試用提供:Sapphire Technology Japan

 AMDのRadeon RX6700XTシリーズのグラフィックスカードは高性能なグラフィックスチップに12GBと大容量のVRAMを搭載したミドルグレード帯ではかなり性能に期待できる一枚だ。今までRadeonシリーズ、GeForceシリーズ共に7番台のグラフィックスカードはVRAMが8GBで後少しと容量が足りずに物足りない動作をすることもあった。今回紹介するRadeon RX6700XTはそんな悩みを解決することができるであろう大容量のメモリとRDNA2世代の高効率なGPUを搭載したグラフィックスカードである。今回もSapphire Technology Japanよりコストパフォーマンスに優れるPulseシリーズのRadeon RX6700XTであるSapphire PULSE AMD Radeon RX6700XTをお借りしたのでゲームやベンチマークを通してどれほどの性能を誇るのか検証していく。
第一弾のSapphire NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEのレビューはこちら

スペック

ストリームプロセッサ数2560
レイアクセラレータ数40
コアクロックゲームクロック : 2424MHz
ブーストクロック : 2581MHz
Infinity Cache96MB
ビデオメモリ規格GDDR6
ビデオメモリ容量12GB
ビデオメモリバス幅192bit
ビデオメモリクロック16Gbps
補助電源要求数8pin x 1、 6pin x 1
出力端子3 x DisplayPort 1.4
1 x HDMI 2.1 
推奨電源容量650W以上
消費電力230W
占有スロット数2.2スロット
本体サイズ260mm x 119.85mm x 49mm
保証年数2年

パッケージ・付属品

 NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEとは変わって白と黒を基調としたパッケージが特徴である。こちらのPULSE AMD Radeon RX6700XTも株式会社アスクの代理店保証が2年間付属しているので安心して使用することができる。

 付属品もシンプルで、クイックインストールガイドとSapphire Technology Limitedの住所等が書かれた紙のみである。

外観レビュー

 箱からSAPPHIRE PULSE AMD Radeon RX6700XTを取り出し、外観を見ていく。

 Nitro+のRadeon RX6700XTシリーズやPULSEシリーズのRX6800以上のモデルとは違い、このPULSE AMD Radeon RX 6700XTは2ファンのモデルとなっている。またRGB LEDの搭載はなくシンプルでデザインは質実剛健といった印象だ。
ただしボディ素材は樹脂製なので上位モデルのように質感が良いとはいえないところが値段相応といった感じもある。

 バックプレートは金属製で赤と黒でパルスをイメージしたデザインがされている。上位モデルのようにグラフィックスカード後部に風が吹き上がるような構造にはなっていないので従来のグラフィックスカードのようにCPUやメモリに対して熱風がいくことはない。

 映像出力端子はDisplayPortが3つ、HDMIポートが1つ用意されている。一般的な映像出力構成なのでマルチディスプレイ環境も構築しやすいだろう。

 Radeon RX6700XTシリーズの消費電力は比較的少ないため、補助電源コネクターは8pinと6pinが1個ずつとなっている。消費電力がある程度抑えられているのもこのRadeon RX6700XTの利点の一つだ。

 PULSEシリーズのグラフィックスカードにもBIOS SWITCHの文字が入っているが、このPULSE AMD Radeon RX6700XTは実際にはBIOS切り替えスイッチは搭載されていない。おそらく上位モデルのOCされたモデルはBIOS切り替えスイッチが搭載されており、バックプレートは共用となっているのだろう。

 冷却用のヒートシンクのフィンは珍しく縦方向に伸びている。

 搭載しているファンの形状はNitro+シリーズと同様で従来のファン形状の静音性とブロアーファンの強い静圧性を兼ね備えたハイブリットファンが採用されている。インペラ枚数は12枚で90mmと大口径である。

PULSE AMD Radeon RX6700XTの内部構造

 PULSE AMD Radeon RX6700XT を分解し、基板やヒートシンクを見ていく。今回はメーカーより分解の許可をいただいているが、製品を分解すると製品保証がなくなるので厳禁である。

 PULSE AMD Radeon RX6700XTのVRMは11フェーズでGPUに9フェーズ、VRAM用に2フェーズの配分となっている。サーマルパッドで隠れているメモリチップは1枚当たり2GBのSamsung製GDDR6メモリが使用されている。

 クーラーは銅製のベースプレートから5本のヒートパイプによってフィン全体に熱を伝えている。

 バックプレートは金属製で重厚感がある。バックプレートの基盤と接する面は絶縁処理されているので安心だ。グラフィックスボードPCB裏面にはメモリ等の実装はなく、発熱する部品が搭載されていないのでバックプレートは特にサーマルパッドが付いていない。バックプレートはグラフィックスカードのデザインや剛性向上が目的のものだろう。

動作検証

 それでは実際にPULSE AMD Radeon RX6700XTをPCに組み込んでグラフィック性能やゲーム性能を測定していく。

検証環境

OSWindows 10 Pro 1909
CPUAMD Ryzen 9 5950X
CPUクーラーNoctua NH-U12A
マザーボードASRock X570 Creator
メモリCentury Micro CK16GX2-D4U3200
グラフィックスカードSAPPHIRE PULSE AMD Radeon RX6700XT
SSDSeagate FireCuda 520 1TB
電源Cooler Master V1200 Platinum
ケースFractal Design Define 7 Compact

 CPUはAMDのコンシューマー向け最上位のRyzen 9 5950Xを使用し、メモリはRyzenシリーズ定格である3200MHzのネイティブメモリを使用した。

3DMARK Time Spy

 DirectX12の性能を測定することのできるベンチマークソフトウェアである3DMark TimeSpyを動作させ、スコアを測定する。TimeSpyノーマルでは総合12262点、TimeSpy Extremeでは5813点という結果になった。どちらもNVIDIAGeForce RTX3070に少し及ばずという結果になった。ただし現在のグラフィックスカードの価格で比較すると性能差以上にRadeon RX6700XTの価格が安いので費用対性能を考えると同等だろう。

3DMARK Fire Strike

 DirectX11系のゲームの参考になる3DMark FireStrikeを使用してベンチマーク結果を見る。3DMark FireStrikeはノーマル、Extreme、Ultraの3種類のベンチマークを動作させた。結果はNVIDIA GeForce RTX3070よりも若干ではあるものの上回ったスコアが出ている。以前レビューしたSAPPHIRE NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEと比較すると性能は75%程度だが、価格差を考えるとこちらも十分な性能を誇っていると言ってもよいだろう。

VRMark

 VRゲーム性能の目安となるVRMarkでもRadeon RX6700XTは高い性能を示した。一般的にゲームをするためにPCを購入する人はGeForceシリーズを選びがちだが、Radeonでも比較的負荷が高いVRゲームでも十分すぎるほどの性能を発揮することができる。ただし負荷が非常に大きいVRMark Cyan RoomではTarget Frame Rateにの上限に張り付くことはできなかったので最高性能でVRゲームを楽しみたい人はNITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEのような上位モデルのグラフィックスカードの使用を検討すると良いだろう。

PCMark10

 様々な用途で利用することを想定したベンチマークソフトであるPCMark10を使用してPCの総合性能を測定する。こちらはCPUの性能も評価基準となるが、今回はCPUのボトルネックが起きないようにAMD Ryzen 9 5950Xを使用してベンチマークを実行する。結果はPCMark10が7635点、PCMark10 Extendedが10401点となった。以前紹介した NITRO+ AMD Radeon RX6800XT SEとスコアはほとんど変化なく、ゲームを高解像度・高フレームレートで動作させないのであればヘビーなゲームでもPULSE AMD Radeon RX6700XTで十分満足することができるだろう。

ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク/ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIVが快適に動作するかを確認することができるファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク/ ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマークを実行して動作を確認する。一般的にIntel CPU、NVIDIA GPUに最適化されていてRadeonでは少し不利なベンチマークではあるが ファイナルファンタジーXIVベンチマークではすべて最高設定、ほぼすべての解像度で「非常に快適」判定となっている。ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレの4K解像度のみ「快適」判定となっているがファイナルファンタジーXIVではPULSE AMD Radeon RX6700XTで十二分に楽しむことができるだろう。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK

 続いてファイナルファンタジーXVが快適に動作するかを判定するベンチマークであるFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARKを使用して性能を測定した。結果はフルHDから順に「とても快適」、「快適」、「やや快適」となっている。MMO RPGゲームの中で非常に重たい部類に入るファイナルファンタジーXVでは多くの人がプレイするであろうフルHD環境では非常に快適な動作が期待できるが、もし4K大画面で楽しみたいという人がいれば上位モデルの購入を検討すると良いだろう。

Apex Legends

 大人気FPSゲームであるApex Legendsを実際にプレイし、その際の平均フレームレートを測定し、統計を取った。結果は216fpsとなりフルHDの最高設定でも240Hzモニターに力負けしないポテンシャルを持っていることがわかった。Apex Legendsシーズン10ではマップが重たい場所も増え、戦闘中に負荷が急に上がる場所も多い。価格と性能のつり合いが取れているRadeon RX6700XTであればコスパ良くゲームを楽しめるだろう。

総評

 Radeon RX6700XTシリーズはミドルグレードながら12GBと大容量のVRAMを搭載し重量級ゲームでも快適に楽しめるコストパフォーマンスに優れるGPUだ。その中でもRadeon系グラフィックスカードメーカーの老舗で製品の信頼性に定評のあるSAPPHIREが作ったPULSE AMD Radeon RX6700XTはRadeon RX6700XTシリーズの中でもさらに安価な部類に入りつつも同メーカーNitro+シリーズとまではいかないもののクオリティはかなり高い。他メーカーも素晴らしい製品を作っているが、クオリティと価格を考えるとSAPPHIREのPULSE AMD Radeon RX6700XTはかなり良い選択肢となるだろう。オーバークロックモデルのグラフィックスカードとは違いこのPULSE AMD Radeon RX6700XTは比較的小さいグラフィックスカードなのでエアフローには気をつける必要があるが小型ケースに入れる場合にも良いだろう。Radeonを購入検討しているがどのモデルを買ったらいいかわからないと言った人にはベストなグラフィックスカードだ。