な種類があるが、どれを選べばよいか分からないという方もいるだろう。そこで、今回はおすすめのX570マザーボードを価格帯別に紹介していく。
この夏、自作PCを始めてみようと思っている方は是非参考にしてほしい。
5万円~
Thunderbolt 3を2基搭載したクリエイター向けマザーボード
X570チップセットを搭載したATX・E-ATXマザーボードとしては唯一の存在となる、Thunderbolt 3をオンボード実装し、さらにDisplayPort入力にも対応したマザーボード。ほかにも10G LANなど、コンテンツクリエイターやワークステーション向けの機能をしっかりと備えている。
VRMもハイエンドにふさわしく、低発熱・高効率のInfineon「IR3555」60A PowIRstageを採用しており、フェーズ数は12+2となっている。
リアI/OにはPS/2ポート、USB 3.1 Gen1×4、USB 3.1 Gen2×2、そして40Gbpsの高速転送に対応するThunderbolt 3 Type-C×2などが存在する。
高機能なマザーボードだが、残念な点もある。それは、USB 2.0がリアI/Oに存在せず、またフロント用USB 2.0ヘッダも1つしかないため、レガシーデバイスや電波干渉を避けたいデバイスを複数個接続する場合は注意しなければならない。
とはいえ、Ryzen環境でThunderboltを拡張カードなしで使用できるATXマザーボードはこれしかない。Thunderboltを使用したいのであればよい選択肢となる。
・IR3555 PowIRstageを採用した低発熱・高性能な電源回路
・Thunderbolt 3を2基オンボードで搭載し、最大40Gbpsの高速転送が可能
・DisplayPort入力に対応
・Aquantia 10Gbit LAN、IntelギガビットLAN、Wi-Fi 6を搭載
・ニチコン製の12000時間耐久のコンデンサを採用。同温度であればより高い耐久性を実現
・USB 2.0がリアI/Oに存在せず、フロント用ヘッダも1つしか存在しない
・チップセットが高温になる「X570 Taichi」などと同じ冷却構造
4万円~5万円
バランス良し!誰でも安心して使えるハイエンドボード
約41000円で購入可能な、X570のハイエンドモデル。目立った欠点がなくバランスがとれており、初心者向きの機能や付属品も多いためおすすめだ。
VRMはInfineon「IR3556」50A PowIRstageを使用した12+2フェーズ。ハイエンドとしてはスタンダードのように見えるが、PWMコントローラには非常に高価なInfineon「XDPE132G5C」を採用している。一般的に用いられるPWMコントローラは6~8フェーズの制御に対応しているが、この「XDPE132G5C」は驚異の16フェーズ対応のコントローラだ。そのためフェーズダブラーなしで12+2フェーズの実装を実現しており、効率や応答速度が向上している。
実際、「MEG X570 GODLIKE」「X570 AORUS XTREME」を除く全X570マザーボードの中で最もVRMが冷えるとして海外で取り上げられている。
リアI/OにはUSB 2.0が4ポート、USB 3.1 Gen1が2ポート、USB 3.1 Gen2が4ポート(うち1ポートはType-C)、Realtek 2.5Gbit LAN、IntelギガビットLAN、そしてBIOS Flashback(Q-Flash Plus)ボタン、CMOSクリアボタンが存在する。 フロント用のUSBヘッダも豊富で、USB 2.0ヘッダ×2、USB 3.2 Gen1ヘッダ×2、Type-Cヘッダ×1がある。
オーディオコーデックにはRealtek ALC1220が使われており、ESS SABRE9118 DACを搭載。コンデンサにはニチコンオーディオコンデンサ、WIMA FPK2 フィルムコンデンサを採用しており、オンボードオーディオとしては最高峰の音質を実現している。
マザーボード裏面には放熱性ベースプレートを搭載。もともと低発熱な電源回路をFins-Arrayヒートシンクと裏面のプレートを使って排熱するという、なんともオーバーキルな冷却機構を有している。剛性確保の効果や、ケースに組み込みやすくなるという利点もある。
初心者も玄人自作erも納得のハイエンドマザーボードだ。
・IR3556 PowIRstageを採用した低発熱・高性能な電源回路をFins-Array ヒートシンクで冷却
・X570マザーボードの中では最長の60000時間の耐久性を持つチップセットファンを採用
・背面にバックプレートを搭載し、組みやすさや放熱性、剛性が向上
・メモリスロットに金属シールドがついており、剛性が増している
・2.5Gbit LAN、IntelギガビットLAN、Wi-Fi 6を搭載しており、ネットワーク周りが充実
・DualBIOS機能がついており、BIOSを飛ばしても安心
・簡単にフロントパネルコネクタ配線ができる「G Connector」が付属で初心者でも安心
3万~4万円
大人気!電源回路も拡張性もハイエンドクラス!
このマザーボードは現在31,000円ほどで購入することができるのだが、2.5G LANを搭載していたり、上位モデルである「MEG X570 ACE」と全く同じ電源回路を搭載していたりと、非常にコストパフォーマンスに優れている。また、RGB LEDを全く搭載しておらず、シックなデザインで「ゲーミング!」といった感じではないため、どんな環境にも合わせやすい。
VRMは低発熱・高効率のInfineon「IR3555」60A PowIRstageを採用しており、フェーズ数は12+2となっている。これは、本記事で一番初めに紹介した「X570 Creator」と全く同じ構成である。ハイエンド”気分”が味わえるのではなく、本当にハイエンドの部品が使用されているのだ。
リアI/OにはUSB 2.0が2ポート、USB 3.1 Gen1が2ポート、USB 3.1 Gen2が4ポート(うち1ポートはType-C)、Realtek 2.5Gbit LAN、そしてBIOS Flashback(Q-Flash Plus)ボタン、CMOSクリアボタンが存在する。 フロント用のUSBヘッダに関してはUSB 2.0ヘッダ×2、USB 3.2 Gen1ヘッダ×2、Type-Cヘッダ×1があり、こちらもハイエンドマザーボード同様充実している。
チップセットファンは巨大グラフィックボードを搭載しても干渉しない位置にオフセットされているうえ、構造が良いのでほぼ回らない。
唯一の注意点としては、1GbitのLANを搭載していない点だ。このマザーボードはRealtek 2.5Gbit LANを搭載しているものの、Intel Gigabit LANどころかRealtekの1Gbit LANさえ搭載していない。
X570マザーボードの中では群を抜いてコストパフォーマンスに長けており、扱いやすいマザーボードだ。
・正真正銘ハイエンドの「IR3555」を採用した非常に優秀な電源回路
・考えられたチップセットの冷却構造
・Realtek 2.5Gbit LANとWi-Fi 6搭載でゲーマー向き
・フロント用のUSBヘッダが豊富
・BIOS Flashback機能でBIOSの復旧が容易
・RGB LEDの搭載一切なしと割り切った漆黒デザインが美しい
2万~3万円
基本機能が全部入り!これを選べば困ることはない!
このマザーボードは・・・とにかくすごい。2.5万円強とは思えないほど機能がつめ込まれており、完成度が非常に高い。
VCore向けVRMにはInfineon「IR3553」40A PowIRstageが使用されており、フェーズ数は12。40Aと聞くと非力に思えるかもしれないが、実際は全くそんなことはない(Ryzen 9 3950Xも余裕だ)。IR3553は非常に低発熱で、その低発熱なVRMを良く冷えると評判のFins-Array ヒートシンクで冷却するため、2~3.5万円程のX570マザーボードの中ではトップクラスにVRMが冷える。SoC向けVRMはローエンドと同じ構成だが、第三世代RyzenのI/Oダイを動かすには必要十分なので問題はない。コンデンサはAPAQ製の5Kだが、マザーボードの温度が低いため耐久性も抜群だ。
リアI/OにはUSB 2.0が4ポート、USB 3.1 Gen1が3ポート、USB 3.1 Gen2が3ポート(うち1ポートはType-C)、IntelギガビットLANがある。 フロント用のUSBヘッダも豊富で、USB 2.0ヘッダ×2、USB 3.2 Gen1ヘッダ×2、Type-Cヘッダ×1があり、ハイエンドにも劣らない充実具合だ。
メモリスロットには金属シールドが付いており、メモリを差し込む際のマザーボードのたわみがほとんどない。また、メモリまわりの性能は「X570 AORUS MASTER」と同じで、4枚でも4000MHzという高クロックで動作可能。
オーディオコーデックにはRealtek ALC1220が使われており、さらにニチコンオーディオコンデンサとWIMA FKP2 フィルムコンデンサを採用することで、非常に高い音質を実現している。
3万円以下のマザーボードでは唯一NVIDIA SLIに対応しており、DualBIOS機能もある。機能豊富で比較的安価なこのマザーボードは「ベストなミドルレンジマザーボード」といえるだろう。
・IR3553 PowIRstage採用の電源回路をFins-Array ヒートシンクで冷却し、低いVRM温度を実現
・X570マザーボードの中では最長の60000時間の耐久性を持つチップセットファンを採用
・リアI/OのUSBが価格のわりに豊富で、フロント用のUSBヘッダ数も通常より多め
・メモリスロットに金属シールドがついており、剛性が増している
・DualBIOS機能がついており、BIOSを飛ばしても安心
・簡単にフロントパネルコネクタ配線ができる「G Connector」が付属で初心者でも安心
初心者にぴったり!スタンダードなゲーミングマザボ
ASUSは最もシェアの高いマザーボードメーカーで、初心者にも扱いやすいと評判だ。特にそのUEFIの見やすさは素晴らしい。
中でも、2万円台という比較的購入しやすい価格で標準的な性能・拡張性、そして洗練されたデザインを有するのがこのマザーボードだ。
VRMには、Vishay「SiC639」VRPowerが採用されている。フェーズ数は4+2だが、VCore向けフェーズでは1フェーズにつき3つのMOSFETが搭載されており、 12+2フェーズに匹敵するパワーをもつ。フェーズダブラーを使用していないため効率や応答速度も向上している。ちなみに、これと同等クラスの電源回路をもつマザーボードは「X570 Phantom Gaming X」や「X570 AORUS ELITE」など。
リアI/OにはUSB 3.1 Gen1が4ポート、USB 3.1 Gen2が4ポート(うち1ポートはType-C)、IntelギガビットLAN、そしてBIOS Flashbackボタン、CMOSクリアボタンが存在する。
チップセットファンにはカスタムされた「DELTAスーパーフローファン」が採用されており、 X570マザーボードの中では最長の60000時間の耐久性を持つ 。また、ノートパソコンのファンと同じく「横から空気を取り入れて下に流す」というような設計になっており、グラフィックボードでファンを塞いでしまってもしっかりと冷却してくれる。
唯一残念な点としては、リアI/OにUSB 2.0がない点だ。USB 2.0はノイズが乗りにくく、ヘッドセットを接続するならほしいポートだ。フロントUSBで接続すればいいと言われるとそれまでだが、リアにも1ポートはほしいものだ。しかし、それを差し引いても全体的に良いマザーボードなので、スタンダードなゲーミングマザーボードを探している方は「X570 AORUS PRO」と併せてぜひ検討してほしい。
・優秀な電源回路でRyzen 9もしっかりサポート
・高い音質に定評のあるASUS SupremeFX Audio
・X570マザーボードの中では最長の60000時間の耐久性を持つチップセットファンを採用
・初心者にも分かりやすいUEFIで様々な設定も簡単
・リアI/OにUSB 2.0が搭載されていない
~2万円
1万円台で購入できる最高のAM4マザーボード
このマザーボードは現在2万円を割っており、X570マザーボードとしてはかなりの低価格で購入できる。しかし、安いからといって決して性能が低いわけではない。まずVRMにはVishay「SiC639」50A VRPowerを12+2個搭載。フェーズ数は4+2で、フェーズダブラーを介さないため応答性が向上している。
リアI/OにはUSB 3.1 Gen4が3ポート、USB 3.1 Gen2が3ポート(うち1ポートはType-C)、RealtekギガビットLANがある。他のマザーボードと比較すると微妙にUSBの個数が少ない。また、ノイズや電波干渉に強いUSB 2.0がない点も若干のマイナスポイントだ。フロント用のUSBヘッダはUSB 2.0ヘッダ×2、USB 3.1 Gen1ヘッダ×1で、こちらも他のマザーボードと比較すると少し物足りない印象だ。
M.2は2スロットで、そのうち下側のスロットには標準でヒートシンクが付属している。マザーボードに溶け込むデザインなので、見た目にこだわりたい方も納得だ。
オーディオコーデックにはRealtek ALC1200ベースのカスタムチップを採用。コーデックやコンデンサこそ標準的だが、TUFゲーミングオーディオカバーによりノイズを低減している。
チップセットファンにはカスタムされた「DELTAスーパーフローファン」が採用されており、 X570マザーボードの中では最長の60000時間の耐久性を持つ 。また、ノートパソコンのファンと同じく「横から空気を取り入れて下に流す」というような設計になっており、グラフィックボードでファンを塞いでしまってもしっかりと冷却してくれる。
比較的低価格ながらできる限り高性能なマザーボードがほしい…そんな方にぴったりのマザーボードだ。
・価格のわりに非常に優秀な電源回路でRyzen 9もしっかりサポート
・X570マザーボードの中では最長の60000時間の耐久性を持つチップセットファンを採用
・初心者にも分かりやすいUEFIで様々な設定も簡単
・全体的にUSBの個数が少なめで、リアI/OはUSB 2.0非搭載
(・Intel製LANではなくRealtek Gigabit LAN)
Mini-ITXマザーボード
GIGABYTE X570 I AORUS PRO WIFI
ハイエンド顔負けのコンポーネントを採用した小型マザーボード
7月7日の発売に間に合った唯一のX570 Mini-ITXマザーボードがこの「X570 I AORUS PRO WIFI」だ。
VCore VRMには同社のウルトラハイエンドマザーボード「X570 AORUS XTREME」やMSIのウルトラハイエンド「MEG X570 GODLIKE」などに使用されているものと同じInfineon「TDA21472」70A Smart Power Stageを採用している。SoC向けにはInfineon「IR3553」40A PowIRstageを採用しており、6+2フェーズとなっている。超高品質パーツを採用することで16コアも安全に動かすことができ、フェーズダブラーを使用しないことで応答性や安定性を向上させている。
メモリスロットには金属シールドがあり、ATX 24pinの位置やSATAポートの向きなどを含め全体的に「小型ケース内でも組みやすくなる工夫」がなされている。
2スロットあるM.2のうち表側のスロットはチップセットファンを使ってチップセットと同時に冷やす構造になっている。
映像出力端子はHDMI 2.0(HDCP 2.2対応)が2ポート、DisplayPort 1.2が1ポートの合計3ポートで、4K60HzやFHD144Hzの3画面出力に対応している。
残念な点としてはなんといってもUSBの少なさだ。リアI/Oには合計6ポート(うち1ポートはType-C)のみとなる。フロント用にはUSB 3.1 Gen1ヘッダ×1とUSB 2.0ヘッダ×1が用意されている。
バランスのとれたX570のMini-ITXマザーボードには他に「ROG Strix X570-I Gaming」がある。こちらは性能はいいのだが、「X570 I AORUS PRO WIFI」の方が1万円以上も安価だ。どちらもRyzen 9 3950Xをしっかり動かせる設計のため、筆者はこちらをおすすめする。
・X570 AORUS XTREMEにも使用されている「TDA21472」70A SPSを採用した高出力な電源回路
・X570マザーボードの中では最長の60000時間の耐久性を持つチップセットファンを採用
・メモリスロットに金属シールドがついており、剛性が増している
・HDMI 2.0(HDCP 2.2)×2とDisplayPort 1.2×1を搭載。4K60Hzの3画面出力に対応
・小型ケース内でも配線しやすいように各コネクタが配置されている
・リアI/O、フロント用共にUSBポート/ヘッダ数が少ない
・チップセット&M.2ファンが小型で音が大きめ