コンポーネント等をチェック
それでは「B450 AORUS M」を開封・コンポーネント等を確認していく。
パッケージは安価なマザーボードで一般的なタイプ。強度は普通で、傷やへこみには弱いので注意が必要だ。
付属品はユーザーズマニュアル、ドライバDVD(マニュアルに挟まっている)、I/Oバックパネル、M.2用ネジ類(2点)、SATAケーブル(2本)、AORUSエンブレムシール、AORUS4U招待QRの8点。
I/Oバックパネルは中にスポンジが入っており、ツメがないタイプだ。ツメがあるタイプに比べて取り付けやすいのが特徴だ。
ユーザーズマニュアルは日本語に完全対応しており、イラストや画像(フルカラー)が多く分かりやすい。
「B450 AORUS M」の全体画像。基板は焦げ茶色だ。
まずリアI/Oを見る。1×PS/2ポート、DVI-D、HDMI 2.0、2×USB 2.0、4×USB 3.1 Gen1、2×USB 3.1 Gen2、Realtek RTL8118 LAN、各種オーディオ端子が存在する。
USBポートは全てType-A。安定性の高いUSB 2.0から10Gbps対応の高速なUSB 3.1 Gen2まで揃っており扱いやすい。ただし、USB Type-Cを使うには変換必須だ。
映像出力端子はDVI-DのほかにHDMI 2.0(HDCP 2.2対応)がある。Ryzen APUの内蔵グラフィックで4K@60Hz出力が可能だ。
オーディオコーデックは 2/4/5.1/7.1-channel対応のRealtek「ALC892」。コンデンサは日本ケミコン製のオーディオグレード品だ。
また、リアI/OにはS-PDIF OUT(光端子)が存在しなかったが、フロントオーディオ端子用ヘッダ付近に拡張用ヘッダが存在する。
Realtek ALC892の詳細スペックはこちらで確認してほしい。
オーディオ回路をメイン基板から基板レベルで分離してノイズを低減する「Audio Noise Guard」付近にはRGB LEDがあり、間接照明のような役割を果たす。
拡張スロットの構成は上からPCIe 3.0×16、PCIe 2.0×1、PCIe 2.0×4(×16形状)となっている。いずれも金属シールドは装備していないが、GIGABYTE独自の「Double Locking Bracket」によって耐久性が向上している。
M.2は1スロットで、PCIe 3.0×4、×2、SATA 6Gb/sに対応する。また、M.2にはヒートシンクが付属しているため、発熱が大きいSSDを使用する場合も安心だ。
SATA 6Gb/sは合計6ポート。うち画像右の灰色の2ポートはCPUからで、黒色の4ポートはB450チップセットからだ。
M.2を使用する場合は排他が発生するため、仕様をよく確認してほしい。
一番上のPCIeスロット上部にはLED_CPUがある。これはアドレス指定非対応の4ピンで、Ryzen 7以上に付属するCPUクーラー「Wraith Prism」や社外製のRGB LED搭載クーラーを光らせるためのものだ。
その横(画像では下)にはB_BIOSとM_BIOSがある。このマザーボードはBIOS ROMを2つ搭載する「DualBIOS」に対応しており、万が一M_BIOSに異常が発生しても、もう1つのB_BIOSで起動できるというものだ。BIOSアップデートに失敗して起動できなくなる、といったことがなくなるので、初心者の方でも安心してBIOSアップデートを行えるのではないだろうか。
メモリスロットは両ラッチ式で、DDR4 3600(O.C.) / 3466(O.C.) / 3200(O.C.) / 2933/2667/2400/2133 MHzに対応する。DDR4-2933までは定格扱いだが、それ以上はオーバークロック扱いになるのでメモリ選びの際は注意しよう。筆者としては、Crucial「CT2K8G4DFS8266」のようなDDR4-2666のネイティブメモリの使用をお勧めしたい。
なお、メモリオーバークロックの検証は後ほど行う。
メモリスロット横にはメモリ用電源回路、3ピンARGBヘッダ、ファンコネクタが実装されている。
ARGBヘッダはマザーボード下部にも存在し、合計2ポートだ。2ポートのARGBヘッダを備えたSocket AM4のMicroATXマザーボードはなんと2製品のみ(GIGABYTE B450 AORUS M、ASRock B450M Steel Legend)だ。
次に、電源回路を見ていこう。CPU補助電源は8ピンで、ATX24ピンとともに高密度な「ソリッドピン」が採用されている。従来のピンよりも高価な「ソリッドピン」を採用することには、接点電気抵抗の低減や発熱の軽減、耐久性の向上、給電能力の向上など様々な利点がある。なお、B450マザーボードでソリッドピンを採用している例は少なく、特にMicroATXではGIGABYTEのみが採用している。
また、GIGABYTE製マザーボードの特徴の一つとして、他社と比較して電源ピン裏の処理が細かく、手で思い切り触っても痛くないことが挙げられる。マザーボードの裏を触ったら手を切った、などといったことが少なくなるので嬉しい。
VRMヒートシンクは小型寄りの中型で、表面積も広くはない。ASUS「TUF B450-PRO GAMING」やMSI「B450 GAMING PLUS MAX」などには及ばない印象だ。
黒基調にAORUSオレンジのアクセントが入っており、デザインは悪くない。
ヒートシンク裏にはサーマルパッドが貼られていた。
また、CPUソケット上部のMOSFETにはヒートシンクが当たっていない。
PWMコントローラはIntersil ISL95712が使われている。ISL95712はAMDプラットフォームのローエンドマザーボードでは一般的なコントローラで、4+3フェーズの制御に対応している。
VRMは4+3フェーズで、ハイサイドMOSFETはOn Semiconductor製の4C10N、ローサイドMOSFETはOn Semiconductor製の4C06Nだ。VCore(CPUコア向け)はハイサイド×1+ローサイド×2、VSoC(アンコア向け)はハイサイド×1+ローサイド×1の構成となっている。
4C10NのRDS(on)は6.95mΩで4C06Nは4.0mΩ。RDS(on)は値が低いほど同負荷での発熱が抑えられる。フェーズとMOSFETをみると「B450 AORUS M」はB450マザーボードとしては中くらいの性能だといえる(Mini-ITXを除く)。
最後にマザーボード下部の各種ヘッダ等を確認する。
左からフロントオーディオ端子用ヘッダ、S-PDIF Outヘッダ(LED_DEMOの上)、パラレルポートヘッダ、シリアルポートヘッダ、3pin ARGBヘッダ、5pin RGBヘッダ、TPMヘッダ、2×USB 2.0ヘッダ、USB 3.0ヘッダ、システムパネルコネクタが実装されている。
このマザーボードには合計2つのARGB(アドレサブルLED)ヘッダと1つの5pin RGB LEDヘッダ、1つの4pin RGB LEDヘッダ(CPUクーラー用)が存在する。
B450マザーボードやRyzen対応のMicroATXマザーボードでARGBヘッダが存在するマザーボードは希少で、「B450 AORUS M」のほかには数種類しかない。
通常のRGBヘッダは5pinのものが採用されているが、4pinの機器もそのまま使用可能だ(その場合、[12V G R B W]のうちWの部分には接続しない)。
起動しない際にどこが原因で引っかかっているかを視覚的に教えてくれるデバッグLEDがついているため、自作PC初心者の方でも安心できるだろう。
UEFIの主要項目をチェック
「B450 AORUS M」のUEFI(BIOS)のGUIと主要項目をチェックしていく。
※Easy Modeの画像のみ、他製品の画像を流用しています。ご了承ください。
GIGABYTE製マザーボードのUEFIには「Easy Mode」という機能が搭載されている(近年は他社製含めほとんどのマザーボードに搭載されている)。
これはブートの優先順位やメモリのXMPの読み込み等、主な設定を簡単に行える、初心者向けの機能だ。グラフィカルなGUIで主要な情報が分かりやすく表示されている。
以前、GIGABYTE製マザーボードのUEFI内のフォントは見づらい明朝系だったが、現在は見やすいゴシック系に変更されている。
「B450 AORUS M」ではCPU電圧はオフセットで設定する必要がある点に注意。メモリのオーバークロック設定周りは他のマザーボード同様充実している。
VRM温度を検証
6コア12スレッドの「Ryzen 5 3600」を用いてVRM温度の比較を行った。公正を期すためエアコンの設定温度を固定した状態で直接風が当たらない場所に設置し、簡易水冷CPUクーラーを用いて計測を行った。
「B450 AORUS M」のVRM温度はB450マザーボードの中でも比較的高めで、コンポーネントの性能×ヒートシンクの小ささが結果に表れている。
Ryzen 9を使うには不安が残る温度だ。Ryzen 5やAPUで使用するのが良いだろう。
オーバークロック検証
今回は検証時間の都合上、メモリオーバークロックの検証のみとなる。
検証に使用したメモリはSamsung B-dieを搭載したPatriot「Viper Steel」だ。XMPプロファイルが2つ用意されていたのでその両方を試してみたところ、DDR4-4133では起動せず。DDR4-4000のプロファイルはすんなり起動&負荷テストを完走した。DDR4-4133は手動設定でも起動しなかったため、DDR4-4000がマザーボードの限界のようだ。
スイートスポットであるDDR4-3200 CL14やDDR4-3600 CL16は問題なく動作した。
この挙動は、GIGABYTE製で同じ4層基板である「X570 AORUS ELITE」と同じだ。
なお、Infinity Fabric同期モードの設定項目は用意されておらず、DDR4-3600までが1:1モードでの動作となる。
なお、メモリによって動作は異なるため、必ずしもこの表のクロックで動作することを保証するわけではないので注意してほしい。
総評
「B450 AORUS M」はARGBに対応した貴重なRyzen向けMicroATXマザーボードだ。ファンコネクタ数は若干少ないが、M.2ヒートシンク搭載でUSBの数も比較的多く、またDualBIOSや診断LED搭載と機能面は優れている。しかし、VRM温度が高く、多コアCPUを動かすには不安が残ってしまう。
・B450のMicroATXマザーボードで唯一M.2ヒートシンクを装備
・HDMI 2.0(HDCP 2.2)に対応
・DualBIOS搭載で安心
・ファンコネクタ数が少なめ
・CPUの電圧設定項目が乏しい
・USB Type-Cを使用するには拡張カード必須
ちなみにこの「B450 AORUS M」だが、現在は価格が非常に高くなっており、コストパフォーマンスが悪くなってしまっている。一時期は9,000円前後で推移していただけに残念だ。
価格が9,000円台に戻ることがあれば検討してみてほしい。